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107 2年生大会前日

次の日。

僕はいちと葉阿戸と朝早く学校に来て、”ドールちゃん”を運んでいた。

幸いにも故障はない。

写真部でも噂は広がらなかった。

それでも、ここは男子校、オナホを欲する人は多いだろう。欲情して襲われたら溜まったもんじゃない。それを見張る監視カメラもない。警備員も居ない。金庫もない。

そんなナイナイ尽くしでなんとか”ドールちゃん”の貞操は保たれていた。

僕は人形ながらも愛着心が湧いていた。

3階から1階に運ぶ。


「おはよう、こりゃまたすごいもん見つけてきたね。明後日の大会誰が出るの?」


1組から比井湖が顔を廊下に覗かせる。

僕はえげつないほどの汗が湧き出る。

(やばい、見つかってしまった)


「俺だよ」

「え?」

「葉阿戸?」


僕は耳を疑った。

葉阿戸がポーカーフェイスで至って普通に誤魔化した。


「葉阿戸さんの下半身が合法で見れるのか? おいおい! 朗報だ! 皆」


比井湖はすぐにでも顔を引っ込めそうだった。


「待てよ、そういう1組は誰が出るんだ?」

「俺と」

「俺だよ」


比井湖と王子だった。

2人は手でハートをつくり、ウインクしてくる。

僕はムカつきが増すばかりだ。


「2組は、茂丸と洲瑠夜だって」

「3組は葉阿戸さんと、誰だよ?」

「う、うちだよ」

「お前ら嘘つくなよ、明日のリハーサルで明らかになるんだぞ? 嘘だったらビンタしてくれよ、俺に。葉阿戸さんといち」

「なんでビンタしなくちゃなんねーんだ。普通逆だろ」

「皆登校してくるから早く行くぞ」

「「おー」」


僕らは3組の教室にブルーシート敷いて”ドールちゃん”を寝かせると、その上にまたブルーシートをかけた。

【見るな!】と書かれた、紙がのっかる。


「今日、体育があるけど大丈夫かな?」

「こんなこともあろうかと、ペット用カメラとボイスレコーダー持ってきたよ」

「葉阿戸〜!  うぉーーん」


僕は葉阿戸に抱きしめようと空中に両腕を広げる。

葉阿戸の右足が僕の股間の竿に少し当たり、金的されそうになった。しかし寸止めされた。タマタマには当たらなかったが、一気にタマヒュンする。


「ひい!」

「抱きつくな! 俺が攻めだと言ってるだろ」

「じゃあいつになったら抱きついてくれるんですか!?」

「さあな」

「たい、皆来たよ、不自然の無いようにね」

「こんな状態で自然になんてできるか! ちょっと散歩してくる」


僕は股間を押さえて、教室を出た。


「はあ、葉阿戸、可愛い」


僕は裏庭に来た。辺りは1年生のチャリ置き場で1年生がうじゃうじゃいるが、奴の影はない。スリルと興奮がマックスになる、僕はあれをボロンと出すと、裏庭の広葉樹をめがけてシコりだした。

(今日はよく出そうだ)


「おい」


運命とは時に残酷なものだ。

竹刀の声が背中にぶつかった。

時間が止まる。

僕は何も言葉を発せず、ただただ、左手の上下運動に魂を込めていた。


「おい、やめろ!」

「く! うぉ!」


僕の左手にあるシンボルから、あの液体が勢いよくぴゅっと出た。


「ああああーーー!!!」


僕は陰茎を社会の窓の中にしまうと逃げ出した。

校門から、走り、出ていく。

通学途中の生徒に何だ何だと見られている。


「たい!」と葉阿戸の声が聞こえた気がした。


僕は公園まで過呼吸気味になりながら逃げた。

(ここまでくれば、竹刀に殴られたり、蹴られたりはない)


「はあはあ」


僕は首元に冷たく当たるものの存在を思い出した。

ロケットペンダントだ。葉阿戸の写真が輝いて見える。


「はあー、葉阿戸、ごめん、僕」


大会前というのに出してしまった。それも竹刀の庭に。


「たい、何をしてるんだ?」


またもや名前を呼ばれて、背筋が凍る。しかしそのおかげで涙が止まった。


「……父さん? なんでここに?」

「ああ、俺、会社が先行き不安で倒産になりそうなんだ。俺は頭を冷やすためにここで過ごしている」

「はあ?」

「なに、すぐに新しく入社するさ。で、たいはなんでここにいるんだ?」

「僕、クラスメートのオナニーゾーンにアレをかけたんだ」

「オナニーゾーン? そういえば、去年、このくらいの時期に大会を行うって言っていたな」

「僕が出ることになっている。明後日だよ、どうしよう、いじめられたら。僕、怖いんだ」

「俺はな、転校させてもいいと思っている。いじめられたら最初のうちに行動しとけば傷が浅くて済む。記憶に残れば残るほど逃げ出しづらくなる」

「お金がまたかかるじゃん」

「今まで通りとはいかんでも、質素倹約になる。ただ、たいの笑顔のためなら泥水だって飲むよ」

「父さん、ありがとう。僕、学校に戻るね。僕の力でどうしようもなくなったらまた頼むよ」


僕は涙をこらえて、前へ進んだ。


「じゃあな」


父はブラックコーヒーを飲みながら、僕を見送った。



僕は逃げたい気持ちを抑えて学校に舞い戻った。

(大勢の人を前にして緊張は解けるだろうか?)

僕ができるのは謝ることだ。できるだけ派手に謝ろう。心の何処かで罪悪感が増していってくれるはず。

学校の校門をくぐると、校庭に入ると2年3組の窓側のメンツに監視中のように目線を浴びせられた。

2年3組は現代文の授業中だった。

がらら。

再び時が止まったかのようだった。

スタスタと竹刀のトイレの横で深呼吸して、声を張り上げた。


「あんたの庭でオナってごめん! このとおりだ、いじめないでくれ!」


僕は大きな声で言うと、皆の前で土下座で謝罪した。


「竹刀君、また、たいに何かしたの?」

「謝ってんじゃん、もういじったりするのやめてやれよ」

「いいよ。たー君、怒ってないぜ?」


竹刀はふざけた声を轟かせた。

僕は目が笑っていない竹刀を見て終わったかと思った。


「珍しい、蟻音、遅刻か。とりあえず席につけー」

「はい」


僕は便座に座り込む。

授業が頭にちっとも入ってこなかった。

キンコンカンコーン。


次は体育の授業なので、橋本はトランクスを返しに来た。それだけするとすぐさま帰っていった。


「たー君、不問にしてやる代わりにあれを使わせてくれよ」

「あれ?」


僕はまた良くないことが起こり始めていることを肌で感じた。


「”ドールちゃん”だっけ?」

「中出ししないんだったらいいけど」

「竹刀君、君、中出しする気だろ? 中出しするんだったら10万で買い取れよ? 大会終了後に」


葉阿戸が竹刀に言い放った。


「しないよ、竹刀だけに」

「優しく扱えよ」

「同人誌のネタにするからカメラ回してもいい?」


烏有がケータイを竹刀に向ける。

竹刀は教室の隅に寝かせた”ドールちゃん”の元へ。


「おいで。ドールー!」


竹刀は”ドールちゃん”の口に強引にキスするとすぐにヤる気満々だ。なかなか童貞臭い。


「ちょっと乱暴に扱わないで」


葉阿戸がいち早く反応して”ドールちゃん”の口をおさえた。


「竹刀君、そこまで! ハウス」

「はーちゃん。分かったよ、裏庭行ってくる! でも大会終わったら、この中に出すからな」


「いいよ」と僕。


体育の間はペットカメラとボイスレコーダーで警戒した。

ケータイに電波を飛ばして見守る。

不意に橋本が映った。


『何を隠したかと思えばー、良い人形じゃないかー』


橋本は掛けてあったブルーシートを外す。”ドールちゃん”の顔を見て、足をM字に開脚させた。自身のズボンも脱ごうとしている。


『おい、はっしー! これは僕の大会用の人形だ。一発やろうとしてんじゃねえぞ!!』


僕は分別のない橋本に一喝した。


「ええー? どこから見てるんだー?」

『奥さんにバラすぞー?』

「それはやんめんてー!」


橋本は”ドールちゃん”の体勢を直し、ブルーシートを掛け、何事もなかったかのように口笛を吹きながら居なくなった。


「ふう、山田は何処に行かれたんだろう?」


僕は卓球の用意をさせて、何処かにいった山田を慮る。


「でもこうして見張れるからラッキーだよ」


葉阿戸は監視の手を緩めることなく、授業の終わりを待った。


キンコンカンコーン。


「すぐに戻ろう」


葉阿戸に急かされ、僕は教室に早歩きで行き着いた。


「大丈夫。変なことされてない」


僕は”ドールちゃん”の股に手をやる。

(すごい締めつけだ。この中に入れたら僕どうなっちゃうんだろう)


「変態、お股を触るな」

「チェックしただけだよ」


僕は慌てて手を引っ込める。そして、次の授業のためにズボンを脱いだ。

黒髪の”ドールちゃん”はおそらく処女だろう。

僕はエッチな感情にかられる。


「たいのたいが大きくなってるよ」

「入れてー! ずっこんばっこんしてーって思ってるな?」


竹刀が僕の隣に来た。


「もう、僕はそんなこと思ってないよ……うひゃ」

「体は素直だな」


竹刀に僕のあそこをトランクス越しに掴まれた。


「離せ! バカ! おっぱい揉むぞ!?」


僕は竹刀に掴まれて少し気持ちよかった。


「ここでシコれば?」

「やったら、明後日の試合で出せなくなる」

「我慢汁、出てるぞ」


トランクスが少し濡れてきた。


「ちょっと黙ろうか?」


葉阿戸は僕を守る。


「たい、この子が君に当たる可能性は低いが、あり得る。その時までとっておきな」

「他の人に当たったらどうしよう?」

「未来のことは誰にもわからないさ」

「うーん、そうだな」


僕の大事な部分は萎えていた。


「次は世界史探求だ。皆、ジャージとトランクスを脱ごう」

「「「おー!!!」」」



昼休み

生徒会のメンバーがやってきた。


「蟻音君と如月君いますか? おかずを回収しに来ました」

「この子だけど」


僕はお姫様抱っこで受け渡す。


「何だこの人? 飛距離大会のガチ勢だ!?」

「僕には勝たねばならない戦いなんだ。踏み込まないでくれ」


僕は必死に訴えた。


「すみません」

「この子、大事に扱ってくれよ」

「分かりました」


”ドールちゃん”を抱っこしている人が言った。


去年と同じプリントが配られた。


『1、体育館の中央に半分ほどのレッドカーペットをひき、その端にある机の上にあるおかずは、当人が端にきてから、明らかにされる。

2、皆はその周りに名前の順で着席してみていなくてはならない。

3、3分以内に机をどかして、カーペットの反対側に敷かれたマットの上に精液を出す。

4、カーペットの上を助走をつけて射精しても構わない。

5、クラス別で1回戦目、学年別で2回戦目が行われる。

6、1番、遠くに精液を飛ばした者が優勝。


審判は生徒会が務めます。

9時から始まり、お昼までには終る予定です。

午後は表彰式を行います。出場者は頑張ってください!』



プリントにはきのこがいっぱい書かれていた。

僕は使いまわしなのに気がついた。


おかずに名前を貼るため、マスキングテープにマジックで名前を書くように言われた。その後、あみだくじに1人1本線を引いた。


「これでよし」


僕は一本の線を書くのに手が震えた。


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