Ep.0-1 いつか見た基地
新連邦歴34年 4月22日
ランドバルデン戦略空軍基地
「グラークリードよりランドバルデン管制へ、フライトプラン23-98に従いRW197への着陸進入許可を求める」
「フライトプラン23-98を承認、Su-57M4機の進入を許可。風は259から3ノット。」
「適正速度、フラップダウン…..ギアダウン。コース適正」
「風は262から3ノット」
「グラークリード、タッチダウン。後続各機も接地した」
「ランドバルデン管制了解、全機誘導路TG-7に向かえ、以後の誘導はランドバルデン地上管制へと引き継ぐ」
「グラークリード了解、着陸管制に感謝する」
「仕事だからな……あぁ、みんな、よく帰ってきた」
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ランドバルデン TG-7E エプロン
駐機しているのはSu-57Mの先行量産型が4機
いずれも白黒灰色のデジタル迷彩が施され、暗色化された国旗と空軍旗が各所に記されている
増槽2本、自衛用にK-74とK-77Mを2本ずつ搭載し、レーダー反射板を取り付けてある
ラプターの亡命を受け、PAK-FA計画で開発されていたSu-57は設計変更を行い、よりステルス性を求め3次元推力偏向ノズルを上下22°までのものに変更、胴体ウェポンベイの容積を増やしK-77を4本ずつ、計8本搭載できる様にした
エンジンはIzdeliye 30を急遽1次元ノズルに改設計したため少々信頼性に欠けるが、Su-35SM4に搭載されていたものよりもさらに推力が増えている
そして開かれたキャノピーから顔を覗かせるのは先の戦争でラプターを単騎で返り討ちにしたエース
「背水の鬼神 ミハイル・グズネツォフ、久々の帰還だね」
「やめてくれアスカ、非公式戦果の異名だ」
「公式じゃ送り狼のF-15Dの4機編隊を1機で返り討ちにしたんだって?」
「お上的に現実味を持たせたんだろうが、どうにもリアリティに欠ける。映画のがリアルかもな」
AK-12を担ぎ、機体から降りてエプロンを歩きながら小話に興じる
薄雲をつらぬく太陽光と春の肌寒い風は、シュバルツゼクスでは感じられなかった
遠くの山に地平線が登るまで、果てしなく続く草原はここが戦略上の要衝だと言う事を忘れさせる
「Su-57のコックピットもいいですけど、Su-35の方が自分は好きですね」
「HMDにまとめたから、計器類にまみれてたフランカーが懐かしい、とは思います」
少し遅れて後ろから来たのはツェルニとヘルマンの2人、何やらコックピットについての話らしい
「俺個人としちゃ、生存キットの積載量が減ったの、あれが気に食わないってか気に食わない」
「あー、なんだっけ、2/3になったんだっけ?でもほら、操縦席の横にAKとか入れるスペースできたじゃん」
「AK入れてるのグーズさんくらいですけどね、他の人は大体SR-3MPですよ」
「そう言えば編隊長はなんでAK使っているんです?」
「陸軍とのコネでいいパーツ使ったAKだからな、それに9×39mmはいささか威力不足らしくてな」
「え、生存キットどころかAKも横流し品なんですか」
「ばーか、許可は取ってある(らしいから)横流しじゃない」
ふーん、とよくわからない返事をされた
なんだその返事は、と聞こうとしたら鈍いブレーキ音と共に一台のティーグルが近くに停止する
「皆さんどこに行こうとしてるんです?」
「あぁ、帰還と配置転換の報告をしに作戦本部に行こうと。こいつらは兵舎に」
「了解しました、乗ってください、送ります。」
ありがたいことに乗せてってくれるらしい、乗らない理由はないのでティーグルの重い防弾扉を開けて飛び乗る
無機質に防弾化された車内は不気味さと安心感を兼ね備える不思議な空間だった
「あ、ねぇ君名前は?私はアレクセイ・アレクサンドロヴィッチ・アスカロフ、大尉だよ」
「イヴァロフスカ・グドチャツカ、准尉です」
「叩き上げの准士官?!……警備任務ありがとうございます!」
「いえ、そんな…自分は陸軍に落ちて、空軍基地の地上勤務を斡旋されて続けてるだけですよ」
「グドチャツカ准尉、今日は装甲車が辺りをよく走ってますが、何かあったので?あ、ヘルマン・ブライト中尉です」
ヘルマンがそう問いただす
「どうも中尉さん、そう最近反アスティア派の活動が活発になっているらしくて、先週はTu-160が自爆ドローンの攻撃を受けまして」
「あの見慣れない電柱、もしかしてドローンジャマーで?」
いかにも突貫急造感あふれる柱が何本も立っていると思ったら、マジで突貫で造ったヤツらしい
コンクリート柱にドローンジャマーを括り付け、それを何本も建てなんとか対策しているとのこと
「RP-497Mアカーツィア、RP-497からさらに妨害範囲や妨害周波数を強化した物で、本来は小型艇や戦車なんかにつける物なんですがね。」
「無理やり柱に括り付けていると」
「ええ。あ、そろそろですね。降車準備を。」