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火曜日前編 たまには早寝もいいかも?

「ん、う~~ん、はぁ~」


 目が覚めて、ぐ~っと両手を伸ばしながら、ふと気づいた。


「あ、あれ、まだ目覚まし鳴ってない!?」


 今朝はめずらしく、本当にめずらしく、目覚まし時計が鳴るまえに起床。


「いつもより、ちょっと早く寝ただけで、こんなに違うんだ~」


 昨日、里香に言われたのもあって、試しに早めに寝てみたのだ。


「朝余裕があるっていいな~、これ家を出る前に一クエストくらいはいけるかも」


 昨日の昼休みに話してたゲームをちょっとだけやることに。そしたら、思わぬレア素材が手に入って、朝から気分は最高。


「なにこれ、めちゃレアじゃん~~!! よ~し、とりあえずここまでかな。セーブ、セーブっと~」


 時間も良い頃なので、そろそろ家を出ることする。


「いってきま~す」


 なんだか今日は、いつもより足取りも軽い気がした。しばらく行くと、前方に里香を発見。


「おはよう里香!」

「あっ、おはよう柚!」

「「イェ~イ!!」」


 パァ~ンと元気にハイタッチ。


「どうしたの柚? 昨日とは別人みたいだよ」


 朝なのにばっちり目が覚めてる私に、少し驚いた様子だ。


「ほんの少し夜更しを控えただけだよ」

「へぇ~早速実践したんだね~、えらい、えらい」


 そう言いながら、私の頭をなでる。なんか子供扱いされてるみたい、でもまぁ~心地いいからいいや。


「あと、ちょっといいこともあってね~」

「え、なになに?」

「余裕あったから、ちょっとだけゲームしたんだけど、レア素材が手に入ったんだよ、おかげで朝から気分がよくってね~」

「そっか~、早起きもいいものでしょ」

「ほんとだね~」

「ちゃんと続けなよ」


 ………………。


「うん!」

「お~い、今の間は何かな~」


 昨日はたまたま誘惑が少なかったってだけで、毎日続けるとなると……。う~ん、無理だな。


「あっ、シャルちゃんも交えて昨日の猫ちゃんの話したいしさ、い、行こう里香」

「昨日柚が送ってきたやつね、じゃあ話の続きは学校でするか、さっきの話もまだ終わってないからね~」

「あ、あははは……」


 これは、にげられそうにないかな。


 そして学校に到着。教室のドアを開けると、シャルちゃんが駆け寄ってくる。


「おはようございま~す! ユズキ、リカ」

「「シャルちゃんおはよ~」」

「ねぇ~シャルちゃん、昨日送った猫ちゃんの写真どうだった?」

「So cute! すっごく可愛かったです」

「でしょ~、その写真には写ってないけど、実はもっと子猫いたんだ~」

「ユズキ、他に撮ってないですか?」

「ごめ~ん、一枚撮ったら、すぐ逃げちゃって」

「きっと柚のことあやしいと思ったんじゃない?」

「ひっど~い、フラッシュに驚いちゃっただけだもん」


キーンコーンカーンコーン♪


 チャイムが鳴って優子先生が入ってきた。


「皆さん、おはようございます。そろそろホームルームはじめますよ」

「あっ、お姉ちゃ~ん、見てこれ~」

「相原さん、お姉ちゃんじゃなくて、先生って……。うわ~可愛い!!」

「昨日の帰り道で見かけたんだ~」

「この白い子、他の子よりちょっと小さ~い、抱っこしたいな~」


 学校では教師モードのお姉ちゃんだが、可愛いものを見せるとこうなる。


「ねぇ~柚ちゃん、他には……。ハッ!?」


 我にかえったみたい。お姉ちゃんの教師モードは、案外簡単にくずせてしまう。


「あ、相原さん、続きは休み時間にね~、ホ、ホームルームはじめます」


 やっぱりお姉ちゃんの反応っておもしろい。


「それでは最後に、明日は午後から学校の外でスケッチ大会を行います、何を描くか各自考えておいてください、雨天の場合でも教室で行いますので、絵の具などは持ってきてくださいね。ではホームルームを終わります」


 その後の午前中の授業は、明日のスケッチのことばかり考えていた、だから授業の内容はほとんど覚えていない。後で里香にノート見せてもらわないと。


 そして現在昼休み。いつもみたいに三人でランチタイム。


「そういえばさ~、ふたりは犬派、それとも猫派?」

「う~ん、どっちも好きだな~、でも強いて言えば犬かな」

「シャルちゃんは?」

「シャルもどっちも好きです。でも一番好きなのはジョンです」

「あっ、そういえばシャルちゃんの家ってわんちゃんいるんだったよね」

「確か大型犬だったよね、犬種なんだっけ?」

「グレート・ピレニーズです、真っ白ですごくフワフワしてます」


 シャルちゃんが一緒に写ってる写真を見せてくれた。


「わぁ~可愛い! それに思ったよりも大き~い」

「はい、ジョンとても大きいです、立ち上がるとシャルよりも大きいですよ」


 グレート・ピレニーズは大型犬の中でも大きい部類のようで、クラスで一番小柄なシャルちゃんと並ぶと、これは犬が大きいのか、それとも少女が小さいのかどっち? ってなる。まぁ答えはどっちもなのだが。そんなことよりブロンド美少女と白くてフワフワな犬、並んでみるとすごく絵になる。まるで物語のワンシーンみたい。


「優しそうな目してるね~、なんだかシャルちゃんのこと守ってるみたい」

「ジョンすごく優しいです! 家で独りの時はず~っとそばにいてくれます」

「ねぇシャルちゃん、ジョンって初めて会う人に対してどうかな? ほえたりする?」


 今週の休みは、シャルちゃんの家におじゃまする予定で、ジョンとは、その日初めて会うことになる。可愛いと思う反面、この大きさの犬にほえられるのは少し怖い。


「大丈夫ですよユズキ、ジョンは家族と親しい人がわかるみたいです、初めて会う人でも、シャルの友達にほえたことはないです」


 どうやらジョンは、警戒するべき相手かどうか、ちゃんと判断できるようだ。


「そうなんだ、よかった~」

「あたし思いっきりもふりたいな~」


 当日ジョンと会うのが楽しみになってきた。


「ねぇねぇ、ジョンが子犬の時の写真ってある?」

「あたしも見たいかも~」

「ちょっと待ってください。え~っと、ありました、コレです」

「「可愛い~~!!」」


 想像の何倍、いや何十倍もの可愛さだった。そこには小さくてフワフワの白い子犬と、七歳くらいのシャルちゃんが一緒に遊んでる様子が写っていた。これは反則でしょう、可愛すぎるって。


「ジョンとシャルちゃんのツーショット最高すぎ~、すごく可愛い!」

「Oh~、ジョン可愛いですか?」


 ジョンをほめられて、ご機嫌な様子のシャルちゃん。


「うん、最高に可愛いよ! 一緒に写ってるシャルちゃんもね」

「エヘヘ、ありがとうですユズキ~」


 …………。


「ねぇ里香~、この子抱きしめてもいいかな~」

「あたしに聞くなよ」


 あまりの可愛さに、おもわず里香に許可を求めていた。


「OK! ユズキ~」


 するとシャルちゃんのほうからギュッっと抱きしめてくれた。


「ユズキとても暖かいで~す」


 この感覚、なんだか母性本能がくすぐられる。


「じゃあ~あたしも~」


 さらに里香が、私とシャルちゃんを包み込むように抱きしめる。はぁ~なんだか心地よすぎてホッとする。


キーンコーンカーンコーン♪


「えっ!? 昼休みもう終わり、もっとこうしていたいのに~」

「柚、また今度な」


 里香がはなれる。


「ユズキ、また今度です」


 シャルちゃんもはなれる。なんだかとてつもない喪失感が……。


「そういえば、次の授業。最初に小テストだったよね」


 ……げっ!? さっきまでの喪失感が一変、いっきにあせりへと変わった。


「ど、ど、どうしよう。里香~助けて~、完全に忘れてた~」


 里香は、やれやれといった様子でノートを開いた。


「そんなことだろうと思ったよ、よし、残り十分くらいでなんとかするよ」

「ありがとう~~!! やっぱたよりになる~」

「貸しひとつだからね柚」


 隣の席が里香で本当によかったと心の底から思った。


「シャルもちょっと復習しておきたいので席に戻りますね、ユズキもファイトです!」

「ありがとうシャルちゃん。お互いがんばろうね」


 シャルちゃんはそう言うと、自分の席へもどっていった。その後、里香は授業開始ぎりぎりまで必要な所をピックアップして教えてくれた。そのおかげで今回はなんとか乗り切ることができそうだ。


「今回は最後の手段みたいなものだから、後でちゃんと復習しとくんだよ」


「うん、ありがとうね」


 さすが里香、やっぱり持つべきものはなんとやら。


 ───そして放課後



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