突撃。コマリ家へ。
一方その頃
大学で、待機している俺は、最近のコマリについて、ガーヤとニキに話を聞いていた。
2人とも詳しい事を知らないようだった。もちろん、こちらも全てを話せる訳でないので、当たり障りの事しか聞き出せなかった。
しかし、ガーヤは、住まいを知っているらしく、住所を教えてくれたのだった。
また、ガーヤの話では、彼氏はいないとの事だった。むしろ、クズは、だから鈍いんだよ。っと少し呆れられたのであった。
(なら、どうして、コマリは酒井と一緒にいたのであろうか。ただ、知り合って、たまたま飲みに来たのなら、まだいいのだが...。)
ニキには、序でに昨日の事について誤っておいたが、問題ないようだった。
彼は、火輪と楽しく過ごせたので、満足しているようだ。また、きちんと、馬券も当てているのが凄い所である。
これから、コマリの住まいへ向おうと思う時に、後ろから声がするのであった。その声は、火輪であった。
『せんぱーい。大変。大変。早く来て。』
『おぉ!そうだ。火輪、昨日はニキと二人を置いてけぼりにして、ほんと御免な。』
『そんな事、どうでもいいよ。大変なんだよ。』
『さっきから、何を騒いでんだよ。』
『先輩の家が燃えてるの!!』
その言葉に、俺は頭が真っ白になったのであった。
冷静になり、火輪から話を聞くと、昨日の競馬の後に一度、俺の家に来たらしい。その時は、誰も居なかったから、一度、帰宅したらしい。
そして、先ほど出直そうと、また転鏡を使用した所、うちへの鏡が無くなっていたので、確認しに行ってくれたようだった。
そして、俺は、現在燃えている自分のアパートを見つめていた。まだ、住んで1年ちょいだが、初めての1人暮らしで、それなりに思い入れがあるのに...。
火事が消化され、話を聞くと、おそらく放火らしい。
俺は、ただの放火にしては、タイミングが良すぎると思った。昨日、変な組織に出くわした次の日に、こんな事があってたまるかと思うのであった。
しかし、これから、どうしようかと考えたが、俺は重大な事を忘れていた。俺の家でさえ、こんな事になっているのに、コマリは平気なのかと....。
俺は、頭から血の気が減っていくのを感じるのであった。
不幸中の幸いであるが、火輪が傍にいた事だった。火輪にお願いし、転鏡でコマリの住所の近くへ飛んでもらった。コマリの住所には着いたが、火事は起きていなかったのには安堵した。しかし、それは早々に打ち壊されるのであった。
マンションの扉の前に着き、チャイムを鳴らすが応答がなかった。そのため、ドアに手をかけると、鍵は開いていたのだ。中を確認すると、そこには、コマリの姿はなく、部屋は荒らされた状態であった。
『くそっ。あの時に追いかけていれば...。』
『先輩、落ち着いてよ。コマリ先輩に何があったの?いいから、落ち着いて。』
『あの時....。俺は、いつも....。肝心な時に....。』
『落ち着けぇーーー。』 バチンッ!!
火輪は、俺の頬を力いっぱい殴るのであった。
『あっ!やば!やりすぎた。』
『っつーーー。ありがとう。冷静になれたよ。ただ、出来ればグーパンでなく、今度からは優しく頼む。せめて、平手で。』
落ち着きを取り戻した後、昨日の出来事について、火輪に話すのであった。
『そっか。あの時に、そんな事が起きてたんだね。言ってくれれば良かったのに。まー、先輩の事だから楽しんでる所に、水を差したくなかったんでしょ。』
火輪は、短い付き合いだが、本心を見抜いていたので、俺は少し照れてしまった。
『とりあえず、コマリさんが何か手掛かりを残してないか、探してみよう。おそらく、コマリさんが居なくなった事と先輩の家が燃やされたのは、その組織が関与しているだろうし。』
『そうだな。』
そうして、コマリの部屋を捜索するのであった。
コマリは、見た目は可愛い系で、明るい性格をしていた。
そのため、コマリの部屋は、イメージと少し違い、落ち着いた雰囲気だった。今は、荒らされた状態であるが...。
俺は、捜索してると、目に留まるものを見つけたのであった。折角なので、散らばっているのを集め、並べるのであった。
(ふむふむ。なかなか壮観だな。しっかし、イメージと違うな。黒に、紫、レースもあんのか。げげ、これはTじゃん。あいつ、意外と凄いの持ってんなー。)
そう思ってた矢先、後ろから殺気を感じた。
『先輩、真面目にやってます??』
火輪が、冷徹に見下していた。
『はい。すみません。すこし、冷静に吟味し過ぎてました。』
俺は、しっかりと謝り、捜索を再開した。しかし、特に変わった物も出てこなかった。
『火輪さ、女の子が何か隠すとしたら、どこに隠すかな。』
『んー、物によるかなー無難に、クローゼットとかかな。私の場合は、意外と冷蔵庫に入れるかも。普通、人ん家の冷蔵庫は勝手に開けないでしょ。』
『冷蔵庫かー、そういえば、そこは、まだ見てなかったな。』
そして、冷蔵庫を開いてみたが、そこには、特に変わったことはなかった。
ただ、気になる点といえば、やたらと酒の量が多かったことだ。
俺は、前にもこんな事があったなーと思い出すのであった。
あれは、ニキの家で宅呑みをした時だった。買い出しのヤバタとコマリが、異常な量の酒を買ってきて、冷蔵庫がパンパンになっていたのだった。
あの時は、コマリの誕生日サプライズだったっけなー....。
そうだ、あの時、皆のメッセージを入れて、再生してくれるヌイグルミをあげたはずだ。
あのヌイグルミに....レコーダーあるはずだ!!
その事を思い出し、辺りを見回すと、ヌイグルミが床に横たわっていた。
俺は、恐る恐る再生してみる事にしたのだった。
『んっん、もう録れてるかな?えーと、まず、皆、迷惑をかけて、ごめんなさい。
実は、前からヤバタの事が好きで、急に居なくなった事が寂しかったんだ。何か、改まって言葉に出すと、少し恥ずかしいね。えへへ....。
それで、留学の場所も分からなかったし、連絡が出来なかったし。ちゃんと、思いを伝えたくて。
それで、ある時、酒井 悠平 さんって人に、声をかけられたの。その人が、ヤバタの写真を見せて、彼がいる場所を知っていると言ってきたの。
それで、どうしても場所を知りたくて、彼の話を聞こうと思ったんだけど。でも、少し怖かったから、クズの働いてるお店に行ったんだ。
最初は、普通に話してて会話も弾んでたんだけど、途中から記憶が無くなって。
呑みすぎはあったけど、普段なら酔わなかった...。本題に入る前に、寝てしまったみたいなの....。
目が覚めると、どこかの事務所みたいな所だった。特に、乱暴もされなかったの。
そこで、こう言われたの。
宝塚記念に競馬場へ行き、封筒を受け取って。そこに、書いてある通りの行動をしろ。って...。
それをするだけで、後日、会わしてやるって。
でも、その行動をした結果、現れたのがクズだった。私は、訳が分からなくなって....。
怖くて逃げてしまった。
たぶん、彼の狙いは...クズだったのかも...。
巻き込んで、ごめんなさい。』
そこで、レコーダーは止まっていたのであった。