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第1話

 夜は寝こそすれば短いが、起きている分には全く永遠のように感じる。チャーリー・アレンはそう思った。

 歩哨任務に就いてまだ一時間。その間彼とリチャーズは一言も話さず、暗闇に目を向けていた。

 時刻は零時をちょっと過ぎたくらいか。いつでも撃てるように小銃を構えながらも、時折視線は星空へと向けていた。

 頭上には名前も知らない星座たちが所狭しと詰まっていた。この時ばかりは、ここが前線付近であることを忘れさせてくれる。そんなことを思った瞬間、二人の視界には小さいながらも何かが動く気配がした。

「動物……?」

 リチャーズが聞こえるか聞こえないかの大きさで言った。この辺りは森になっているので、動物が現れることはそう珍しくもない。

「見てくる」

 アレンはそう言うと、小銃を構えつつ暗闇を進んだ。

「何かあったら迷わずに伝えろ」

 リチャーズは後ろからそっと声を掛けた。


 星空の下、彼はゆっくりと歩きながら周りを注意深く見た。星明かりによって視界は少し明るい。

 そこでまた例の物音がした。

「誰か!」

 声を上げるが、返事はない。やはり動物か?

 また一歩奥に進むが、その時足裏に違和感を感じた。

「うっ……」

 突然の自分以外の声に心臓が大きく脈打つ。どうやら何者かを踏んだようだ。

「クソッ!動くな!」

 アレンはとっさに飛び退き、銃口をそちらに向け、恐怖を打ち消すために大声を出した。

「たすけ……て……」

「な、女性……?」

 あまりにも予想外のことに一瞬緊張が緩んだが、即座に耳を掠める銃声によって目を覚ます。

「な、敵か!」

 しゃがみながら、音のした方を窺う。人影が二つ三つ、間違いない。敵襲だ。

 この銃声におそらくリチャーズも気付いたはずだ。すぐに基地の方から警報が鳴り始めた。

 サーチライトはすぐそばを照らし、異国語の会話が聞こえてきたと思うと、すぐさま彼らは姿を消した。


 暫くして、リチャーズとが松明をもってこちらにやって来た。

「大丈夫か。相棒」

 土埃で薄汚れた彼の横顔には汗が滴っていた。

「俺は大丈夫だ。それより……」

 アレンは見つけた少女を指さした。

「おい、これって……」

「さあ、俺にも分からない。しかしまだ生きてる。とりあえず連れて帰ろう。敵でも味方でもこのまま放置は出来ない」

「分かった」

 リチャーズはアレンの小銃を預かると、アレンはその少女をおぶったが、背中に異様な感触があった。

「なあリチャーズ」

「どうした」

 リチャーズは松明を持ったまま、振り返らず言った。

「この娘、どうやら服を着てないようだ」

「へえ。そんなガキに変な気起こすなよ」

 火の粉の飛び散る音だけが聞こえた。

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