ハイトはなんだか納得出来ない
最悪だ。
オーブンが出来るまでの数日間。僕がどれだけ我慢したか皆さんには想像出来ますでしょうか?出来ないでしょうね?
あの数日間、僕は彼女の食事への雑念を抑えるべく、ありとあらゆるお店にティファを連れて行き、そして逆に彼女に美味しい食べ方を説明されるという何とも有り難い時間を過ごしましたが、それは一時の幸せに過ぎませんでした。
食事を口に運ぶたびにティファのご飯を思い出して溜息が出る始末。食も細くなりその期間だけで5キロ痩せました。
そして、やっと改装修繕が終わった厨房でティファは見たこともないような料理をこれでもかという程、作ってくれたんです!!やっとその数日間の苦しみから解放され至福の時が帰って来たというのに・・・・こんな事になり。果たして彼女の料理のクオリティは保っていけるのでしょうか?僕は最近心配で夜もまともに眠れません。
ええ、どうせ僕はフィクスに言わせれば食の異常者、変質者ですよ!・・・・どう言われようと構わないんだ!!僕はあの素晴らしいティファの料理を思う存分堪能出来るのであれば満足さ!!!
「あ。いや、スマン。俺、色々と誤解してたわ。ガチでヤバイわお前」
キルト達に詰め寄られたので僕の熱い思いを伝えたら何故か逆に謝られました。
何なんだよ。そんな軽い気持ちでティファの料理を食べてるんじゃないんだよ。全力でぶつかって来いよ!(熱気)
「それで?結局、雇うんじゃなくて食費を渡す事にしたのか?でも、それじゃあティファに悪いだろ?」
ところでフィクス。君はどうして肝心な時いなかったんだろうね?いつも変に勘が働きますからね、この人。さては気付いて隠れてたな?いつの間にか食堂に居たしね。裏切り者め。
そんな事よりもそう、とうとう宿舎の皆んなにティファの料理の事がバレてしまい本格的に皆んなに料理を作ることが決定してしまったのです。
そしてそれは僕の想定していた通り、本来の食堂形式になるらしいです。つまり、あらかじめ決まった料理を大鍋でティファが用意して各自で配膳して行くというものです。
ティファが作る家庭料理感が良かったのに・・・・・まぁ仕方ないのですが・・・・・。くすん。
「そうだね。何か、ティファに還元出来る方法を考えないと。でもティファってお金が大好きなんだよね」
「・・・・・・あーやっぱり?」
「っていうかあの女。単に貯蓄が趣味なんじゃね?」
ここに来てティファが料理の食材以外を買っている所を見かけた事がありません。この前も服の事を尋ねたら微妙な空気になりましたしね。何故か背中がヒヤリとしました。
「自分でお金を使うのを嫌がるなら、こちらからプレゼントしたらどうかな?それなら普段渡している生活費を貯蓄出来るから喜ぶんじゃないかな?」
「ああ。良いんじゃないか?そろそろ服も買わないと。あったかくなって来たしね?」
そう言えば、彼女何か清潔さに拘りを持っていたっぽかったですね?お風呂に入ったとか、ちゃんと洗ってるとかいうワードがよく出てきます。
「でもさ、ティファの服のサイズどうやって調べるんだよ?そして誰が服を買いに行くんだ?」
「え?ティファと一緒に衣料店に行けばいいんじゃないの?」
ここまで言っておいて、僕やっと問題点に気が付きました。そもそも僕達この国の騎士で名が知れています。
そんな僕等が食材ならまだしも彼女の服などを一緒に買いに行ったならあっという間に変な噂が立ってしまうでしょう。それは、いただけない。
「フィクスはこういうの慣れてるよね?」
「ああ。そうだな?でも無理だ!」
え?何故?君、気が付けばいつも女性に取り囲まれてるよね?夜の灯りに群がる蛾のごとく。そしてそんな彼女達を難なくエスコートしてるよね?ケッ!リア充が!
「ティファ。俺の事、視界の端にすら入れてないから。いや、寧ろ俺、彼女の中では透明人間なんじゃないかな?目の前にいるのに見えてないって言う・・・・・」
「・・・フィクス。ちょっと君が何言ってるのか理解出来ないんだけど?」
「せめて人として認識してくれないかな!!切実に!」
あれかな?中々名前を覚えて貰えないから悩んでるんですかね?最近は騎士さんって呼ばれてたし。
ティファって人の名前覚えるの苦手みたいなんですよね。あれ?でも、ギャドと僕はなんで一度で覚えたんでしょうか?
「別に名前なんて覚えられなくたっていいよ。どうせ敵国の人間だし」
「・・・ヨシュア。それ、そのまんまティファに言っていい?」
「やだなぁ?ちょっと口が滑ったたけじゃん?本気にすんなよ?・・・・・絶対言うな?」
チッ。
さり気なく頭数減らそうとしたのがバレたかな?
目の奥がマジだから止めておこう。
コイツ馬鹿だから何しでかすかわからないですからね?
「もうハイトが一緒に行けばいいだろ?何か言われたら仕事だって言えよ。間違ってないんだし」
そうです。そうなんですけど。なんか、何でだか納得出来ないんですよ。
「っていうか。僕いつ迄ティファを見張ってなきゃならないのかな?」
「「あ。」」
君達。その問題に今気づいたでしょう?
他人事だと思って忘れてましたね?薄情者どもが!!