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第6話

「まさか……」

 あまりにも突然の出来事にアレンは絶句してしまった。

 その時、部屋のデスクの上にある電話が鳴り始めた。

「ちょっと失礼」

 一言おいて少佐が受話器を取る。

 少佐は軽く「ああ」や「そうか」など話していたが、突然「何だと!」と叫び、汗をだらだら流しながら会話を続けた。

「分かった。詳しいことは後ほど」

 彼は受話器を置き、こちらに戻ってきた。

 ハンカチで額を拭きつつも、目は未だ冷静なままでアレンとアリウムを見つめていた。

「たった今、前線から連絡が届いた。詳しくは言えないが、機甲部隊が奇襲攻撃を受け、壊滅状態にある」

 確かに驚愕すべき事実だろうが、少佐はまだ何か話そうとしている。

「打撃といっても戦車にやられたわけでも、航空機にやられたわけでもないらしい。その相手は____」

 彼はアリウムを見て、ゆっくりと言った。

「銀髪の少女だそうだ」




 ノーラー上空


 その報せは時を同じくしてトニー・ベイツの元にも届いていた。

「なあ、今日は何日だ?」

 彼は後部銃座にいるティム・レイに質問を投げかけた。

「今日は3月12日です」

「じゃあこいつはジョークじゃないようだな」

 ベイツは笑いながら地図を見た。

「もし本当に機甲部隊がたった一人の少女にやられたなら、まだここらにいるはずだ」

「信じているんですか?」

「まあな。完全って訳じゃあないが」

 ベイツはこういう馬鹿げた話が大好きだった。小さい頃なんかも湖に恐竜が居ると聞いて一日中探し回ったりもした。

 そして今度も、戦場という危険な場所でさえ、彼の好奇心は留まるところを知らなかった。

「よし、行くぞ!」

 彼がそう言うと、軍の最新鋭爆撃機は大きく唸りながら急降下を開始した。

 後続の機体もそれに続く。

「レイ!カメラを用意しておけ!勲章のためにな!」

「分かりましたよ」

 レイは半ば呆れながら少女探しに付き合うことになった。

 薄い雲の層を爆撃機はただ真っ直ぐに進む。点にしか見えなかった地上の木々もそれに従い、はっきりと見えるようになってきた。

「あれは……」

 ベイツは2,3個黒煙の上がる黒い物体を発見した。

「あれは機甲部隊だ。レイ、注意し……」

 彼の言葉を遮るように、空気を切る音がした。

「何だ!アレは!」

 その空飛ぶ球体は旋回したと思うと、後続の機体に命中し、爆散した。

「もしや……」

 ベイツは照準を覗き目の前の地点を見た。そこには報せにあった銀髪の少女が一人立っていた。

「クソッタレ!こんな化け物だったとはな!さ流石に撤退する!」

 ベイツは機体を持ち上げると、今度は急上昇を開始した。急な旋回によって体に重度のGが懸かる。

 しかしそんなことはお構いなしに少女はまた次の機体へと狙いを定め、光弾を放った。

「何だアイツは!まるで魔女だ!」

 彼は自嘲気味にそう言うが、惨劇を一番目の当たりにしているレイにはそんな余裕はなかった。

「ベイツ!どんどん墜とされているぞ!」

 彼の言葉通りに航空機はまるでハエでも墜とすかのように次々と墜とされ、数は半分を下回っていた。

「コイツは逃がしてくれなさそうだな……」

 今のところあの光弾を振り切った機体はいない。もう覚悟を決めるしかないとベイツは悟った。

「なあレイ。お前、脱出の仕方は分かるな?」

「ああ……」

「脱出しろ。おそらくこの機体は助からない」

「そんな!ベイツ、お前はどうするんだ?」

「俺は奴に一矢報いる。俺がここに来なければ他の奴らは死なずにすんだはず。なのに何の戦果もなく、のこのこと生きて帰ることなど俺にはできん!」

「じゃあ俺も!」

「お前は生きて帰れ!奴の情報を上に知らせろ!それがお前の使命だ!」

「格好つけやがって……」

 レイは悪態をつきながらも、機関銃で少女を撃ち続けていたが、どうも効果額見えない。人智を超えた力が働いている。

 レイも流石に無理だと悟った。

「分かった。ただ、絶対に生きて帰れ。俺はまだお前の背中を守る使命がある」

「了解。また会おうぜ相棒。それと脱出の時には気を付けな」

 レイはそれを聞くと脱出のために風防を開いた。

「じゃあな」

 彼は広い空へと飛び降りた。

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