第3話 パパ
こんにちは。遅くなってすみません
「リナーテ、アカリ、起きて!今日は春の信仰祭だよ!」
まだ夜も開けない内にカスミお姉ちゃんに起こされた。
眠いよぉ………。
「信仰祭?」
シンコーサイ………?まさか!
「お祭り!」
「ねぇカスミ、信仰祭って何?」
里奈お姉ちゃんの質問に同意だ。
「信仰祭は、この街に恵みをもたらしてくれる神様に感謝して、楽しむお祭り!」
楽しむお祭りだってー!?
「あそぶの!」
「そうだよ、アカリ!今日は楽しもうね!」
「うん!」
久しぶりだな、お祭り!楽しみ!
「屋台とかでるの?」
「うん。果物すくいとか、ご飯屋さんとかね」
果物すくい……。ボールすくいみたいなものかな?
その時、里奈お姉ちゃんが爆弾発言をした。
「私も屋台出せないかな?」
里奈お姉ちゃんが!?
「いいじゃん、それ!リナーテのご飯で屋台をだすんだね!」
ご飯の屋台かぁ!でも、ちょっと楽しそう!
「わたしもお姉ちゃんのお手伝いするー!」
「ありがとう、朱里。でも、飛び込み参加ってオーケーなの?」
確かに。準備が間に合うのかな?
「大丈夫だよ!でも、急いだ方が良いよ、エントリーできるのは、もうちょっとだから」
里奈お姉ちゃんは急いで家を出ていった。
エントリーは間に合ったらしい。
そして今日は今日はシチューを作るんだって!
私もシチューは大好き。
そして、祭が始まった。
里奈お姉ちゃんが屋台を出しているのは、東門広場。広場の真ん中には噴水があって、皆の憩いの場。
「さ、始めるよ!」
「「はーい!」」
まずは材料の下ごしらえ。
わたしはウインナーを切ったり、玉ねぎの皮を剥いたりした。
後は全部里奈お姉ちゃんがやったけど。
辺りにいいにおいが漂い始め、客が増えてくる。
わたしとカスミお姉ちゃんは接客を任せてもらった。
「いらっしゃいませ!」
「シチュー下さい」
「はい、鉄貨4枚です」
やってみると以外と簡単だった。
計算出来てすごいって誉められたりして、嬉しかった。
「リナーテ、そろそろ代わって!!」
「じゃあカスミ、この鍋まぜてて。焦げないように。あと、朱里は、シチューができたら味見して、塩で味を調整してね」
カスミお姉ちゃんが限界を迎えたらしい。わたし達は料理にまわった。
と言っても、ほとんど出来ている物に塩で味を整えるだけなのだけれど。
それからも客はじゃんじゃん来た。交代で遊んだりはしたが、あまり遊べなかったかな。でも、とっても楽しかった!
結局この日は、里奈お姉ちゃんから銀貨6枚のおこづかいをもらった。
信仰祭2日目。今日は午前神殿に行って、それから里奈お姉ちゃんは屋台、わたしとカスミお姉ちゃんは遊び倒す予定だ。
神殿は神様に祈るところだって。
「おはようリナーテ」
「里奈お姉ちゃん、おはよう」
「おはよ。ご飯できてるよ」
かきこむように朝食を済ませ、わたしたちは神殿に向かった。
神殿に到着した私たちはいま、お祈りをしている。
真剣に祈れば、神様の声が聞こえるんだって。聞いてみたいな。
「それでは、神に祈りと感謝を。」
神殿のお兄さんが床に膝をつき、指を組み、祈り始める。
わたし達も真似っこして祈る。
その時。
『朱里。聞こえるかい?』
「えっ」
懐かしい声。
「…………パパ」
それはあの日姿を消した、パパの声だった。
蝉が鳴く蒸し暑い日だった。
その日もパパは普通に出勤していった。
「じゃあ朱里、行ってきます」
「行ってらっしゃい!早く帰ってきてね」
「あなた、お弁当」
ママがはい、と包みを渡している。
「ありがとう。今日のお弁当は何だろうな~?行ってきます!」
「「行ってらっしゃーい」」
夜になった。
パパはまだ帰ってこない。
「ねぇ、ママ。パパ、遅くない?夕御飯冷めちゃうよ?」
「本当ね。電話して見ようかしら?」
電話をかけても、パパは出ない。
「お酒を飲んでいるのかしら?朱里、先に食べてしまいましょう」
「………うん」
次の日。さらにその次の日もパパはまだ帰ってこない。
メールしても、電話しても、反応がない。
「ねぇママ、さすがにおかしいよ。」
「そうね………。一応、警察に連絡しておきましょうか」
次の日。近くの河原でパパの靴とお弁当と鞄が見つかった。
いなくなったパパの声。
なんで、ここで?