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健常者と称する者の傲慢

作者: 黄輪

 ある医師が、「画期的な治療法を発明した」と発表した。

それは視覚や聴覚など感覚器官に障害のある人間に生体工学的手術を施し、健常者と同様の感覚を与えることができる、と言うものだった。

「これにより、この世から『障害者』などと言う言葉は消滅するでしょう」

 彼はそんなことを豪語した。


 事実、この治療技術が確立されて以降、多くの人間がこの手術によって、大多数の人間と同水準の感覚を獲得することができた。

 ところが開発した医師にとっては極めて不思議なことに、障害者と呼ばれてきた人間の中には、彼の治療術を施されることを拒む者もいた。当然、社会からは一向に、そのことばが消える気配は見られず、医師は業を煮やした。

「この手術を受ければあなたも他の人と同じように生活できるんですよ!?」

 彼はそう唱え、手術を望まない人々に対し、ほとんど無理矢理に治療を受けさせ続けた。


 そんなある日――彼の前に、到底自分たちとは似ても似つかわぬ風体の、七色に光る目玉を3つ持った、身長120cmくらいの者たちが現れた。

「アナタはスバラしいケンキューをされているようデスね」

「とてもカンプクしてました」

「でもザンネーンながらアナタには+#*感がケッソンしてるようデス」

「ソレではケンキューもタイヘンでしょ。セイカツにもコマルはずデス」

「ワタシたちがシュジーツしてあげます」

 キンキンと耳障りな声でそんなことを言われ、医師はそのあまりの不気味さに、思わず首を振っていた。

「い、いえ、私は今のままで十分ですので」

「おやー」

 七色の目玉が、不思議そうに見つめてくる。

「オカシーことをいうデスね。アナタ、ベンリになるといってシュジーツしてたじゃないデスかー」

「ダイジョーブ、ダイジョーブ。ベンリになる、おとく、ハッピー」

「ワタシたちとおなじなるヨー。ハッピー、ハッピー」

 医師の抵抗も虚しく、彼は七色目玉たちに、どこかに連れ去られてしまった。


 それから3日後、彼はふらふらと、頭を両手で抱えながら自宅に戻って来た。そしてそれから2時間もしないうちに、頭に包丁を刺した状態で、自宅の前に倒れているのが発見された。

 彼の自宅の至るところには、彼の字でこう殴り書きされていたと言う。

「こんなことをしりたくはなかった」

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