100 修学旅行当日1
中間テストが始まった。
僕は数学の問題を解くのが楽しかった。英語は言われた通り確実に点が取れる後ろから答えを埋めていった。
中間テストはかなり順調だ。
そして、3日間の中間テストが終りを迎えた。
これで修学旅行の準備も心に余裕を持って行える。何にせよ、不安はつきものだが。
テストは修学旅行後に返ってくる模様だ。
◇
修学旅行1週間前、休み時間の教室にて。
「たい、パジャマどうする? うちはパジャマ持ってくけど」
「僕はジャージでいいや」
「俺もジャージにしよ」
「旅館の部屋に風呂あるかな?」
いちは不安そうにしている。
「葉阿戸がいるんだから多分あるよ」
「ヤンバルクイナいるかな?」
「それは沖縄本島の北にいるんだろ、那覇市では見ないって先輩が言ってたぞ?」
葉阿戸が自信満々に話す。
「2泊3日かー」
「楽しみだなー」
「修学旅行の話か? 俺も混ぜろ」
竹刀は遠くの前の席から声を届ける。
「美ら海水族館ってどんな魚が居るんだろう?」といちが予想していると竹刀から答えが返ってくる。
「そりゃお前、エイとかイルカとかだよ」
「タコライスってタコが入ってるの?」
「タコいねーよ。メキシコにタコス料理って言うのがあってだな、タコスとライスが合わさってタコライスになったんだ」
「すごい、竹刀君、物知りだね」
「まあこれぐらいどうってことないよ」
竹刀は鼻をさする。知識を披露する。もちろん、あそこも伸びている。
「これで勉強の方もできればね」と僕は小さな声で呟く。
「おい、たい、聞こえてんぞ」
竹刀は怒ったような口ぶりだ。
キンコンカンコーン
チャイムが鳴ったら授業の始まりである。皆が口をつぐんだ。
僕はその日も勉強に励んだ。
◇
修学旅行当日。
羽田空港に8時30分頃、皆が集まる予定だが、隣のクラスに遅刻者が出たらしい。
「園恋! お前まだか!? 大事な日に寝坊して! もう先生が変更して便を取ったから一緒に行くぞ!」
土橋が溢れんばかりの怒りの形相をしている。
「やべーな! つっちー、あんだけ怒らせて、楽しめないんじゃないか?」
「茂丸、何やってるんだよ。あーあ」
僕と竹刀が話す。
「まだ8時30分には早いから、このグループでそこにあるスタバ寄ろうよ!」
葉阿戸はほんわかさせる笑顔で語りかける。
僕はさり気なく腕時計を見せつけながら時間を見る。
只今の時間は7時40分だ。
「いいよ、皆もいいでしょ?」
僕がオッケーを出すと、いちと竹刀は即座に同意する
「うん、そうしよう」
「しゃあねえな」
竹刀はココアを、いちはアールグレイティーラテを、葉阿戸はキャラメルフラペチーノを注文した。
僕はキャラメルマキアートのトールを頼んだ。
店は僕らと同じ思惑の修学旅行生で賑わっているのでテイクアウトにせざるを得なかった。
「写真撮ろう」
「いいね」
パシャリ。
カシャシャシャシャ
僕らはスタバのドリンクの写真を撮った。
ゆっくり飲んでいると、3組の皆が集まってきた。
「葉阿戸様はよろしいけど、何を優雅にティータイムしてんだよB班」
「いいじゃん、早く着いたんだから」
僕はモンと喧嘩じみた言い合いをする。
僕らはB組なのだ。そして、飲み終わったドリンクのゴミを捨てて先生の指示に従う。いよいよ、飛行機内に乗り込む時がやってきた。
エレベーターの上に上がる感覚と同じ感覚で飛行機は上陸した。シートベルトは全員がしていた。
暫く経つと、シートベルト外し、遊べる時間がやってきた。
僕の隣りに座る黄色が体調が悪そうにしている。
「吐きそうだー!」
「まじかよ! 汚いから吐くなよ?」と竹刀の声がどこからともなくやってきた。
「大丈夫? 袋これ使って」
通路を挟んで反対の席のいちが白いビニール袋を渡した。
「席代わろうか?」
僕も窓際に座っているので、席を譲った。
「かたじけない」
「いいんだよ、無理すんな」
「ありがとよ」
黄色は顔色が悪そうにしていた。
「大丈夫ですか?」とモン。
「モン君」
黄色は死んだ魚の目から羨望を放つ目に変わった。
「トーテムポール、平気か?」
その竹刀を見た瞬間、黄色は吐き出した。
◇
ハプニングもあったが、那覇空港にやっと到着した。
お昼は空港の中にあるソーキソバを食べる事になった。
黄色は乗り物酔いがすっかり良くなり、笑顔が戻った。
それから美ら海水族館に行くバスに乗った。
美ら海水族館へは2時間15分分ほどで着いた。
「綺麗だな」
「言ったとおりだろ、いち」
竹刀はギャーギャーうるさい。
ジンベイザメやチンアナゴ、クマノミ等様々な魚類がいた。
イルカショーを見るためにカッパも着た。水がはねてかかる。
写真もさんざん撮って、いい思い出になった。
再びバスに乗ってM市に向かった。
◇
宿泊施設では立派なホテルに泊まった。
個室の風呂ありだった。
風呂に入ると豪華な食事にありついた。
食事はラフテー、茶碗蒸し、刺し身、生もずく、白米、味噌汁、サーターアンダーギー。
お目当ての自由時間では葉阿戸とともにホテルを抜けて、夜空を見た。
遮るものがなく、満点の星空の下、僕らは自由時間が終わるまで、空を見上げて駄弁っていた。
消灯の時間になった。
僕は竹刀と携帯ゲーム機で車のゲームの対戦をして遊んでいた。寝不足になりそうだったので0時までにして、眠りについた。