おのおのの修行(ヤバタ編)
俺は、なんだかんだと、この理想郷で順応していた。そして、教祖直々に指導をしてもらえるようになっていた。
朝が早いが、これも修行だと考えると、苦ではなかった。これが、火輪様のためになると思えば。
『ヤバター、起きろぉーー。』
そして、バッシャっと、水をかけられるのであった。どうやら、道場で倒れていたらしい。
『すみません。教祖様。』
『よいよい。ヤバタよ。霊力のコントロールが甘いぞ。折角、面白い能力があるのだから使いこなさなければ、勿体ないぞ。』
『はい。もう一度、お願いします。』
ヤバタの修行は、戦闘に近い形で行われていた。
8方向から時間差で、火球を打ってもらい、それを1個ずつ打ち消す修行だ。
ヤバタは、大きく霊力を拡げて、ジャミングするような広範囲が得意だったため、こういった細かい事が苦手であったのだ。これは、無駄な霊力を削減するだけでなく、火球に合わせて強弱をつける修行であった。
だが、それも持ち前の柔軟さで切り抜けていた。
しかし、1度出来るとなると、休まず次の段階へ修行が進むのであった。
次の段階になると、さらに威力があがり、スピードも上がるのであった。
これにより、攻撃の相殺だけでなく、回避しつつ動かなければいけないので、体力・霊力・精神力ともに消費されるのであった。
そして、そうなってくると、集中力も保っていられないのであった。
何回目の気絶か、分からなかったが、ヤバタの感覚は、この修行の間に鋭くなっていた。
修行3日目になると、気絶する事なく、難なくこなせるようになっていた。
『ヤバタ。良くやった。そしたら、最終試験だ。儂の攻撃を防いでみせるのだ。この1撃を防いでみせろ。しかし、加減が出来んから、避けたければ避けていい。』
そうして、教祖は拳に霊力を集め高めるのであった。
ヤバタは、その霊力の凄さに圧倒されていた。
(凄まじい...。あんなの、どうやって防ぐんだよ。避けるしかないだろ。)
そう思っていると、拳に集まっていた霊力が分散するのであった。
『おし。合格だ。』
『へっ!?』
『なんだ。気が付いていないのか。ヤバタ。無意識に、自分でジャミングしたのだぞ。』
『そうなんですか?でも、それで良いのですか?』
『良いも悪いも、実戦で霊力を溜めるのを待ってる筋合いはない。儂は、あくまで防いで見せろと言ったのだ。手段は関係ない。
それに、無意識で、こなせるようになれば始動も早く、隙も出来にくい。
人間、死ななければやり直せるからな。無理な場合は、逃げて。次回、こなせれば良い。』
そう言われ、何となくスッキリはしないが納得するのであった。
『教祖様、ありがとうございます。この修行の間で、思い付いた事があるんですけど...。試してもいいですか?』
『ほほぉー。いいだろう。こい。』
ヤバタは、身体の表面全体に、ジャミングを張るのであった。
(よし。信様みたいに誰かには無理だが、自分だけには出来るようになったな。これで...こうすれば..。)
そして、教祖のお腹に、トンっと静かに、ヤバタの拳が当たるのであった。
その瞬間、教祖は崩れ落ち、片膝を地面につけるのであった。
『グハッ...。ヤバタよ。油断をしたが、儂に膝を付かしたのは、火輪以来だ。
さきほどの技は、よほどの事がない限りしてはならぬ。儂みたいに耐えられる者ばかりでない。
また、放出した後、お主自身が無防備になるから諸刃の剣だと思え。』
『はっはい。気を付けます。』
(えぇーーー。意外と、効果あんのかい。確かに、外したら、逆にヤバいな。今は、受けてくれたから良かったものの。)
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また、初めて書いたものなので、小説家になろうの使い方が分かっていません。
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