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ハイトは一人覚悟を決める

ハイトは怖い人。

皆さんは、そう思いませんか?

最初は本当に渋々彼女を監視していたんです。


だってギャド、明らかに狼狽えて、どうしたら良いのか分からなくて押し付けた感じだったんですよ。


いや、僕だってそうですよ。


しかも相手が敵国の騎士で女の子って。扱いに困りますよね?いくら相手が強いっていったって、怪我させるわけにはいかないし、かといって放っておく訳にもいかないですからね?


でも観察してたらなんか気が抜けるというか、なんというか・・・・毒気を抜かれるというか・・。


それに、僕はずっと近くでティファを観察していたから、どんな風に料理を作るのか知っています。


あんなに手間暇かけて作る料理に毒を入れるなんて考えられないでしょ?


「ティファは、なんで料理を作るようになったの?」


一度だけ不思議に思って尋ねたら、笑いながら答えてくれた事がありました。僕はその時、何故ティファがこんなに料理に執着しているのか、何となくわかったんですよね。


「きっかけは、お母さんが褒めてくれた事ですかね?」


「褒められたの?それで料理を?」


「はい!私、何の取り柄も無かったので、お母さんに褒められた事がありませんでした!でも、その時初めて美味しいって褒めてくれたんですよ?」


その時はふーん、て流したんです。


まぁよくありがちな話ですよね?

子供って結構単純なきっかけで才能を開花させるって言いますし?余程母親に褒められたのが嬉しかったんでしょう。でも、一つだけ解せないのは何の取り柄もないというティファの言葉でした。


だって彼女最強騎士ですよ?それでこれだけ料理が上手なんです?寧ろ多才なのでは?


「うん。とても美味しい!」


「本当ですか?美味しいです?」


何でそんなに何度も聞くんでしょうね?


美味しいんですよ?僕は基本正直者なので嘘は言いません。必要な時は嘘つきますが。


それに、彼女の料理は彼女の魔力付与がかけられているのでとても助かります。本人は気付いていないみたいですがね?


面倒になるといけないので黙っていましたよ?

結局誰も気付いてませんでしたが。

鈍いにも程があります。アイツら仮にも騎士だろ、おい。


ギャドが僕がこっそりティファのご飯を食べている事に気付いてから、芋づる式に皆んなにバレて彼女結局、皆んなのご飯を作る事になってしまいました。


魔力付与は量が増える程、効果が薄れてしまいますから、僕は内心ガッカリしましたよ。でも、全然魔力の量が、減ってなかったんです。寧ろ、増えてました。え?何故?おかしくない?


「人数が増えましたから私も本気を出さねばなりません!今こそ私が温めてきたレシピ達を解放する時!!」


うん。ティファ別の物も解き放たれてるから。

いい加減気付こう?そんな事してると倒れちゃうよ?


でも、一向に力が衰えないんですよ?おかしいですよね?

彼女実はかなり魔力強いみたいです。これは、益々厄介です。この事が知れたら彼女は今よりもっと自由を奪われてしまうでしょうね。いや、僕には関係ない話なんですが、それでは彼女のご飯、食べられなくなってしまいますから。

やっぱり黙ってました。


分け前が少し減ってしまったのは不服でしたけど毎日ティファの料理が食べられる事に変わりないし、彼女が僕達に危害を加える事も無ければ問題ないじゃないですか?


後は彼女の監視という役目を降りれば僕は晴れて自由の身!楽できる筈だったんですよ?


それなのにギャドがティファに余計なことしやがりまして?ティファはどうやらそれを深読みしてしまったみたいです。


あと何でその後ギャドにだけ、特別カレー、作ってあげたんでしょうね?意味分かんないです。あんな脳筋、落ち込ませておけば良かったのに。


僕が折角ティファの監視から解放されて、彼女のこの国の住民権の手続きやら空き店舗の確保の準備やらを進めていたのに、全てお前らの所為で台無しだよ本当に・・・・。

彼女再び監視対象に逆戻りですよ。しょうがないから僕が手を挙げましたがね?


僕はティファが作る料理が食べられたら満足だったんです。


「そういえばハイトさんの好物って何ですか?」


あの時、君があのオムレツを作るまでは。


君。あの時すでに宿舎を出て行くって決めてたよね?

だから聞いてきたんだよね?僕に食べさせる為だよね?


何でそんな事するんですか?


「ふえええぇ。ハイトさんのアホーーー!食の変人の癖にぃ!名前負けぇ」


なんで、誰もいない所で僕の名前を泣きながら呼ぶんですか?ワザとなの?嫌がらせ?助けて欲しいなら直接僕に言ってくれないかな?分かりづらいよ。それとも僕に自分をずっと見張っていろと?図々しいよね?いや、分かってる。君は何も考えてない。それで僕がどんな気持ちになったかなんて知らないでしょう?


僕は自分の事をよく分かってるつもりです。


僕の目標は日々平穏に、面倒くさい事を避けて生きて行くことなんです。仕事も程々の所で留まって生きていけるだけの貯蓄をして、家同士が決めた相手と結婚して後継を残せば僕のプランは概ね計画通り。


僕は決して本気で欲しいと思うものを作っちゃ駄目なんです。


ギャドは脳筋怪力馬鹿だけどいい奴だし、フィクスもエセイケメンだけど信用出来る。仲間だし二人が本気ならまぁ応援してやろうと思ってましたよ?


馬鹿馬鹿しい。あーーー馬鹿らしい。

僕、何で今迄こんなに我慢してたと思いますか?


それもこれもぜんっっっぶ、ティファの夢を叶える為でした。ええ、そうです。彼女の為です認めます。内心嫌でしたね。彼女の愛情たっぷりのご飯を僕以外が口にするのが、正直不愉快でした!絶対に口には出しませんが。


「でも、貴方は料理を作る私が嫌いでしょう?」


ブチッ!


ティファ。それじゃあまるで君がその頭のイカれたサイコパスに想いを寄せていた、みたいに聞こえるけど?気のせいだよね?取り敢えず今一番気になっているのは、何で僕の名前が上がらなかったのかって事ですね。


あとさぁ?僕以外の男の前で泣かないでくれるかな?

僕、いい加減我慢の限界なんだよね?

そろそろ本気出していいかな?


僕はね。一度決めたらどんな手段を使っても達成しますよ?そこにいるサイコパスなんて比べ物になりませんから。覚悟は、いいですか?


それもこれも全部ティファ、君が悪いんだからね?

折角見ないふり知らないふりで君を手放してあげようと思ったのに。もう、諦めました色々と。


よって、めでたく彼女は僕と幸せになると決定しました。たった今。

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