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ヨシュアはティファに騙されない☆

あの女がこの宿舎に来てから本当にろくな事がない。

俺はヨシュア。この国の騎士だ。

そもそも何で敵国の騎士なんて匿う必要があるんだ?だって敵だぜ?仲間だって何人も殺されてる。それなのに、たまたま助けたのが王様の親友だってだけで、どうしてアイツだけ助けなきゃならないんだよ?!


「ヨシュア。お前の気持ちは分からんでもない。だが、これは国の問題であって、俺達個人が敵なわけじゃねぇんだよ。ティファだってそうだ。国の王が行けと言えば逆らえない。そういうものだ」


ギャドはそんな事言ってるけどアイツは絶対、何か目的があってここに来てるんだ。隙を見て俺達を殺そうとしてるかも知れない。俺だけは騙されたりしない!!


「ハイトさん。ご飯出来ましたよ?今日は特製ロールキャベツです」


・・・・絶対、に。騙されるもんか。

食べ物で釣って油断させるつもりなんだろ?


「へぇ?これも美味しそうだね。中はお肉が入ってるの?」


「はい。肉をミンチ状になるように叩いて香辛料とか野菜を刻んで肉に混ぜた物がキャベツの中に入ってます。それをバターで一度火を通してからトマトベースのスープで煮込むんですよ?」


ゴクリ。

何でそんな美味そうなもん作ってんだよあの女ぁぁ!!

さっきからいい匂いがここまで届いて来てるんだよ、こんちきしょう!!


「洗い物、僕も後で手伝うから先に食べたら?」


「いいえ、居候の身です。ハイトさんには最近食材の買い出しも手伝って貰ってますし、それで充分助かってますよ?先に食べて下さい」


ハイトの奴すっかりあの女の策略にハマっちまってる。

まぁハイトは純粋な奴だからさ、きっと女のアイツを可哀想に思って優しくしてるうちに絆されちまったんだ。


「んーー!美味しい。ぜっっぴん!!今まで食べたロールキャベツの中でこれが一番美味しいよ!」


ほら。すっかりあの女の料理に夢中だ。

そうやって騙されて行くんだ。


俺は騙されない。どんなにいい匂いが漂って来てるとしても絶対に・・・・あれを食べてみたいなんて・・・・。


「外側のキャベツに煮込んだスープが絡まって中のジューシーなお肉と一緒に食べるともう最高。僕。毎食でもコレ食べる」


え?そんなに?


あ、いや。いま唾を飲み込んだのは食べてみたくなったとかじゃないから!だだの条件反射だから!!


ギュルルルルルル!


ん?今の音は一体。


「あれ?どなたか、まだ残ってますか?」


ハッ!!しまった!まさか俺か!俺の腹の音なのか?


「貴方は、確かヨ、ヨ、ヨークシャテリアさん?」


「ヨシュアだ!!間違えるにしても何で長くなるんだよ!!」


しまった!思わず名前を教えてしまった!


「もしかして心配で見張っていたんですか?お昼時なのにご飯も食べず?」


「う!そうだよ!!ハイトは騙せても俺は騙されないからな!!」


バレたならしょうがない。堂々と見張ってやる!!

俺は食堂の隅に座って二人を監視してやる。


「じゃあ私も食べましょう。あ、ハイトさん。パンにチーズのせます?」


「喜んで!!」


え?なんなんだその掛け声。馬鹿なの?ハイトは馬鹿になっちゃったの?ってか何そのトロトロのチーズ!!どうやってそんな状態に?


「・・・あの、ヨークシャさん?」


「ヨシュアだ!!」


「そこで見られてると落ち着かないのでこちらに来たらどうです?」


お、おま!!腹ペコの俺によくそんな事言えたもんだな!!食テロの恐ろしさをお前は知らないのか!!一歩間違えば地獄なんだぞ!!!


美味そうな物が目の前にあるのに食べられない苦しさをあえて味わえと!!やはりお前は俺の敵だ!!


ギュルルルルルリル


「「「・・・・・・・・・・・」」」


お願いだから。今だけは俺の言うことを聞いてほしい。俺の腸内細胞よ。この試練が終わったら絶対なんか美味いもん食いに行ってやる!!


その時、俺の前にコトリと一枚の皿が置かれたんだ。


「沢山作ったのでどうぞ。お口に合わなければ残しても構いません」


え?何コレ。なんの罠?俺おかしくなったのかな?目の前にすげぇ美味しそうな料理が出て来たんだけど?

イヤイヤ駄目だろ。コレ敵の罠だから。え?でもあの二人も美味そうに食ってるけど?少しくらいなら、イヤイヤイヤ?でも、ハイトも同じの食べてるし、万が一なんかあったら大変だもんな?俺も毒味しないと。うん。これは毒味だから。決して食べてみたいとか、そういうんじゃないから?勘違いすんなよ?


おっかしいなぁ何でこんな手が震えるんだろ。

ハハハハ。大丈夫大丈夫!こんなの食べたってどうって事ないって!ハハハハ。


「ーーーーーーーーーっ!!!!!」


「アイツ。頭大丈夫かな?」


「え?何か言いました?あ!そうだ」


何だろ。取り敢えず俺さっきまで何考えてたか忘れたわ。うん。取り敢えずご飯を食べよう。これは温かいうちに食べないと絶対駄目なやつだ。


コツリコツリと誰かの足音が聞こえて来る。

あ、ごめん俺、今幸せを噛み締めてるとこだから邪魔されたくないんだけど?


「ヨークシャさん。パンにチーズのせます?」


「喜んで!!」


挿絵(By みてみん)


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