ベロニカは清々している
あっという間だったわ。
気に食わないのは私の短い人生のリスタートにティファがいた事だけね。
ティファのいない生活を謳歌したかったのに、結局最後まで一緒に居たわね?でも、もういいわよ。
「貴方がジョーイ?顔を合わせるのは初めてね?」
「ええ。一度ササラ様と宿舎の近くまでお供したことはありましたが、その時も外で待ってましたから。それで?私の話、受けて貰えるのでしょうか?」
こういう奴等ってなんで必ず主人公の近くにいる脇役みたいなのを見つけるのが上手いのかしら?前の国でもそうだったけど、私ってそんなに操りやすそうに見えるのかしらね?まぁティファが嫌いなのは確かですけど?
「・・・・私達、それで一度死にかけているのよ。そんな危険な物、開く手伝いなどしたくないわね?」
「そこをなんとか。それも魔術の進歩の為、そして魔族の謎を解き明かす為なのです」
嘘をつく人間って皆似たような表情をするのよね。
デズロもロクでもない部下を抱えているわね。
あと、サウジスカルにもやっぱりこういう人間いたのね?
「お断りよ。あと、その石全て。ここに置いていきなさい」
「フフッ君が私に勝てるとでも?」
そうねぇ。魔力は、あんたの方が上ね。
でも、あんた程度の魔術師なんて、カスバールにはゴロゴロいるのよ?そして私、最強騎士の元部下なの。
「試してみればいいわ。貴方の背後に隠れている奴等も纏めて相手してやるけど?」
「あれ?どうしてわかったのかなぁ?上手く隠れてたつもりなのに」
コイツらこの国の人間じゃないわね。
かといってカスバール人でもない。
・・・・もしかして、他国からの刺客?
「うお!めっちゃめちゃ可愛い子じゃん!殺すの勿体ねぇよ!連れて帰ろうぜ!」
「阿呆が。そんな余裕あるか!!こっちはもう後がないんだ!デズロもササラも消せなかったんだからな!」
「それが貴方の目的?その為だけにアズラエルの門を開いたの?」
「ああ?カスバール人はそう呼んでるんだな?そうだ。騒ぎを起こせばあの二人が必ず動く。そして、中を調べるだろう?惜しかったなぁ?あと少しでササラを殺せたのに・・・・」
何故ササラとデズロ?陛下ではなく?
「何故あの二人を?普通陛下の命を狙うのでは?」
「デズロが居なくなればこの国は終わりだ。ササラは、気に入らないからだよ」
は?気に入らない?それだけで殺そうとしたの?それで自分の首を締めてるの?馬鹿だわコイツ。
「私が先に気に入った物を横から奪っておきながら平然と私を諭した。偉そうに」
えーーーーーと?もしかして、その一つがエリスかしら?
貴方いい歳の男性よね?そんなにあの子供の事気に入ってたのかしら?気持ち悪!
「私は、ずっとあの宮廷で我慢し続けてきた。再三に渡るデズロの無茶振りにもずっと耐えて、ササラを支えて来た!!それなのに、アイツは私の事など目も向けはしない!まるでそこに漂う空気と同じ扱いだ!私は、私は、無能じゃない!!!」
・・・・・・可哀想。
何がって、コイツの存在そのものが。
まぁ気持ちは分かるわよ?私も似たような経験あるもの。
でも、あんたと同類だと思われたのは心外ね?
「無能よ。だから、こんな事したんでしょ?他に二人を見返す手段がなかったから。それを、諦めたから」
私は、ギリギリまで戦ったわよ。
ある意味勝ったわ。あのキチガイ王子からティファを解放してやったんだから、方法は、まぁ手荒かったし、一か八かだったけど?
「自分が弱い事を、人の所為にしないでくれる?目障りだから」
「煩い!!おい!やれ!」
良かったわ、こんな事もあろうかと、武器屋で剣を買っておいて。
「私、今日珍しく機嫌が良いのよ。だから、退屈させないでよ?」
相手は三人。
まずはジョーイから、仕留める!
ヒュン、バギィ!!
「ギャァ!!」
「何!?味方がいたのか!!」
「・・・・・え?」
ちょっと?何急に、私何もせずに目の前で敵が倒れたんだけど?突然現れたこの男は一体?
「女性一人に男が三人ががりとは、嘆かわしいな」
「・・・・・え?な、何故あ、貴方がこんな、ところに?」
あら?この声、何処かで聞いた事あるような?
どこでだったかしら?えーと、つい最近も、確か宮廷内で・・・・。
「何故?ずっとお前をつけていたからだが?全ての引き継ぎを終えて、自由になったからな?やっと暴れられる」
この人ギャド属性の人なのかしら?物騒な事口にしてますけど?公式に暴れられる場を求める危険な奴なのかしら?あ、フードを取・・・・・げぇ!!!
「へ、へ、へ、陛下!?な、なんで?」
こんな間近で見た事なかったから気が付かなかったけど、この人凄く大きいというか、ガッチリしてるのね?
逞しすぎて気付かなかったわ、でも、一体何故?
「エルハドだ。もう帝位は退いたからな?正式な国内への公表はこれからだが、書類上は全て済んだ。つまり、ここで私に何かあっても、何の問題も発生しない」
いや、いくらそうだとしても!貴方自ら敵の前に現れるとかあり得ないでしょ?貴方皇族の人間なんでしょ?
「え、エルハド様・・・」
「お前は内部にいた分、デズロの事を分かっていたな?確かに、本人を直接攻撃するよりも、周りの人間を痛めつけた方がアイツを弱らせるには効率が良い。だが・・・」
あ、この人強いわ。
剣を抜いた動作だけで分かった。え?元武人なの?
「お前は、アイツに牙を向けた者がどんな末路を迎えて来たか、それも調べるべきだったな?お前のこれから迎える未来なのだから」
あ、目瞑ってた方がいい?そう?じゃあ遠慮なく。
これから起こる凄惨な現場は見ない方が身の為ね。
怒ってるのね?怒りが笑顔に変換されるレベルまで。
「さて?剣を人に向けるのは久しぶりだ。お前達はどれくらい保つかな?退屈させるなよ?」
ひぃ!ごめんなさい。私今すぐ身を翻して逃げてもいいかしら?
私も同じような事口にしたけど、この人本気だわ!!
サウジスカルも何気に狂人揃いなんじゃないの?!
流石ティファが馴染むだけあるわね!私は絶対馴染まない!