Ep0-2 いつか見た顔
久々に見た作戦本部は、数ヶ月前よりも厳重な警備が敷かれていた
3人1グループが20m間隔ほどで並び、RWSかセントリーガンが複数設置されている
歩哨はvepr-12や60連マガジンのAKで武装し、RWSはおそらくだが、kord重機関銃とYak-Bを装備した2タイプがある様で、ドローンに対し相当な殺意を向けている
それを横目に両開きの扉をあけ、中に一歩踏み込む
後付け感のある装飾は慣れたが、以前よりはマシになった気がする
久々に来たので迷うかと思ったが、作戦本部の建物は共通な上部屋割りも定められてる
迷わずに執務室に行ける.....と思ったら
「あぁ、司令執務室ですか?地下に移設されましたよ。バルツァフ閣下の意向じゃないですよ、国防議会の決定ですね」
と、言うことで地下に降りて執務室に足を運ぶ
コンクリート造りの地下に足音が反響して耳にはいる
入口から最も遠い所に配置された扉、その上に手書きで書かれたкабине́тの文字
3度ノックし、氏名と階級を名乗り扉を開ける
「久しぶりだね、グズネツォフ君。悪いんだけど要件をパッと言ったら出てって欲しい、調べ事の最中でね」
「....今話題のアレですか」
「そう、いや気になってね。それで要件は?」
「はい、ミハイル・グズネツォフ少佐以下4名、独立強襲第1戦闘飛行団 東方方面分遣飛行小隊、本日付で当基地に配置されました」
「機体はSu-57Mだっけ?不思議な事にスペアパーツの供給が来なくてねぇ?Su-35SM4がそのまま残ってるから、スペアが来るまでそれで茶を濁してくれ、あぁ、本当に不思議だ」
ずっと後ろを向いて資料を見ているが、明らか手に力が入っている
だって紙クシャクシャ言ってるもん
「魂の輪ですよね、調べてるの」
「そう、君も知ってるタチかい?」
「シュバルツゼクスは手空きの人員が調査班を立ち上げて情報を集めてました」
「何か分かった事は?」
「そこまでですが、全て神殿跡地か宗教関連で発展した都市で発見されてると言うのはわかりました」
「イグージナ市、アッケルバルト市、イェニセイ神殿跡地、イルディーシュナ・デ=ルナ・パウリカ大教会 、セヴァストポーリの中央広場、ジェカリグア神殿、これで全てだね?」
「はい、それらを結んだ線が綺麗な六角形になることも」
「六角形....僕的には六芒星かな。宗教的な関連で言えばまばらだけど、少なくとも源流は同じ、そうだね」
「御門の護正教会、ですね。」
「そう、我ら人類は神が開いた門を通ってこの地に来たって言ってるとこだね。それに七紀伝の中の記述とも一致するらしくて世間は割と賑わってるらしい」
「七紀伝....原本は焚書されて、今あるのは独自解釈の多い物だと」
「その通り、原本は314年の教徒狩りの時に焚き火の材料になった、だからその内容があってるかも本当の事は分からない」
「なんにせよ、俺達は何かあった時のために臨戦態勢を整えるべきでしょう」
「なんだいつも通りじゃないか。」
「はい、通常営業で行きましょう。...すみません、少し長話が過ぎました」
「いやいい、自分の説が周りと合ってると安心するからね、それじゃ」
「では、失礼します」
「あぁ、気をつけるんだよ」
扉を閉めて、来た通路をまた戻る
世間で話題になってる〖魂の輪〗
4月19日にSNSに投稿され、瞬く間に拡散した動画だ
撮影場所はパウリカ大教会の西にある広場、突然現れた無数の光る蒼い線が半径20m程度の輪を作って数十秒間回転する様子が撮影され、翌20、21日にも上記の各所で同じ様子が撮影された
当初はしょうもないフェイクニュースと言われたが、事実として多くの人がその光景を肉眼に焼き付けており、少なくともちんけなCGやAI動画などではなかった
ホログラム技術の公開試験、小型ドローンの展示、挙句の果てに集団幻覚まで様々な仮説が立てられたが、何も成果はなかった
政府としてはよく分からん現象では軍を動かせないので、何の手の打ちようもなかった
とりあえず地下から上がり、太陽光に目が痛むのを感じながら一息、グッと伸びをする
目が慣れた頃、遠くに砂煙が見えた
「すまない衛兵、あの向こうの砂煙は何かわかるか」
「はい、あれは第29戦車師団第1大隊でしたかね、第5親衛戦車軍の隷下でしたかね」
懐かしい部隊名を聞いた
戦争も終わり、北方警戒の任を解かれたんだろう
「そう、29-1Bは向こうで装備改編したらしいですよ、新型のBMPTとT-90受領したとか」
「そいつは見てみたいな、暇があれば見に行ってみよう」
「急がなくても大丈夫ですよ、ここ2ヶ月はこっから北東5kmに設定された野戦演習場で演習するとか」
「......もしかして俺達も参加するのか」
「対地攻撃演習と基地防衛演習があるとか」
「........基地防衛は机上演習だよな、まさか陸戦のプロ相手、しかも戦車部隊相手にこの戦力でやり合うとか言わないよな」
「はは」
「えっ」