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第五話 シーン三【サツキのキモチとミヤコの想い】

第五話 シーン三【サツキのキモチとミヤコの想い】





(サツキ・サイド)





 クーワ・トワルスを出発して七日目の野営地で湖を見つけた。


「せっかくなんでゆっくり入ってらっしゃい♪私は用事を済ませてひとりで入るから」


 キョーコは錬金術の仕込みをやっておきたいらしい。


 サツキは「はーい」と返事をして、隣のハヅキを誘う。


「お姉ちゃん水浴びできる?傷の調子がよければ一緒いこ?」


「……今日は少し調子いいから大丈夫、です。レアンはどうするの?」


 いつものように連れていくと思ったのだろう。


 だがサツキは闘技場で二万人の前でキスしたことを思い出すと、レアンと以前と同じように接することができないのだ。


 名前を出されてレアンがこちらを見たが、さも当然のように姉に説明する。


「……お姉ちゃん、いいの!その……うちも大所帯になってきたし、なんというか周りの目を気にしてといいますか、別々のほうがいいと思っていたの!」


「……?そう?」


 あくまで冷静なつもりだったが、ハヅキに不思議そうな顔をされてしまう。


「じゃあ、レアン。ウチと入るか!年も近いし、一応は闘技場の戦友ともだしな!」


「ええっ⁉」


 するとシュウメイがそんなことをいいだして、レアンは驚きの声を上げる。


「いや何いってるの⁉ダメでしょ!」


「何でだ?ウチは全然恥ずかしくないぞ!見られて減るものでもないし!」


 サツキが注意すると、シュウメイはフフンと大きな胸をそらした。


「あなた女の子でしょ!そこは恥ずかしがってよ!」


「そうなのか?そういうのはよくわからんが……らおしーどう思う?」


 サツキの言葉に納得できないのか、師匠と仰ぐキョーコに聞くと笑って答える。


「そうね。レアンくんに鼻血でも出されたら困るから、女の子同士がいいんじゃないかしら?」


「そうか!レアンは裸を見ると鼻血がでるのか!変なやつだな!では一緒に入るぞ!サツキ!」


 ようやく納得してくれたのか、シュウメイは姉妹と一緒に水浴びをすることになる。


「……では、こちらは男同士で」


「はい、そうしましょうか」


 そしてミヤコとレアンは先にいなくなる。


 サツキはホッとして、ふたりを連れて男性陣と離れた場所に向かった。





 女子三人が湖のほとりで服を脱ぎ入ることになったが、シュウメイが恥じらいもなく素っ裸になると恵体があらわになった。


 最初から分かっていたことだが、シュウメイのスタイルのよさにサツキが思わずつぶやいてしまう。


「……なんねこれ?でっか」


 サツキの視線にシュウメイは気づいて笑う。


「こんなものあっても邪魔なだけだぞ!走ると痛いから揺れないようにつぶして固定しているんだ!あと階段を降りるときに、あと何段あるかわからん!」


「そ、そうなんだ……」


 サツキは普段から母を見ているから大きさはまぁ良しとしよう。


 問題は十二歳という年齢で、サツキよりはるかに大きいことだ。


「……ほらここ見ろ!下の方蒸れるからあせもになってる!暑い日は大変なんだ……布を下にはさんでいる時もあるぞ!」


「うわ!……ブツブツができてる」


 下ってなんね?と思ったが、持ち上げた所に赤い湿疹が出来ているのを見ると大変なんだなと思った。


 そこにハヅキもやってきて、自分の下腹をつまむ。


「……私はお腹のたるみの下に布を挟める、です」


「……それはもうちょっとやせようね、お姉ちゃん」


 ハヅキは油断すると、ぷにぷにというよりもちもち体型になってくる。


 今は傷が開くからあまり運動は無理だが、治ったら一緒に散歩しようと誓う。


「久しぶりの水浴びは気持ちいいなー!やっぱりお風呂が旅行中の一番の楽しみかも」


 サツキが姉とシュウメイを捕まえて汚れをこすっていると、ふたりのふっくらした体型に憧れをもってしまう。


 やっぱりレアンもこういう女の子っぽい体の方が好きだよね。


「あ……」


 そこでハヅキが何かに気づいて声を上げると、サツキもその理由が分かった。


 さっきまで閉じていた傷口がまた開いたのだ。


「……ちょっと痛い、かも」


「あとでレアンに癒やしをお願いしよっか」


 さすがに小さい頃からなので慣れてしまったが、ハヅキの傷口を見ると自分のことのように痛みを感じる。


 水をかけてキレイなタオルを一枚持ってくると、当て布として添えて本人に押さえさせた。





(レアンサイド)





「にぎやかですね」


「……ああ」


 レアンたちは女子のいる所から離れて水浴びをしていたが、静かな場所のせいか大声は聞こえてきた。


 レアンはミヤコと裸の付き合いをするのは、いまだに緊張する。


 向こうが脱ぐと視線をまともに合わせられないので、何度も「ミヤコさんは男ミヤコさんは男」と口の中でつぶやいた。


「……その後加減はどうだ?」


 体を洗っている最中に何気なくミヤコに聞かれ、何のことかとレアンは考える。


「えっと……調子は悪くないです。どこか変ですか?」


 何のことかわからなかったのでそう返すと、ミヤコは視線を落とす。


「……いや。あれだけの力を使って何もない方が不自然だと思っていたのだが」


「もしかして、ドラゴンとの戦いのことですか?」


「……左様だ」


 レアンの中では無理をした感じは無いが、聞かれれば話さないといけないことだ。


「実はよくわかっていないんです。心のなかに生まれた力というか。リーナが夢の中でくれたものとしかわからないんです」


 あの時ピンチの時に出現した剣は、星のきらめきをまとっていた。


「……レアン殿、これだけは覚えておいてほしい」


 ミヤコはそう口にして、真剣な目でレアンを見つめる。


 想いのこもった瞳に息を呑んで「はい」と返す。


「……この世で持ち主の力量以上に強くなれる伝説の武器や鎧があるとすれば、魔剣などに代表される代償がつきまとうものばかりだ。だから使う時はくれぐれも気をつけてほしい」


 ミヤコの言葉には重みがあった。


 何がそこまでいわせたのかわからないが、レアンも真剣に頷く。


「わかりました。これからは気をつけます」


「……ああ。キョーコ殿もシュウメイ殿も、武器に頼らずとも強い。あれこそが真の強さだと思う」


 ミヤコに指摘されて納得する。


「たしかに……。ボクももっと強くなりたいです。ミヤコさん、よろしくおねがいします」


「ああ、もちろんだ。レアン殿」


 ふたり見つめ合ってお互いを見て笑みを浮かべた。





(続)

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