Ep 1-3 開門事変 Ⅲ
17時00分 ランドバルデン戦略空軍基地
作戦本部 地下2階
「とのことだ少佐、貴官にはすぐさま先遣部隊を編成し調査の準備を整えろ」
「了解ですバルツァフ閣下、しかし連隊指揮官が不在の今、先遣部隊に大佐を割り当てるのは不可能です。防空軍から割り当てられるので?」
「あぁ、それなんだが君をそのまま大佐に昇進させる。しかしあくまで一時的なものだ、先遣部隊がその任を解かれ次第少佐に降格するし、大佐階級だが手持ちの部隊は一個増強中隊のみだ」
「結構です閣下、では只今より編成に移ります」
ジーナ少佐が退席し、次に呼ばれたのは同大隊の補給中隊指揮官
「すまないが今からイグージナ市近郊にFOBを建設しろとお達しが来た、防空軍の建設中隊を指揮下に組み込むのでFOBの建造とイグージナ市への物資供給プランを組め、期間は本日から六日間。参謀本部までの通信中継設備と指揮能力の構築を最優先として事にあたれ。」
「建築資材も人員も軍民問わず集めろ、おそらく橋頭堡確保の為の重要地点となる。こちらからも根回しをしておく。下がれ。」
同じく退席し、ようやっと一息つける時間ができた
13時からぶっ通しで東方総軍の指揮に当たった為相当に疲れが溜まっていた
「こんな事なら課程合格しなけりゃ良かった」
「大変そうですね閣下。あ、参謀本部の緊急対策本部から送られてきた橋頭堡建造の為の作戦草案です。」
「あぁ...うん、ありがとう.....あー何?先遣部隊の作戦兵力は門1基につき歩兵350人、BMP-3M並びにBMP-TM、T-90M(72B3)合わせて30両、兵員輸送車、支援車両多数」
「門を通過した後、戦闘車両を前面に出し、最低でも防御縦深400mを確立、後続部隊の到着を待ち門を囲む様に対異界侵攻用の旅団FOBを建造(これは食糧生産プラント 弾薬生産プラント 燃料備蓄プラントを含む事実上の戦略基地とする)し、向こう12ヶ月の兵站を維持する能力を持たせる」
「不知笑くん」
「はい」
「これ考えたヤツは工兵を殺す気かい?」
「あ、いえFOBの建造はАрмсискの建築部門が担当する事を各方面と調整してます。また燃料パイプラインの敷設も行いますがそれもАрмсискが。」
「あぁ....なるほどね。しっかし門の向こうとなっちゃ防空軍は何も出来ないね」
「そう、その事に関してもあります」
「.....っすぅ〜、あー、うん、なんだい?デカイ事じゃないよね?」
「割とデカイです。てかこれからの対異界侵攻でクソ程重要になります、ほんとに」
「閣下、頭を抱えないでください。そんな事しても問題はなくなりません」
「うん。もういいよ。言って」
「はい、簡単に言えばGPSや衛生通信を可能にするために軍事衛星約20基を段階的に打ち上げるそうです」
「閣下、机を殴らないでください」
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同日 同基地 17時29分
「少佐、先遣部隊の編成が完了しました。出撃可能まであと30分です」
「20分にしろ。それと各車に対しEMP下戦闘マニュアルをよく確認させて、短距離無線通信の強度も上げておけ。おそらく向こうでは衛星通信やGPSに加え方位磁針すらまともに機能しないかもしれない、それと命令かあちらさんから攻撃が来るまで発砲は禁ずる。」
「了解。歩兵装備に関してなんですが、6L31を4本持たせ継戦能力を上げ、重装備を減らし機動性を上げました。また防空軍から観測気球を拝借し、門を通過した後に展開し位置を明確化させます」
「手際がいいな、いい部下を持った。」
「ありがとうございます。ちなみに部隊派遣はいつ頃に?」
「明日の朝 0500となった。兵員にはもう休息を取らせろ、明日は何が起こるか分からないからな」
「了解です、少佐」
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同日 統合参謀本部 地下2階 緊急対策本部
21時44分
「大将、亜津御国から異界侵攻連合軍の締結を要請する旨の連絡が国防省ありました」
「異界の規模が分からない以上、投入可能な兵力が増えるのは歓迎すべきだろう。外務省に回せ」
「了解」
「大将、国境を接する各軍部隊から連絡がありました。国境付近に展開する各国軍に動きはなく、平和そのものとの事です」
「わかった。それならばВまたはС配備の部隊から機械化戦力を抽出し、再来週までに門1基に付き1個旅団を配備できる様に地上軍隷下で再編成しろ」
「予備戦力には各2個中隊をつけて、兵站部隊は通常作戦より多く、砲兵部隊もだ。」
「了解しました。東部方面軍隷下の高射砲兵、野戦砲兵を動員します。第801特殊戦連隊は必要ですか?」
「NBC兵器が使用された状況下での戦闘を前提にした部隊だったか?必要無い.....だろう。それより各門から行く旅団用にこちらでの長期兵站線の構築計画を戦略戦闘支援課に要請しろ」
「了解しました」
連邦軍と亜津御国防軍の元に編成された異世界侵攻軍による4月攻勢計画は、向こう側世界に存在すると考えられる多大な化石燃料、鉱物資源によって後押しされ、後にこう呼ばれた
「星の祈り作戦」と