第6話 弟ができた!
朱里のせかいはどんどん広がっていきます。
おはようございます、朱里です。いやー、いい朝。
今日は朝からお人形遊び。
「あ、アカリ!」
「早く早く!」
「マーサ、ミーシャ、シーナ、ラーヴェ!」
わたしはみんなに向かって駆け出す。
「やっほぉアカリ~」
「やっほーミーシャ」
「アカリ、熊さん持ってきてるよね!」
「もちろん!」
わたしは鞄の中を漁り、熊さん着せ替えセットを取り出す。
「わぁ、アカリの熊さんのワンピース、素敵ね!」
「マーサのポンチョもかわいい!」
その日は二時間ほど遊んで解散となった。次は明後日、マーサのお家で遊ぶ。
うふふ、楽しみだな~。
次の日。
今日は里奈お姉ちゃんとカスミお姉ちゃんは冒険者の任務があるので私はお留守番。ちぇー。
やることもなくなり暇になったので外に出ることにした。と。
「おぎゃあ、おぎゃあ…」
何故か家の前に赤ちゃんが落ちていた。文字通り落ちていた。
「赤ちゃんだぁ、かわいいー。泣いてるね、お母さんは?…ハッ!」
その時、朱里は思い出した。
そうだ、里奈お姉ちゃんに、『髪が黒くて、お母さんかお父さんがいない子は、ウチに連れてきてね』って言われた!この子の髪、黒いじゃんよ!
わたしは泣きわめく赤ん坊を連れ、家に戻った。
「うーん、、どうしよう…」
とても困った。赤ん坊が泣き止まない。
オムツは汚れてなかった。…あ、ご飯かな?お腹減ってると、泣きたくなるよね!名案!
確か、カスミお姉ちゃんが牛乳と間違えて買った粉ミルクがこの辺に……
「あー、あった!」
粉ミルクについてきた哺乳瓶に粉をいれて、お湯を…
「あぁー、お湯がない!」
勝手に火を使ったら、怒られるかな?…いや、赤ちゃんの方が大事でしょ!
「えいっ」
魔力で動くコンロに水の入った鍋を置き、コンロに魔力を通したら、すぐに火がついた。
「わたしも出来るよ~」
沸かしたお湯を少しさまして、哺乳瓶に入れていく。
わたしも日本で妹のお世話をお手伝いでよくしてたから、家事もちょっとは出来るんだよ、うふふ。
「はーい、ご飯ですよー」
哺乳瓶の先を赤ちゃんに見せると、赤ちゃんはそれをくわえて、一生懸命にミルクを飲み始めた。
「やっぱり、お腹減ってたんだ。兄弟、いいなぁ」
良かった良かった。
ふと赤ちゃんの着ている服に目をやると、ヨダレでベトベトになっていた。
「アアー、服がない~」
どうしよー………あ!
「ザルアお姉さんなら!」
ギルドの場所はわかるし、ザルアお姉さんなら何とかしてくれるかも!
「急げーー!」
わたしは赤ん坊を抱き抱えて家を出た。
朱里!発進です!!
と、勢い良く発進したものの、その勢いは長くは続かなかった。
「ふぅ、ちょっと休憩」
意外とこの子重たい。疲れちゃった。
「あら、アカリさん!?一人ですか!?」
「ザルアお姉さん~!!」
ちょうどいい所にザルアお姉さんが通りかかってくれた。神ですか!いや、身内に神がいたな。
わたしはザルアお姉さんに事情を説明する。
「なるほど、赤ん坊の服がいるんですね?それなら、そこにあるツーゼおばあちゃんのお店に行くといいですよ。案内しましょうか?」
「わぁ、ありがとう!」
わたしとザルアお姉さんはツーゼおばあちゃんの店へ向かった。
「ねえねえザルアお姉さん、ツーゼおばあちゃんってどんな人?」
「ツーゼおばあちゃんは、私のおばあちゃんなんですよ、お母さんのお母さん。」
「そうなんだ!おばあちゃんは服屋さんだけど、お母さんは?」
「私のお母さんは、ギルドでお料理してたんですけど、手をケガしちゃったんです。今は何もしてません」
「そうなんだ…、かわいそう」
ザルアお姉さんと話している内に、ツーゼおばあちゃんのお店に着いた。
「いらっしゃい…って、ザルアじゃあないか」
「おじゃまします、おばあちゃん。今日はこちらのアカリさんの話を聞いて欲しいの」
「えっと!この子の服が欲しいんですけど!」
「あー、このサイズだったらこれかこれだな、とりあえずこれ着せときな」
おばあちゃんがパッと服を出してきてくれた。
早い!すごい~!さすが本職!
わたしは急いで赤ちゃんに着替えさせた。
「ふぅ、出来た」
満足満足。
「おい、そろそろ寝かしつけた方がいいんじゃないか?」
「確かに。眠そう」
わたしは赤ちゃんを寝かしつける。
しばらくして、里奈お姉ちゃんとカスミお姉ちゃんが迎えに来た。
「おお、リナーテ、やっと来たか」
「遅くなってすみません。で、朱里、この子どうしたの?」
「え、落ちてた」
里奈お姉ちゃんは不思議な顔をしているけど、嘘は言っていない。ほんとなのに!落ちてたんだよ!
こういうときマーサ達ならすぐ信じてくれるんだけどなぁ。
30分くらい詳しく話して、やっと信じてもらえた。
「この子は今日から朱里の弟だよ。朱里が名前決めてあげな」
夕ごはんのとき里奈お姉ちゃんに言われた。男の子だったのか。
「いいの!」
「放っておけないでしょ」
やっぱり里奈お姉ちゃんはいいひとだった!!知ってたけど!
「じゃぁ君はー………空芽!空芽がいい!」
わたしに、弟ができた!