ヨシュアはハイトに関わりたくない
やばい。これはやばい。
「ほら食えよ。ティファが僕に作ってくれたパウンドケーキを恵んでやってるんだ。一欠片も残すなよ?その時点でその役に立たない顔面かち割るぞ?」
「ムグ!!ムググゥムグゥーーー!?」
「あ?なんだって?美味いだろ?美味いよな?オラ!ちゃんと口に出して美味いですティファ様って言ってみろよ」
ハ、ハイト?ハイトさん?貴方ハイトさんで間違い無いよな?み、皆、変わりないか?俺は今、色々と大変な事に巻き込まれている。取り敢えず数分前に話を戻そうぜ。
「ベロニカ!」
「ヨシュア?なんでここが?」
「あら?こんな所までよく辿り着いたわね?でももう遅いわよ?ティファは返して貰ったから」
クッソ!こいつらやっぱりこの為にうちの国に戦争仕掛けてきやがったな。でもまだこの先にティファの匂いが残ってる。コイツらの先に居るはずだ。
「あーーーやっとあの馬鹿女から解放されるぜ!おい!このチビは俺が殺る。そっちはお前が片付けろ」
「ちょっと?偉そうに命令しないでくれる?私に指図していいのはナシェス様だけよ?」
コイツら余裕だな。
ベロニカも警戒してるし、それだけの手練れってことか。
参ったな。俺一人でどうにか出来るか?
ゴオオオオオオオオオオ。
いざとなれば変幻して・・・・ん?
「え?」
「は?」
「あん?」
えっとぉ?あれなんだ?なんか物凄い勢いで空からこっちに突っ込んで来るんだけど?お?お?おおお!?
「ヨシュアーーー!お座り!」
「キャン!!」
ドグシャーーーー!!!
・・・・・・おい。咄嗟にしゃがんじまったけど誰だ今、俺にお座りとか言った奴。どこ行った?ん?刺客の二人はどこだ・・・・あ。
「い、いったぁーー!何?一体な・・ぐふ!!」
「な!テメェ・・グエ!!」
「ハ、ハイト?お前どうして・・・」
え?何?まさかお前空飛んできたの?どうやって?って言うかお前どうやって着地した?普通の人間なら死ぬと思いますが?
「ああ。お前だよね?ティファの頭を思い切り殴って怪我させたのは」
あの・・・・ハイト?無視?俺の事無視なの?もしかしてティファの側に居なかった事、怒ってる?俺に怒ってる?
「テメェ・・・変テコな技使いやがって!一体どうやって・・・ゲブーーーー!!」
ひぃぃぃぃ!?お、おい、刺客の人。今は取り敢えず黙ってハイトの話を聞こう?続けられたらお前顔が外れちゃうぞ?
「選ばせてやろう。眼と指、どっちがいい?」
俺、凄く悪い予感がする。俺の中の警報がけたたましく鳴っている。良い子の皆は、とりあえず回れ右しようぜ!!
「ハ、ハイト。落ち着こう?そいつらデズロ様に引き渡す事になってるから・・・・」
「生きていれば問題ない。一個ぐらい目玉がなくても死にはしないだろ?」
「ひっ!!」
問題あるわーーーー!?お、おま!俺達は騎士団だろが!何?普通に「眼えぐっちゃっていいっすか?テヘ!」ぐらいのノリで言った?お前はいつの間に闇落ちしたんだ馬鹿野郎!
「ハイト。そんな奴等はほっといて。早くティファを助けに行って!あの人、馬鹿王子に捕まってるみたい。下手すると殺されるかもしれない!」
ナイス!ベロニカ!!
ハイト少し正気に戻ったみたいだ。よ、良かった。
取り敢えず黙って震えてるコイツら縛ってティファを助けに行こうぜ!
「私はこの二人を見張ってるわ。二人はティファを助けに行って」
大丈夫か?ベロニカも結構怪我してるのによ?
「大丈夫よ。逃がしたりしないわ。早く行って」
ハイトがここに来たって事は、他の奴等もここに向かってる筈だよな?じゃあさっさとティファを助けて手当してやればいいや。
ってハイト早!!一人で行くなよ!
もうここ敵国の領土だぞ!
「建物があるね?あの中か?」
「そうだな。向こうからティファの匂いがする」
ん?何だ?何で俺の顔ジッと見て?何か言いた気だな?
「・・・お前。なに当たり前のようにティファの匂い嗅いでるの?変態なの?」
人を変態呼ばわりすんじゃねぇボケェ!!緊急事態だからだよ!ハイト、お前はいつからそんな馬鹿に成り下がったんだ!!しかもこの局面で真面目に何言ってんだ!
おい!無視して行くんじゃねぇーよ!
お?あれは・・・・。
「だから、素直に戻るのならお前が好きな料理を好きなだけ作らせてやろう。それなら文句はないだろ?お前は、料理が作れるのであれば、場所など何処だろうと構わないんだ。ずっと私の側にいて料理を作っていればいい」
皆さん・・・・・・。
皆さんはティファをストーカーしているこの王子、どんな人物だと思ってた?俺はさ、我儘で散々甘やかされ勘違いしたぶよぶよに太った気持ち悪い男を想像してた。皆もさ?そこまでじゃなくてもさ?きもーい男の姿を想像してたと思うんだよ?
「ティファ?どうした?何故黙っているんだ?」
輝かんばかりの見目麗しい麗人が俺の目に飛び込んで来ているんですがーーー!?え?何あの人?本当に人間なの?ティファあんな奴に求婚されてよく断ったな?俺が女だったら正直迷うと思うぞ?
「料理を作ることは大好きです」
「そうだろう?じゃあ・・・」
「でも、貴方は料理を作る私が嫌いでしょう?」
あれ?ティファもしかして、そいつの事少しは気になってた?あー成る程ねぇ。でもあんな美味いケーキ踏み潰す奴だもんなぁ?しかしなぁ・・・。
「やっぱ女は顔がいい男に弱いのか?わっかんね」
思わず呟いちまったよ。ティファも普通の女の子で安心したような、ガッカリしたような・・・ハイトもそう思わねぇ?ハイト?は・・・・。
「ギャドさんは敵の隊長さんなのにとても面倒見が良くて見た目通りムキムキで、でも、とっても頼りになります。ヨシュアさんは真面目で融通が効かないけど、素直な所があって結構チョロいです。フィクスさんは上手く隠してるつもりでしょうけど腹黒さが隠しきれてなくて本人はそれに気付いてない所が面白いですし、妹のアイラさんは女の子の遊びを知らない私に色々教えてくれます。それで、あの国の人達は一度だって私に料理を作るなとは言わなかった」
ティファの俺への認識に突っ込みたい気持ちはあるが俺、それどころじゃない。
今、横で見たこともない表情をしてるハイトが怖すぎて俺震えが止まらないんだけど?あ、行く?行きますか?そうですね?早く片付けてしまおう。じゃないと俺精神的に限界を迎えそう。恐怖で。
「ハーーーーイお邪魔しますよーーーーー!!!」
ドゴォォォォォォォォォオ!!!!!!
ひぇぇぇぇ!容赦ねぇ!どんなに顔が美しかろうがアイツには関係なかった!寧ろ潰しにいった!
「ティファ。僕は?」
「え?」
あーーー。ハイト・・・・・もしかして。
「何でさっきの話に僕は出て来ないの!僕の事はどう思ってるの?」
「ちょっと、ハイト・・・今はそれどころじゃ」
お前やっぱ俺の勘、正しかったじゃんよ!っつーかなら尚更俺にこの場をどう収めろと?余計な事口にしちまったし。
「ティファ?」
「・・・・・秘密です。盗み聞きした罰です」
ティファーーー!!!お願いだから答えてあげてぇぇぇ!
あ、ほら!笑いながら王子の所に向かっちゃったじゃん!
こっちに引きずって来ちゃったじゃーーん!!
え?王子駄目だって!ハイトに今逆らったらーーーー。
「お前の愛がどれ程のものか僕が試してやるよ。有り難く思えド変態のサイコパス野郎」
いや、本当。ドウシヨウコレ。




