濃厚接触
「濃厚接触、しちゃったね」
青年の唇が離れるとその娘は微かな声を発した。
医師も看護師も防護服越しにしか接触が許されない、未知の感染症。
「僕は抗体を持ってる。感染したけど、治癒したんだ」と語った青年は、無防備な姿のまま、病室に入って来た。
「だから君もよくなる。よくなったら、ちゃんとデートしよう」
衰弱した娘の様態を気遣ったか、青年は病室を出て滅菌室に入る。
その瞬間、青年は喀血した。狭い滅菌室が鮮血に染まる。娘の様態悪化を知らせるエマージェンシーコールを聞きながら、青年の意識は薄れていった。