第2話
取り敢えず森を進んでみるにしてもどちらへ進むべきか?
傾斜などはないし、川のせせらぎも聴こえてこない、風は多少吹いているがだからどっちがどうとか言う事もない、太陽のようなものはあるらしく木々の間から日の光が射している。
迷ったわけでもなさそうなゴブリンが生息しているんだからそんなにすぐ村や町があるとも思えないとなると若干心配になってくる、流石に寝ずに永遠と歩けるわけではないし、こんな森で寝れるかと言われれば勿論寝れない。
地球だったら虫が怖い所だがどういうわけかそう言った小さい虫と言うものは見当たらない、異世界ファンタジーのご都合主義かな?助かるけど。
「お?」
そんな考えを巡らせていると、前方の草むらからガサゴソとウサギのような動物が姿を現す、頭に長い角をこさえて。
「ここでの正式名称は知らないが異世界ファンタジーでは常連の一角ウサギだな」
等と語りかけた所で返事はなく代わりに俺の胸をめがけてひとっ飛びしてくる、それをヒラリと交わし剣を一閃、首を落とす、良く考えたら何の首も落とした事はないがゴブリンよりかは初めてがウサギで良かったのかな?ウサギ好きからはブーイングが来るかもしれないが。
血抜きが必要とか、そのまま放置とかその辺の悩みは当然ない、触れて収納する、すると頭の中でピコーン!と音がする、この辺は爺さんに伝えた通りのレベルアップだ。
この収納スキルは使用すればする程レベルが上がり好みのスキルツリーを選んで成長させる事ができる、勿論段々と通常仕様では上がりにくくなるからウサギ一匹収納しただけでレベルが上がるのは今回だけだ。
さて、集中すると目の前にゲームのステータスのような画面が浮かび上がる、これも俺専用の特別仕様だ、通常この世界のスキルもレベルアップするがステータス画面等は存在しないとの事、詳しい事は分からないが教会でお告げでもでるのか専用スクロールでもあるのかな?
たびたび余計な説明が入ってすまないが、最初は許しておくれ。
気を取り直してステータス画面を見ると幾つかの項目がある、?になっているのはまだ選べないようだが、距離と容量と時間の3つが選べるようだ、時間に関してはデフォルトで停止がついているので進めると言う選択がある、将来的には発酵とか料理関係、薬など調合してから時間が必要な物等に使えるのかもしれないが今は必要ない、容量も2階建ての一軒家くらいの容量があるので取り敢えず後回し、この収納スキルのチートとも言える最初の力は距離だ、手を触れずに物を収納できるとすればそれは脅威になる、なんせ人の装備を戦闘中だろうが構わず収納できるって事だからな、チート以外の何物でもない、さて距離を選択、ポチっとな。
「おぉぅ」
画面が吸い込まれる様に消え、自然と収納可能な距離が認識される、どうやら今回のレベルアップでは10cm程、触れなくても収納できるようになりましたって感じだ、いきなり全てが手に入ってもつまらないだろうから等とカッコつけたいわけじゃなく、爺さんからの制限によるものだ、コツコツいくさ、まぁウサギ一匹入れただけで上がってるんだからコツコツって程でもないしな。
いい加減進む方向を決めないと収納のように時間は止まってくれない、テンプレだと薬草を探して迷い混んだ女の子や魔物に襲われる冒険者、もしくは令嬢等々がそろそろ登場する所だがそれも一応断っておいた、爺さんはそんなものは最初からないと言っていたがね。
木上にでも登って辺りを見渡せたらいいんだがそんな感じの木でもない、身体能力は地球の頃と比べて遥かに上がっているが全力で森の奥に進んでは意味がない、真面目に夜営も考えないと行けないんだろうか?
そうそう、遅ればせながら、この世界の装備一式、ある程度の通貨、数日分の食料は入れて貰ってる、スニーカー履いてたりスーツを着てて売れるとかってのはなしだ。
なので結局何の根拠もなく全力でウサギが出てきた方向へ走ってみる事にする。
体感で一時間、嘘です、30分程走ってみたが景色が変わらない、木々の間をぬって走ったので方向も直線だったのか分からない…しかも狼のような、もっとデカいから魔物か?の群れを引き寄せてしまったみたいだ、戦闘したり収納したりとしてみたいが、今は人里に出るのを優先する事にした。
結果、追い付かれもしないがキッチリ引き離せるわけでもなく、臭いかな?いつまでも追ってくるので倒しました、ハイ、全部で11匹、収納してレベルが更にピコーン!ピコーン!と二回上がったようだ、そしてこのスキルツリー、1レベル毎に1項目とれる、ある程度命の保証があるので、デカい狼を入れていっぱいになってきた容量と距離のを選択する、容量は2倍程になり距離は30cm程まで上がった。
今のところ不自由なく収納スキルは成長しているが人には会えない…。
そのまま走ったり歩いたりして陽が真上に来た辺りでやや開けた場所の川に出た、一面の木々よりも前進したのは間違いない。
綺麗に澄んだ膝丈くらいの川だが一応魔物等に注意しながら手と顔を洗い、川に沿って下る事にした。
そして陽も落ちかけた頃ついに!
何も見つからなかった…。
少し休みたがったが暗くなって来たと思ったのもつかの間一気に夜になり、森の中は闇で何も見えず月光で照らされる水面を目印にビビりながらつまづきながら泣きそうになりながら小走りに進んで行くと、ついに!ついに!前方に明かりを見つけた!間違いなく焚き火の明かりである!
後から冷静になって考えてみたら焚き火があったからと不用意に近付くのは自分にとっても相手にとっても危険極まりない行為だったが、その時の俺は地球感覚で遭難した上で見つけた人の痕跡だったのだ、無理もない。
「おーい!おーい!」
俺は焚き火に照らされる人影に走りよりながら力いっぱい声をかけた。
「止まれ!それ以上近付くなら敵意ありと見なして攻撃する!」
男はそう言うと急に止まれない俺に向かって弓を射った、ハイ射ちました、全力で走ってる上に月光だけの闇夜、身体能力は上がっても達人な訳じゃない俺は。
「うそーん」
白い壁の空間にいた…。