第2話
医務室には灯りが付いており、入るとグリーブス先生がすぐに迎えてくれた。
「おや、どうしたんだ?」
「先生、この娘を診てやってくれ」
アレンは少女を近くのベッドに下ろすと、自らの上着を被せた。
怪訝そうながらも先生は注意深く彼女の体を見始めた。時々先生はアレンに「彼女は何処に」や「何か話していたか」などの質問を投げかけ、その都度アレンは答えていた。
しばらくの診察の後、先生は椅子に腰掛けて言った。
「脈もあるし、命や怪我などは大丈夫そうだ。ただ極度の空腹状態にあるからそこは面倒を見てやらなくてはならんな」
「そうですか」
他人のことではあったが、アレンは安堵した。
「だが彼女、少しおかしな点があってな」
「おかしな点、ですか……」
そう言うと先生は彼女の前髪を掻き上げ、額を見せた。
「ここに紋章があるだろう?これがちょっと不自然でな」
先生はパラパラと難しい書類をめくりながら、話した。
「でももしかしたら、ここらの集落での慣習とか?」
「かもしれないがな、これに私は見覚えがあふから違うと思うんだ」
「じゃあ一体……」
「さあ、それが思い出せんのだよ」
「しかしな」と先生は続けた。
「彼女、首にもほら、こんな首輪が」
そう言って首元にある首輪を指さした。
「私は医学が専門だからこの首輪の詳しいことは分からん。だか、もしかしたらミドルトン少佐なら何か知ってるかもしれん。彼の父親は民俗学の教授でね、彼自身もそうとう詳しいと聞く。明日の朝、彼を訪ねてくれないか。話は付けておくから」
「わ、分かりました……」
「じゃあ、君に任せるよ」
アレンは戸惑いながらも返事をした。
入り口ではまだリチャーズが待っていてくれた。
「先に戻っていると思った」
「俺も興味があったからな。あの少女には」
リチャーズは上着を肩に掛け、右肩を回していた。
「何か気付いたのか?」
「何となくだが、彼女はこの辺りの人間じゃあねえし、おそらく敵でも味方でもないはずだ」
アレンが何か聞く前にリチャーズが先に「何故かって?」と言って制止した。
「あの髪色、肌、おそらくあれは……」
そこまで言うと、彼はふっと笑って「いや、馬鹿げてるな。やめておこう」と言った。
「おい、気になるだろ?話せよ」
「そんなきにすることじゃねえよ。それに、明日ミドルトン少佐のところに行けば何か分かるはずさ」
リチャーズそう言うと大あくびをした。アレンはすっきりしなかった。