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第3話

 翌朝、アレンは医務室に向かった。

「おはようございます」

 アレンがそっと扉を開けると、そこには例の少女以外は誰もいなかった。

「誰もいないか……」

 周囲を見回しながらそっと扉を閉めると、彼女が眠っているベッドの仕切りを開けた。

 彼女はまだ起きていないようで、寝息を立てていた。昨夜は薄暗くてよく見えなかったが、何より目を引いたのはその銀色の髪だ。

「地毛の銀髪なんて見たことないな……」

 それに何処か異国。いや、まるで異なる世界の存在、そんな感じがした。

「それに、この首輪……」

 アレンが彼女の首輪を触ろうとしたその時、彼女は目を覚ました。

「…………ここは?」

 紅の瞳がこちらを見つめる。彼女は目を擦ると、少しずつ自らの状況に気付き始めた。

「貴方は?助けてくれたの?」

「まあ、そうだ。目が覚めてよかったよ」

 彼女ははだけた入院着を整えると、体のあちこちを触って何か確認をしていた。

「あ、ありがとう!で、ここは何処か教えてくれませんか?」

「ここはマシヤ……っても分かるかな?」

「マシヤ……。ノーラーからはどれくらい離れていますか?」

「えっ、ノーラー?」

 ノーラーといえば今、こちらの軍が攻撃している土地の名前だ。ここからそう遠くはない。

「そんなに離れていないけれど……」

「やはり、そうですか……」

 彼女はそれを聞いて少し考え込んでいた。

「その、こちらも聞いていいかな?」

 アレンはあまり彼女の邪魔をしたくなかったが、聞かなくてはこのあとのミドルトン少佐との話に差し支えが出る。

 彼女はそれを聞くと、はっとした顔になりこちらを向いた。

「すみません、少し考えごとをしてしまって……」

「こちらこそ。で、君の名前を教えてくれないかな?」

 柔らかい物腰でアレンは尋ねた。

「名前は……アリウム。そう、アリウムです」

「アリウム?珍しい……」

 アレンは彼女の名前を手帳に書きながら、進める。

「で、どこから来たか教えてもらえるかな?」

「ノーラーからここまで逃げてきたんだと思います」

 アレンは心の中で「思います」に違和感を覚えた。

「思いますってどういう……」

「それが、あまり記憶がはっきりしなくて……」

「ああ、そうか。なら覚えている範囲で構わない。それで、君はどうしてここまで逃げてきたのか覚えてる?」

「あの、それは……」

 彼女は少し俯きながら、髪をいじり始めた。

「話したくないならそれでも構わないよ。これだけで十分だ」

 そう言ってアレンは手帳を閉じると、懐にしまった。

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