浦島 太郎という男
俺とヤバタは、目を冷ますと海の中を移動しているのであった。
リンの能力により、呼吸や水圧は、まったく心配いらなかったのだ。水中の光景に、酔いも覚めていた。
酒盛りの後、ノリで移動して来てしまったが、もう後戻りは出来ないほど移動してきたらしい。
その事には、途中寝てしまったので気が付かなかった。どうやら、海流に乗って移動したためか、想像より早く付いたようだ。そうして、竜宮城が見えてきたのであった。
『おぉーあれが、竜宮城か。豪華絢爛なんだろ。』
『確か、そんな話だったよな。』
そう、少しウキウキしながら辿り着くと、想像を遥かに超えていた。
竜宮城は、どんよりとした重い空気が流れ、豪華絢爛とは真逆であった。
『夢を砕いて、ごめん。乙姫様の力が衰えているからなの。私達も、本当の姿に戻れる状態でなくて...。』
『クズ。俺...もう帰りたい。俺は、楽園を期待してたんだ。ついでに、稼げたらいいなって。』
『俺もそうだけど、ここまで来ちゃったし。とりあえず、話だけ聞いてやろうぜ。』
そうして、乙姫様の居場所まで案内されたのであった。
『失礼します。乙姫様。霊力のあるお方二人を連れてきました。』
『おぉ、大儀であった。ご客人よ。このような姿で申し訳ない。以前と比べ、霊力が落ちてしまい、人の姿さえ保つことが出来なくなってしまった。今や、この竜宮城さえ、この有り様なのだ。』
乙姫様事、ピンクの魚はパクパクと、語るのであった。
『それで、何を頼みたいんですか?一応、とりあえず話だけでもという事で、ここに来たのですが。』
『そうそう、無理なら他の人を紹介しますから。』
俺とヤバタは、いつでも断れるように、前置きをするのであった。
『それでは、少し長くなるが聞いてくだされ。
まず、私達や竜宮城が、このようになってしまったのは、私の力が弱まっているのが問題なのだ。
私達は、元々、綺麗な海でしか生きられないため、私の持つ浄化の力で暮らしを守っておった。
しかし、ここ数百年の間に、急激に海が汚れ、私の力では、もう抑えきれなくなってしまった。
もう一度、海を綺麗にするには、封印を解かないといけなくなってしまった。
その封印されているのが、海龍 リヴァイアサンなのだ。リヴァイアサンは、私達だけでなく、陸にあるものを特に好んでおり、それを糧にするのだ。以前は、私達だけでなく、舟や人を狙う荒くれ者だったため、当時の人間に頼み、封印をしてもらったのだ。
それが、数百年前、浦島 太郎という霊能者だった。
彼は、自分の寿命と引き換えに、リヴァイアサンを封印をしてくれたのだ。そのため、一気に加齢が進んでしまったが...。
だが、そのおかげで、海にも人にも平和が訪れたのだ。
しかし、今の海には、大陸のゴミや沈没船などが多く沈んでおり、奴を復活させないと、この海がもたない事が明白なのだ。奴は、害にもなるが、ここまで汚れてしまうと、奴の力で海を浄化してもらう必要があるのだ。奴でも、相当時間がかかるであろう。
そして、頼みたいことは、その封印を解いてきて欲しいのだ。
残念ながら、海の者では、封印が解けないようにしてあるのだ。これは、むやみに、封印を解くものが現れるのを恐れたためなのだ。
浦島様の封印は、人でなければ解けず故に、お願いしたい。』
俺とヤバタは、その話を聞き、完全にやっちまったっと思うのであった。
それと、同時に浦島 太郎の伝わっている話と違うので、驚きを隠せなかった。
しかし、このままだと、断りずらいので話を切り出すのであった。
『話は分かりました。しかし、私達は、その浦島さんほどの霊能者ではなく、リヴァイアサンの封印を解いたら、自分達が危険なのではないでしょうか?』
『そうですよ。人間が海を汚して申し訳ないが、俺達は、自己犠牲の精神はありませんよ。』
『それなら、大丈夫であろう。リヴァイアサンが幾ら荒ぶる龍であっても、約束は守るのが龍なのだ。封印を解く前に、確約を結びなさい。』
『そんなに、都合よくいきますかね...。』
『必ず上手くいきます。奴も、永遠に封印される事に比べれば、そんな事はたいした事ではないですから。龍や私達の寿命は、人と比べれば永遠のように長い。それが、自由に泳ぐことも出来ず、永遠にジッとしている事は、死んでいるも同然ですから。それと、タダとは言いません。リンが申した通り、それなりの御礼は用意してあります。』
『どうする?クズ。安全で、褒美があるなら行ってみるか?それに、海も綺麗になるみたいだぞ。』
『確かにな。それに、人のせいでもあるからな。安全みたいだし、浦島さんみたいに、爺さんにならないもんな。』
そうして、乙姫様の依頼を、俺たちは受けるのであった。




