リン再来
クズ達が家に着くころには、すでに夕方となっていた。
そして、メイドの二人が出向かえ、すでに準備してあるBBQスペースへと案内してくれるのであった。その様子に火輪は驚いていた。
『先輩。いつから、こんな優雅な生活してるのよ。私が大変な時に!!』
『いやいや、俺らもまだ、そんなに生活はしてないんだよ。昨日まで、台湾にいたからな。』
『海外旅行だと....。先輩は変わっちゃたね。あの貧乏そうな部屋で質素な暮らしをしていたのに...。』
『確かに、質素だったが決して貧乏でないぞ。失礼すぎるぞ。』
そう、火輪とやり取りをしていると、ヤバタが話を割って来るのであった。
『火輪様、どうぞこちらへ、私が火輪様のために用意した御魚達です。どうぞ、ご賞味を。』
『へぇー、凄い釣ったんだね。この魚なんて、見た事ないし美味しそうだね。』
『それでは、こちらから焼きましょう。』
『ヤバタ氏。私だよ。友達だろ。』
その声に、クズはどんな魚か覗き見るのであった。
『あっ。クズ。助けてよ。焼かれちゃうよ。』
『リン。お前こんな所で何をしているんだ?』
『とりあえず、ヤバタを止めて。私に触れて。いいから。』
リンが急かすので、ヤバタから取り上げると、リンは人型へ変わっていくのであった。
『ふーー。あっぶね。今日のヤバタは狂気を感じるな。いやー、助かったよ。』
『クズさん。またにゃの?知らにゃいうちに、また連れてきて。』
『いや、真冬違うんだ。台湾の時に出会った魚だよ。それに、連れてきたのはヤバタだ。
それより、なんで、こんな所にいるんだ?』
『うーん、少し話が長くなるから、いつも通り飲みながら話しましょう。』
俺らと飲み別れした後に、竜宮城へ戻る途中で魚の状態に戻ってしまったとの事だった。それで、乙姫様に何かあったかと、急いで戻ってみたが、特に何も起きていなかったようだ。
乙姫様の霊力は、回復し他の者達も魚の姿でないので、リンだけにその症状が起きていた。乙姫様も、直々に霊力を付加しても変わらないので、こうなった経緯を話すのであった。
すると、乙姫様が原因に気づいたみたいで、教えてくれたのであった。
問題は、乙姫様の従属の力が切れているとの事だった。すでに、別の誰かと契約をしてしまっていたためであった。
今までは、海の民として当たり前のように乙姫様の眷属であった。けれど、今回、他の誰かと本契約を交わしたために、従属の力が上書きされたらしい。
そして、契約したのがクズとの事だった。
実は、台湾で、飲みまくっていた時に、リンがグラスを間違えてクズの酒を飲んでしまった事があった。皆、そんな小さな事は、気にしなかったので、その時はそれで終わっていたのだった。
ただ、それが従属の能力により、気が付かないうちに、盃を交わしたと認められてしまった。いや、誤作動が起きてしまったようなのだ。
『それなら、乙姫様と盃を交わして、また戻してもらえばいいじゃないか。』
クズは、冷静に答えるが、無駄であった。
『それが、問題なの。身分が違う人が盃を交わすなんて、それこそ問題なの。まぁー、それで。掟により、私は竜宮城を去らないといけなくなってしまったのだよ。竜宮城は、家臣しか住めないから。
だから、クズの寿命が尽きるまで、私の世話をお願いしに来たんだよ。』
『お前は、それでいいのか?』
『まー、人より長生きだから、あと何十年くらい、別に気にしないかな。何より、美味しい酒もあるし。』
『俺やヤバタは、構わないが、薫子さんと真冬がな。』
『あらあら、いいじゃない。家族は多いと、楽しいものよ。』
『私も、かまわにゃいの。帰る所がにゃいんだし。』
『ありがとう。私は、海の民 リンです。これから、宜しくお願いします。』
皆が、賛成したので新たにリンも家の住人になるのであった。
そして、乗り遅れた火輪も自己紹介をしBBQを開催するのであった。
『はいはい。それじゃ、新しい住人リンちゃんに、乾杯。』
薫子さんが、仕切り直してくれて、もう一度乾杯し、楽しい宴は夜遅くまで続くのであった。