商人
5話目です。
城から放り出されて途方に暮れながらも俺はまず歩き出した。
城の城壁から出れば城の周りには人が多く歩いている、こういうのって俺のイメージでは城の近くの区画は貴族街とかで静かなイメージがあったのだが予想に反して意外と賑やかだった。
腹も減ったし、飯屋にでも行くか!
異世界の食事というのも気になるしな。
ふむ、よく見ると武器を持った冒険者みたいなのが結構いるもんだな。
うーん、けどさすがに武器を持ってる人に声かけんのはちと恐いな。
お、あの商人みたいな人に聞いてみるか。
目に入ったのは恰幅のいいちょび髭の生えたおっちゃんだった。
「すいませーん、ちょっと道を聞きたいのですがいいでしょうか?」
「ん? なんでしょう?」
「このあたりで美味しいごはんが食べられるところを探してるのですが、どこかいい場所を知らないでしょうか?」
「食事処ですか。 そうですね、このあたりでしたらモリモリ亭などいかがでしょう? 場所はこの道をあちらへまっすぐに行けば右に看板が出てきますよ。 あのお店は冒険者向けのガッツリとした食事で値段もお安いので人気があるんですよ。」
「ありがとうございます! 」
俺は頭を下げて教えてくれた道に向かおうとすると
「あの? すいませんが!」
さっきの商人が俺を呼び止めてきた。
「はい?」
「気になってたのですがその服とクツを触らせていただいてもいいですか?」
「服とクツですか?」
「はい! ぜひ!」
「まぁ、いいですけど・・・。」
すると商人はジャージを見て触り、地面に這いつくばりながらクツをマジマジと眺め、時折「なるほど。」と言いながら徐々に鼻息が荒くなっていく。
なんかちょっと恐いんだけど。
「あ、あの、もういいですか?」
「申し訳ない! 私としたことが。 ものは相談なのですがこの服を私に売ってはくださらないでしょうか? もちろんこちらで服とクツは用意させていただきます。その上で金貨10枚枚、いや、金貨20枚だします! どうか譲ってはくださらないでしょうか⁉︎」
「へ? この服とクツを金貨20枚?」
うーん、正直それが高いのか安いのかよくわからないんだよな。そもそもこっちの世界の金貨の価値がよくわかってないし。
「すいません、あいにく俺かなりの田舎からここに最近来まして、うちの村はこっちの通貨みたいなのなくて物々交換でやってたんですよ。だからお金の価値というのがイマイチわからなくて。よかったら教えてもらえませんか?」
「なるほど、そんな遠くの方から来られたのですね。 ちなみにこちらの町に入られる場合通行料はどうされたのです?」
はぁ? 町に入るのに通行料? そもそも城に直接召喚されたんだからそんなの知らんよ!
とは言うこともできず、これはヤバいのかもしれん。
普通こういうのってご都合主義でスイスイとなんとかなるんじゃないのか? これは疑われるか?
と、俺がアレコレと思考を巡らせていると
「そうですよね、通貨が使われてないような村から来たのですから町の門番に借金して入られたのですよね? て、ことは先に冒険者登録の方がよろしいかと思います。 服とクツを譲っていただけるのでしたら、私のほうで冒険者登録料と通行料、さらにお食事も奢らせていただきますよ。 食事のときにでも通貨の説明もさせていただきますよ。」
ご都合展開キター!
「お願いします!」
「そういえばまだ名乗ってませんでしたね。 私は商人のゼニーと申します。今後ともよろしくお願いしますね。」
「俺はテツヤといいます。 テツと呼んでください。 こちらこそよろしくお願いします。」
こうして俺は商人のゼニーさんとともに食事より先に冒険者ギルドに向かうのだった。
ノリとテンションだけでここまで書きました。
楽しんでいただけたらなによりです。
では、また次話をお楽しみください。