皇帝陛下は休みが欲しい
宮廷は上に行けば行く程ブラック。
「休戦だと?」
「ええ。ティファをあちらの国へ帰す事にこちらが応じるのであれば、あちらからは決して戦争を仕掛けないと誓いを立てるそうです」
皆息災か?私はそうでもない。
隣の国が毎度の毎度飽きもせず問題を起こすからである。
「奴等は余程頭が緩いのだな?そもそも戦争を仕掛けてきているのはいつもあちら側で、我々には何の落ち度もないはずだが?別に私は休戦しなくても構わない」
何度も寛大な心で許してやろうとしたのに、凝りもせず我が国を奪おうと目論みおって。
そんな事考える暇があるなら自分達の国土をちゃんと管理して欲しいものである。あの国は今、大変な筈だ。
「・・・・・彼方の国から詳しい内容の文が、後こちらは、カスバール国の皇子からティファ宛だそうです」
本当に図々しい奴等だな?
要求すれば何でも自分の思い通りになるとでも思っているのか?阿呆どもが。
「何故。向こうの皇子が直々にティファに手紙を?」
「・・・・・それが、どうもティファに言い寄っていたらしいです」
「・・・・・何だと?だが、ティファは平民から兵士になり、騎士にまでなったと聞いているが?王子となど、釣り合わないだろう?」
何だか嫌な予感がするな?
この辺りで長期休暇でも取って妻と出掛けようか。
うむ。そうしよう!
「ええ。勿論周りは大反対で、ティファもハッキリと断ったみたいなのですが・・・ティファの能力を理由に無理矢理結婚しようとしたようです」
「・・・・魔力保持者、か?」
そうなのだ。
実は先日、デズロに言われササラに調査させた結果。
ティファは魔力を持っているという事が発覚したのだ。
人間で魔力を持つ者はそう多くない。
この世界でその力を持つ者はとても希少で皆手に入れたがる。勿論我が国もだ。
「調べを進めてわかった事は、ティファはどうも仲間に国を逃げ出す最中に裏切られ、崖から落とされたようです。実は先日ティファとこの国へ逃げてきた仲間を捕らえて、その事がわかったのですが・・・」
ああ。そういえばそんな報告があったな?
しかし、搬送途中に逃げられてしまったのだろう?
相手もそれなりの実力がある騎士だからな、そう簡単には捕まらんか・・・・・。しかし、困ったな。
「ティファが生きていると知られたという事は、内部に裏切り者が潜んでいるか、刺客がこの国に潜り込んでいるという事だ」
「ですね?どうなさいます?」
そうだな・・・・うーーーん。
「ギャドにその事を伝えろ。ギャドに任せる。私は暫くの間ここを留守にする。暫く休めなくなりそうだからな?」
「要求を全て退けるのですか?また大きな戦争になりますよ?」
北方面がいいなぁ。
あちらの領地にはとても美しい湖がある。簡単な仕事は息子達に任せて、妻とゆっくり散策でもしよう。
荒みきったこの身を、浄化しに・・・。
「宰相。ティファを保護した時点で、もう後戻りは出来なくなっていた。分からないのか?」
はぁーーー馬鹿馬鹿しい。私はもう知らん!皆好きにするがいいさ。
「デズロは全て知った上で、彼女を欲しがった。つまり、カスバールを潰せと言っていたんだ」
「ーーーーーーっんな!?」
さて。
後はギャドに、この馬鹿皇子の手紙を読ませればいいだろう。私だって鬼じゃないんだ。今まであちらの国民の事を考えて多少の手心を加えてやってたものを・・・・。
「ティファは渡さん。彼女はこの国の人間になるのだからな」
だがデズロ?私は先代程、お前に甘くはないぞ?
この借りはしっかりお前に請求するから、覚悟しろ?
「陛下。何さり気なく逃げようとしているのです?貴方に休みなどありませんよ?私も無いんですからね!!」
いや!休みを寄越せよ、いい加減!!
ここ一ヶ月休みがないぞ!ブラック通り越して最早暗黒ではないのか?
ストライキ起こすぞ!一人ストライキ!
私も叶うならニートになりたい!!
「何度も申し上げておりますが、デズロ様はニートではありませんよ!?ちゃんとお仕事されております!ただ、他の者とは比べものにならない能力をお持ちなので、チョチョイのチョイと仕事を終わらせてしまうだけで!」
「人の心を読むな!!分かっておる!それでも腹が立つものは腹が立つのだ!!」
私は休むと言ったら休むぞ!!
これ以上休まず振り回されたら本当に禿げてしまうわ!!




