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我らが強き連邦を~対異界侵攻戦役~  作者: 連邦軍戦史記録課█████中将
第二章 水星作戦
25/33

Ep 2-6 上陸阻止作戦 準備

5月28日 20時41分

エグラント島東部沿岸地域 戦略基地建設予定地 上陸予想地点 “ブルー”

SS第1機甲旅団戦闘団 第1機甲旅団 第1戦車連隊


特急で移動した司令部は

装甲指揮車の横にテントをおっ立てて、その下に机を置いて地図や通信機を設置している


戦闘団指揮官 ジーナ・アリサ大佐

第1機甲旅団指揮官 トーチカ・ラルヒルト中佐

第1戦車連隊指揮官 タナント・エーベンハイム少佐

以下各大隊長、整備責任者、砲兵指揮官その他多数


せっせこ動く実働部隊の裏で、めちゃくちゃに絡まった作戦計画を逐一修正し、休み無く働く将校がいた


「野戦築城の進捗は?」


「戦車用掩体壕はほぼ完成、塹壕は後2時間はかかります」


「砲弾充足率はどんなものだ」


「集積されていたものをかき集めたのでほぼ100%、全力戦闘30時間分の弾薬備蓄です」


「兵員と兵器はどうだ?」


「落伍した部隊も続々と合流してきていますが、長距離兵器が少ないですね」


そうして頭を抱えていると、整備中隊の責任者が声を上げた


「余剰しているMT-LBに、集積所にあったハヴォックの8連装ATAKA発射機と照準装置を取り付けて即席の対戦車自走砲を作る事もできますが」


「なんだって?」


「ですから、現地改修でMT-LBに長距離攻撃能力を付与するのです」


「まぁ、9P149(シュトゥルム-S)の前例もあるし、可能ならばありがたい話ではあるが」


「ならば直ぐに取り掛かります。余剰するMT-LBを受け取り、前線で即席改造します。では」


そう言い残して責任者は天幕から出ていくが、未だ他の面々はやる事がある


「第7大隊は落伍多数、特に中核を成す第1第2機甲中隊は計48%を失っています」


「強行軍の影響だな...第7大隊、あと他の定数割れ部隊は統合して戦術予備にしよう」


「第9大隊も随伴の歩兵部隊に落伍が多数あります。機甲戦力を第7大隊と統合しましょう」


戦車定数544両、その他合わせれば1000両に届く車両を装備する旅団戦闘団も、多くの落伍により戦車419両、その他合わせても800両である


「補給線は現在空輸と仮設港の集積物資に依存しており、万一これが使用不能になった場合には...」


「そうだ、だからこそ港への盾は....」


そう区切って港の少し向こう

湾を封じるように単縦陣を敷いた水上戦闘艦3隻に目を向けた


「命令無視の大馬鹿者共に頼む事にしよう」


━━━━━━━━━━━━━━━┫


時は遡って5月21日 ARMSI(連邦火器開発局)

ОКВ-087 テーナード記念特殊装備設計局


連邦先進戦争研究所 特殊重装備開発課 異界研究装備部 ケッテン・ベルク・シャルンホルスト

記念設計局 強化外骨格研究室 モンテル・ヤーカー


「人型兵器...ですか?」


「あぁ、特殊な事情があってな。設計要求書はこの通り、重量に関しては解決する算段がある。明日に資料をまとめて詳細を説明する」


「了解しました…あの」


「なんだ?」


「設計の流用等は許されますか?」


流用できるものがあるのか?と言う表情をしつつも、その答えを返そうとした時


「人型兵器ぃ!?おぉ!?連邦のヤツらもようやく人型兵器の実用性を理解したかぁ!?」


長い黒髪、ひどい三白眼、真っ黒なクマをいっぱいに浮かばせた、ぱっと見ヤク中の人間が声を張り上げていた


「ヤーカー、あの気狂いは?」


「高沢・ベッケルトイム。亜津御とアスティア東部のハーフで、人型兵器に狂気的な設計意欲を抱えている気狂い変態設計者です」


「ええい気狂い気狂いと!私は至って健全だ!」


そう弁明した瞬間に四方八方からヤジが飛んでくる


「黙れ狂人!BMPTの改修設計案にヒルドルブのなり損ない見てえなモン提出したバカが!」

「重量190トン全高18mの兵器とかどうやって運用するつもりだ!3秒で擱座するわ!」

「脳波同調操縦装置だの網膜投影型VRだの!バカコストを量産するんじゃねぇ!」

「重量問題とエンジンだけ解決したら実用化できそうなの腹立つんだよ!」


「ええい皆まで言うな!スターライト樹脂装甲は量産が難しい上にエンジンは最低4基必要なのはわかっている!!」


その言葉を聞いた瞬間、ケッテンの眼光は鋭くなる


「エンジンと装甲だけどうにかなればいいのか?」


「あぁ!スターライト樹脂装甲、それかアルミかチタンを混合したスターライト合金装甲の量産さえできれば重量は2/3…いや1/2にまでできる!そうすれば重量は90t、あんたらの言う重量の対策が何かは知らんが━━」


「あぁ、わかった、また明日資料をまとめてくるから期待して待っていてくれ」


「本当か!よし私も設計要求に沿って改設計しておく!」


出来の悪い刺青のようなクマには似つかわしくないほどに目を輝かせ、ケッテンがヤーカーに目を向けた一瞬の内に消えてしまった


「幸か不幸か、最適の人間が見つかったかな。さて、スターライト樹脂装甲とやらについての資料はあるか?」


「えぇ、後でお渡ししますが簡単に言うなら防弾鋼板や高分子素材、ボロン強化繊維なんかをスターライト樹脂でサンドイッチしたものです。同じ厚みの均質圧延鋼装甲に比べて40%の重量で同等の対物理強度を発揮しますが厚さ30mm、縦横1mの装甲板を作るのに約3倍の値段がかかります」


「スターライト合金装甲は?」


「あの気狂いが言っていた様にスターライト樹脂にアルミニウムかチタンを混ぜ、対弾性能と軽量性、耐熱性を犠牲に量産性を上げたものです」


「なるほど、ありがとう。まぁ価格は量産効果によって多少は抑えられるだろう」


「具体的に、いくら製造する予定で?」


「約600機程、おおよそ16個飛行大隊レベルだな」


「となると…..2個戦車連隊の機甲戦力を1から揃えるくらいの金が必要ですね。IFVやBMPTを抜くので、多少は安くなると思いますが」


「どの道、この機体は異界侵攻において切り札となる…必ずな」


現実では絶対に必要とされなかった人型兵器が何故異界において必要となったのか

それは当然、異世界ならではの理由がある

次はそれを確認する為に、SS統合参謀本部へ向かってみよう


━━━━━━━━━━━━━━━┫


5月13日 連邦第二総軍 ИГ-1統合参謀本部

大会議室


集められた各方面の高級将校達は、皆一様にプロジェクターに映し出された映像を凝視していた


『右前方距離400!巨人4!ゴブリン19!』


機関銃手(ガンナー)小銃手(ライフルマン)はゴブリン共を足止めしろ!軽対戦車兵(LAT)はRPGを装填!対物狙撃兵(AMS)は巨人の頭を狙え!』


林と平原の交わる所に、7.62mmと12.7mmの射撃音が木霊する

兵士のボディカメラに映るのは、20mはあろうかと言う人型の生物と、その周りを駆ける何かだ

人型の方は土と灰を混ぜた様な模様をしており、その速度は速い…20km/h弱はあるだろうか


対物ライフルの連続した発砲音が連続し、カメラが巨人の頭へ向けられる

しかし12.7×108mmの貫通弾を直撃させても、巨人はその肌をボロボロと崩すだけで止まる気配はない

2発、3発と同一箇所に撃ち込んだ時、ようやくその頭は砕け散る

巨人は膝を着き、土煙を上げながら地へ伏す


RPG!と言って放たれたHEAT(成形炸薬弾)は胸に当たり、崩れ落ちた外殻から胸の中にある赤い宝石露出した

そこにOSVが狙撃をし、巨人は仰向けに倒れた


『残弾2マガジン!これ以上は無理です!』


『RPGは残弾1!撤退しましょう!』


『連中の左からデュラハン10騎!食い止めろ!』


Все участн(総員 !)ки! Надень() свой меч!(剣!)白兵戦準備!』


機関銃が制圧射撃をしている間に、AK-12に銃剣をつける

鋭く光る切先を向けたままに射撃を繰り返すと、すぐに弾倉が空になった


『リロード!弾倉残り1!』


ポーチから抜き出したマガジンと空のマガジンを付け替え、左手を下から回してチャージングハンドルを引く

僅か数秒の間に、目の前へゴブリンが飛び出してきた

それに対して声を上げながら銃を突き出すと、銃剣はゴブリンの鳩尾に突き刺さる

その勢いのままに地面へ突き刺し、単射で4発叩き込む


『クソッタレ!総員撤退するぞ!デュラハンを片付けたら走れ!』


その言葉に従って、デュラハンの方へ射線が収束する

7.62mmと5.45mmの集中砲火を受けて、デュラハンは馬ごと崩れていく

隙をみつけた分隊は順番に後ろへ走って行き、分隊長が最後に駆け出す

そこで動画は打ち切られた


「これが、半島に存在している神縛の楔への第一次調査で得られた情報です」


「なるほど、結界を通れる条件は?」


「分かりません。人型ならば通れる様ですが、それならば小銃やRPGが通過できる理由が分かりません」


「あのでかいやつ...巨人とか言ってた奴はなんだ?」


「全高15~30mで主に土や泥等で構成された”魔物”という物です。個体差はありますが対物理魔導結界を持ち、動画内で交戦した個体は”非常に弱い”タイプとの事」


「それで12.7mmの貫通弾を3発も防ぐのか....」


「はい。移動速度はおよそ5~20km/h、推定重量は100~200トンです」


「なぜそんな物が直立二足歩行を出来ているのだ」


「それは....これが原因でしょう」


スクリーンの前の将校が端末をスワイプすると、連動してスクリーンの画面が変わる


映し出されたのは、エメラルドグリーンの色彩を放つ真円の水晶だった

表面には謎の模様が刻印されており、横の注釈を見るに半径は30cm程度だろうか


「斥候調査隊が持ち帰った物で、あの魔物の核...心臓にあたるものです。こちらへ空輸した後に魔族と調査したところ、重力を”反転”させる効果がある事が判明しました」


奥の席に座っていた学者がそれを聞いた途端、頭を抱えて溜息を吐いた

他の高級将校も戯言を聞くような顔をしている


「効果を発動するには全面を何かで囲み、かつそれが生物的な見た目をしている必要があるらしい....です」


「嫌に歯切れが悪いな」


「はい、どうも魔族もこれをよく理解していないらしく、竜種の中でも老竜種しか知らないようでして...今の所、ほとんど調査が済んでいません」


「まぁ仕方ないが....」


5/11日時点で連邦軍の直近の課題は、「神縛の楔から半径150kmへ球状に展開する結界の突破方法」である

初期調査において、結界を各種車両が通過出来ないことが判明

徒歩による調査を敢行するも、内部で大量に繁殖していた魔族の攻撃を受け調査隊は壊滅


生存者のヘッドカメラと証言から得られた情報を元に対策会議が開かれたのだ


「...やはり、人型兵器しかないのでは?」


「しかしそうなると完全に1からの研究開発になるのだろう。ならば我々はこの結界を突破する方法を考えるべきでは?」


「あぁ...中佐はご存知ありませんでしたね。あれを流してくれ」


ジーナ大佐が指示を出すと、スクリーンの画面が何度か変わる

移されたのは数分程の動画で、「結界の破壊実験 第1次」とタイトルが付けられていた


遠くから撮られた物の様で、画面の左には結界の1部、右には通常の空間が収められていた


「同一箇所に対して巡航ミサイル12発の同時攻撃です」


そう将校が説明した10秒後、爆音と共に結界の中程へ巡航ミサイルが衝突する

爆音の後に爆風が襲来し、爆煙が弾着点を覆う

煙が晴れた所には、傷1つ無い結界があった


途端にどよめきが起こり、次々に困惑の声が上がる


「3M14EM カリブル巡航ミサイルの同時弾着にも関わらず、一切の傷は認められません。FAB-3000UM(3トン滑空爆弾)PKの直撃も、効果は認められませんでした」


その解説に、各軍将校が頭を抱える

これはつまり、現段階で結界内の攻略は”歩兵のみの部隊”でしか行えない事を示していた

戦車に装甲車、榴弾砲にロケット砲

攻撃ヘリの近接航空支援も、攻撃機による空爆も受けられない中、あの敵と戦う必要があるのだ


「....AMRSの保有する設計局(ОКВ)に、人型兵器....というか強化外骨格の研究開発をしているところがあります。過去の帝政時代末期にも同じような人型兵器を研究していたはずです」


「ならばそこを頼むことにするか…よし、要求書を纏めよう。と言っても全く未知のモノだから相当な時間がかかりそうだがな」


何処が運用するかで揉めそうだ、と言う言葉を最後に会議は休憩に入った

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