元旦 頂上から地下へ
『今年は、年始に予定が出来て帰る事が出来ないんだ。春には、戻ろうと思うよ。うん。わかった。そしたら、良いお年を。』
俺は、年末なので実家に電話するのであった。真冬は床暖のため、丸くなっていた。
そして、ヤバタは朱美ちゃんを呼び、ここで過ごす事なっていた。それに守も連れてきているのであった。ヤバタの所も、守もすでに両親が他界しているようで、年末年始をここで過ごす事は問題がなかった。むしろ、薫子さんは、その事を知ると奮起し豪華な食事を用意してくれるのであった。
『みっちゃんも、来年は必ず帰って、顔を見せてあげなさい。それだけでいいから。』
『はい。わかりました。』
薫子さんは、何時になく真剣な口ぶりで話すのであった。それも、そうであろう。両親が生きているのが、当たり前でないのだ。それだけで、恵まれているのかもしれない。
『朱美、ビール取って来てよ。』
『自分で取りなよ。まったく。いつも、こんなにだらしないの!?どうせ、皆に迷惑をかけているんでしょ。』
朱美ちゃんは、ヤバタの妹とは思えないほど、しっかりしているのであった。
『まぁまぁ、いいのよ。年末だし、ひーちゃんは、大活躍したのよ。』
薫子さんは、それとなくフォローをするのであった。確かに、ヤバタのおかげで、助かっていた。
コマリだけでなく真冬が今も存在出来ているのは、こいつのおかげであろう。
今のだらしない姿をみると、とてもそんな風には見えないのだが。
『本当だよ。ヤバタには助けてもらったよ。今年は色々あったし、ゆっくりさせてやってよ。』
俺も、感謝を込めフォローをするのであった。
『分かりました。皆さんが、そこまで言うのであれば。けど、お兄ぃ。飲みすぎないでね。』
『大丈夫。大丈夫。明日から籠るんだから今日ぐらいいいじゃない。』
『そうそう。まだ、年末が始まったばかりなのだから。』
酒のみのリンが、ヤバタに追従するのであった。奈菜は、きちんと実家に帰り、火輪も同様であった。火輪に関しては、年末年始は忙しいようであった。後で、隙をみて転鏡で、少しだけ参加しに来るとは聞いていた。
そして、12月31日がやってきた。
俺らは、山頂を目指しているのであった。参加したのは、俺とヤバタと朱美ちゃんと守の4人であった。真冬に関しては、飛行を取得してきていたので、興味がないようであった。
俺らは、入念に調べ準備をして登ったのであるが、守と朱美ちゃんのおかげで難なく登る事が出来たのであった。まー、確かに辛いのではあるが、他の方々よりも何倍も楽をしていたのであった。
なぜなら、強風や突風対策に、朱美ちゃんに能力である裁縫で、地面と縫い付けながら登り、また寒さや強風も守の結界により緩和していたためだ。
そのため、普通の登山よりも楽に踏破できてしまった。この二人が居れば、世界の山を制覇する日も遠くないようだ。
そして、元旦を迎え、ご来光まで待つこととなったのだ。結界を張ってくれたのだの待つのも苦でなかった。
他の人よりは、苦労して登ってきてはいないであろうが、初のご来光は、とても神秘的に見え、感動するのであった。俺は、そこで願うのであった。今年こそ平穏な生活を送れるようにと。
しばらくし、日が昇り始めると順に、下山を始めるのであった。しかし、少し厄介な事が起きたのであった。ヤバタが、新年早々やらかした。待っている間に、チビチビと水筒を飲んでいるかと思ったら、案の定、酒を持ち込んでいやがったのだ。
そのため、少しふらつきながらトイレへ向かうのであった。もちろん、俺と守も、安全のためついて行ったのだが無駄であった。ヤバタは、期待を裏切らず滑落した。そして、俺と守だけでなく、一人の男も巻き込んでいくのであった。そのまま滑落し、スピードにのっていく。止まろうとも思うが、止まらず崖から落ちていくのであった。
誰もが新年早々に終えたと思ったのだが、幸いにも朱美ちゃんが居たのであった。
いち早く事態に、気が付いた朱美ちゃんが能力により、追いつき地面との衝突は免れたのであった。その後、霊力の糸を伸ばし、ゆっくりと下り地面に着いたのであった。崖というより、よく見ると空洞に落ちたようだ。そこは日が少し入るが、真っ暗であった。
そして、現在。
俺達と巻き込まれた男は、地下都市へ着いていた。いや、転移させられていた。あの後、真っ暗のため、持っていたライトを照らすと、何も変哲もない洞窟の様であった。しょうがないので、出口を探し奥へ進むと見たことがある祠があったのだ。
そして、そこを調べると転移の円陣が書いてるのを見つけたのであった。そうして、どうするか考えもせずに、ヤバタが起動したのであった。
地下都市に転移すると、直ぐに拘束されてしまった。相手からしたら、怪しさしかないので当たり前である。何百年も稼働していなかった転移の祠が急に光りだしたので、警備の人達で祠の外は、うごめいていた。そして、泥や汗まみれだったので、先にお風呂へ案内されていた。
このまま、地下都市の王に謁見させる訳にはいかなかったので、見張り付ではあったが、身体を洗えて助かったのであった。
そこで、ようやく巻き込まれた男と自己紹介をしたのであった。そこで、ようやく、俺は見た事がある顔と気が付くのであった。それは、相手も同じであったのだ。
俺が、茉莉花と初めて会った時の強面のお兄さんが、そこにはいたのである。
草薙 良 (27) くさなぎ りょう が、巻き込まれた方であった。
『お前、麻雀で死にかけた坊主じゃねーか。』
『あの時は、どうも。そして、今回も。』
『お前も、良く死にかけるな。それにしても、朱美ちゃんだったか。助かったよ。』
『へへへ、俺の妹ですかね。』
『『お前のせいで、こんな事になったんだよ。』』
そうして、俺と良さんは、苦笑いをするしかなかった。
話してみると、良さんは順応性がかなり高いようであった。不思議な能力に対してや、現在の地下都市に対しても、偏見を持たず、怖がりもしないようであった。
なぜなら、以前にも、変わった体験をしていたようであった。それは、去年の事のようで、マカオで不思議な女性を見たとの事だった。カジノで遊んでいた良さんは、負け越して頭を抱えていたらしい。だが、その女性がキレ出すと、そこら中の機械が飛び回り、ポルターガイストでも起きたようだった。そのおかげで良さんのスロットが回り、大儲けしたそうだ。
そして、悩みだった借金や出来なかった彼女も手に入れ、順風満帆のようである。そこから、不思議な事に巡り合うと、またも何かを期待してしまうようであった。
風呂から上がり、用意してくれた服を着ると、浴衣であり着るのも問題がなかった。むしろ、一応、日本の地下都市のため言葉もほとんど変わらないのであった。少し、方言?訛りみたいなものをあるのだが、コミュニケーションは取れそうで安心し、ここの人達も比較的に、穏やかな性格の様だ。最初は、俺らの事を警戒していたが、敵意がない事が分かると、客人として、もてなしてくれていた。
そうして、身支度を整え、地下都市の王と謁見の時が来たのであった。




