光を洗い流せし洗礼を受けせし第壱話
――ギィ……
冒険者ギルドにいた全員の意識が入口へ向く。
無数の獰猛な沈黙が肉体へと食い込み――その身を穿つ。
使い込まれた武具を身に着けた猛者たちの目が言っている。――ここはお前の来る場所じゃないと。
ギシ……
黒い装いに身を固めたその男は、踏みしめるようにゆっくりと歩を進める。
「――ヨォ。兄ちゃん、ここはテメェみたいな奴が居ていい場所じゃねぇ―んだよ! 怪我しねぇうちに、とっととお家に帰ってママのおっぱいでも吸ってな」
――ギャハハハ……
「――どいてくれ。冒険者登録を済ませたいんだ」
「てめぇが? 冒険者ァ? ムリムリムリムリ!」
――ギャハハハ……
いいぞ! もっと言ってやれ!
オーディエンスから心無い言葉が投げかけられる。
「俺が試験してやるよ! 耐久試験だぁ!」
バキ
男は拳を受けて為す術なく扉へ凭れ掛った。
「――フ、見ていられんな……」
黒いテンガロンハットを掌で顔を隠す様に目深にかぶり、徐に立ち上がると男を殴り飛ばした冒険者へと近づいていった。
「ルーキー相手にそこまでにしたらどうだ」
「ああ!? てめぇにゃぁ関係ねぇだろがい!」
バキ
「ぐぇ」
弱っ!
出たー! 張り子のディルの壱八番!
出たらすぐ引っ込む。ピストン芸!
――ギャハハハ……
テンガロンハットの男は一撃で崩れ落ちた。あまりにも勢いよく吹き飛んだので受付嬢が心配して声をかける。
「ちょっと、大丈夫?」
「大丈夫、ちょっと休めば平気……」
(――それって。死亡フラグ……)
ユラ……
そのとき扉の横で座り込んでいた男はゆっくりと立ち上がった。
「なんだぁ? まだ殴られたりねぇのかぁ!」
立ち上がりかけた男へ助走をつけたトゥーキックが深々とめり込む。
「ギャァァァァァァァァ!」
だが、悲鳴をあげたのは蹴った方だった。
――なんだ!?
想定と180度ちがう結果に冒険者ギルド内は騒然となる。
「【物理免疫】」
――――
カラン……
予想外の展開にオーディエンスの手から落ちたコップは床を転がり、扉に立つ闇色のコートの男の黒いブーツで止まった。
「死者に鞭打つ「いや、死んでませんから!」哀れなる悪逆の徒よ。己の罪に沈め」
――漆黒のオルオムは入口の光を閉ざす。そして足を大股に開き腕を振り上げ穴あきグローブで顔と入口を覆った!
外には人だかりが出来ている!
大変めいわくだ!
「営業妨害はやめてくださいね」
「――ええと。我は……」
「……」
「……ごめんなさい。」
オルオムはごめんなさいしたあと、入口に近い椅子に座り体育座りをして小さくなったでのであった。




