03. 恋人の趣味が理解できないときは
「嵐のコンサートにいくのが生きがいなの」
私の部屋に遊びに来ていた当時の彼女は寝間着姿でそう言った。
彼氏である私に向かってジャニーズとは言え、他の男の話はしないで欲しいと思ったし、追っかけも止めて欲しいと口にも出して伝えたが彼女は止めなかった。
好きなものに夢中になっている彼女の姿は私と一緒にいるときよりも楽しそうにも見えた。それが悔しかったのかもしれない。
しかし、いまとなっては何と愚かだったのかと思い至るようになった。
好きな人から趣味を奪うということは植物から土を奪うに等しい行為だと思う。
土に汚れるのが嫌だからと植物の根っこを切り、透明な花瓶に水を入れて育てたとしても、どんな花も朽ちてしまう。もしかするとなたは栄養剤やら、なんやらをあなたは与えて世話を試みるかもしれない。
しかし、それでも朽ちていく。土は彼らには必要なもので、土の中で育っていった彼らのことを魅力的に感じていたのだから。
本当に花が好きなら、その土ごと愛せれば良い。
嵐が好きな彼女を私は好きになったのだ。
ちなみに余談だが、彼女と別れた後に私はアイドルグループを追いかけることになるのだけれど、推しの子はどことなく別れた彼女に似ていたように思う。