③冬峰 真琴
(あーーー恥ずっ!!結局、一緒に飲み込まれてしまった。何も意味がなかった。助けられなかった。)
(クズさん、そんな事ないですよ。私は、うれしかったです。もう死んでいるのに、助けようとしてくれて。前は、誰も助けてくれなかった・・・・。でも、私のせいで....。ごめんなさい。)
(飛び込んだのは、俺が勝手にやったことだし真琴ちゃんのせいじゃないよ。咄嗟に動いたのは、俺の決断なのだから)
クズは、カッコいいこと言っているようだが、とても恥ずかしかった。せめて、助けていればと、それなりに美談だったのに...。
(ありがとう。本当に優しいですね。この体になると、なんとなく分かるんです。その人が良い人なのか悪い人なのか。クズさんは、暖かい雰囲気があります。ちょっと、臆病な所があるようですが、それでも、カッコ良かったです。)
(ははっ。ありがとう。)
しかし、今はどんな状態なのだろうか?身体の感覚はないが意識があるし、夢でも見ているような感じだ。
んーまさにSFだねーーと思いつつ、よくあるTVとか映画だと、全部支配されてしまうのでないかとか、、あれこれ考えていると、ガンガンっと音が聞こえて、目覚めるのであった。
『ん!?うるさいなー。』と起き上がると、目の前には化け物がおり、殴り掛かってきていた。
ガンと、大きな音がしたが化け物の拳は跳ね返されていた。
クズの左手首が淡く光り、丸い円を描いて真琴と俺を守っていた。
(茉莉花さまーーーーーーーーー。グッジョブーーー。)
『クズさん、起きましたか?勝手に、夢の中で語りかけて、ごめんなさい。』
『そうだったんだ。一応、まだ助かってはいないが救えていたんだな。良かったよ。』
『クソクソクソ、まだ邪魔するのか。』
そう、進は叫んでは、殴りを繰り返していた。
『進くん、もう止めて。なんで、こんな事をしたの??』
真琴の問いに、殴りながら進は答えるのであった。
どうやら、レヴィアタンから切り離されたことで意識は、戻っていたようだ。
『僕は、ずっと好きだったんだ。でも、告白する勇気もないし人気者の真琴ちゃんが僕と釣り合うはずもない。ただ、遠くで見つめるだけで幸せだった。
そう思っていた。でも、ある日、先生が現れて教えてくれたんだ。力も与えてくれた。
先生の言う通りにすれば、全てうまくいった。真琴ちゃんに近寄るやつは、すべて排除した。君は、いつも告白されては困った顔をしていた。そんな顔は、うんざりだ。ただ、笑顔であれば......
あれ?いつからだ...。君は僕の物でないと気が収まらなくなったのは...。思い出せない..
あれ、いつからだ。君が、僕を恐れ始めたのは...。』
進は、殴るのをやめ、困惑し始め頭を抱えブツブツ独り言を言い始めた。
『敵は、皆排除した。皆が僕を恐れて...。学校の...同級生も..家族も...。』
『進くんは、急に変わったんだよ。あんなに優しかったのに....。皆に暴力をふるって....でも、私には、優しかったよ。いつも助けてくれたじゃない。ストーカーで困っている時も、追い払ってくれた。
でも.....、あなたは、私が他の人と話していると、すごい形相だった...。それが、怖かった....。』
『やめろ、やめろぉーーーーーーー。』
そう叫ぶと、同時に炎に包まれた。そして、破邪の紐は千切れてしまった。
『それ!!もういっちょ!』
『おい。やめてくれ。火輪、もういい。』
『えっ!?嘘??』
火輪は、作り出した大きな火球を、すでに投げており、呆然としていた。
明松 火輪 (18) かがり ひのわ
職業:心理学部の大学生・霊能者
能力:火葬
悩み:敵の殲滅
解決策:対象の退治または拘束
心情:あれれー、生きてたの?飲み込まれて死んだと思ってた。むしろ、私がトドメさした??
『せんぱーい、大丈夫ーー?』
火輪は、恐る恐る声をかけてきた。
『二人とも平気だ。』
(しかし、なんで平気だったんだ?破邪の紐は、すでに千切れているのに...)
答えは、目の前にあった。焼け焦げた進が立ち尽くしていた。彼は、身を挺にして俺ら二人を守っていたのだ。その身は、ボロボロと朽ちている。人間としての進は死んだのだった。
『真琴ちゃん、ごめんね。すべて思い出したよ。全て僕のせいだ。あのストーカーも、君を手にかけたのも全部、僕なんだ。誤って許されるわけじゃないけど...。』
幽霊となった進が泣きながら話していた。
そして、今までの事を語りだした。
『僕は何も取り得も自信もなかった。そんな時に、先生が僕に力をくれたんだ。このダブルという力の使い方も、どうやれば真琴ちゃんと付き合えるかも。先生が教えてくれた。
全部、自作自演なんだ。ダブルで、もう一人の自分を作り出し、それで真琴ちゃんを付きまわした。そこに、もう一人の自分を真琴ちゃんを守るために現れるようにしたんだ......。
あの時の真琴ちゃんの顔は、覚えている。とても安心した笑顔をしてくれたことを....でも、もう一人の自分は、嫌悪の顔しか向けられなかった。自分自身への嫉妬が増えていくのが分かった。なんで僕じゃないんだ。もう一人の僕なんか排除してやる。それを、繰り返すたびに怖くなり、何回もダブルを解除したんだ。
でも、すでに解除しても本当の自分が、どちらか分からなくなっていた。でも、この能力を使わないと、真琴ちゃんが傍からいなくなる。それが、怖くて....。気付いたら、僕は真琴ちゃんを刺していた...。もう、どこにも行かない。そう、思ったんだ。』
『もう、いいよ。進くん。あの黒い靄の人のせいでもあるんでしょ!?もういいから。』
『そのとおーーり。君は、嵌められたんだよ。でも、君は罪を犯した。罰せられなければいけないのだよーーー♪』
空気を読まず、茉莉花が現れていたのだった。