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受け取り

 冒険者証を受け取り、ここでの用件は済ませたのでグランツさんに挨拶を交わして家路に着いた。

 そして、帰宅の挨拶もそこそこに手早く装備を身につけ、再度家を出ようとした時、背後から足音が聞こえたので振り返ると、クレアがこちらに駆け寄ってくるところだった。

 傍まで寄ってきたクレアは、俺の手を両手で掴んできたので何か用でもあるのかと思い、思念会話を繋げると、こちらの目を覗き込んで話し掛けてきた。


 『アスマ君、どこか行くの?』

 「あぁ、ちょっとな。鍛冶屋に武器を取りに行って、その後訓練場で鍛練でもしようかなって」

 『ふぅん。私もついていっていい?』

 「ん? 別にいいけど、見てて面白いもんじゃないぞ?」


 ただひたすら地味に同じことを繰り返すだけだから、視覚的な面白さは皆無だ。それなら自分の好きなことでもしてる方が有意義だと思うけど。


 『うん。ついていきたいだけだから』

 「……そっか、それじゃあ一緒に行くか」

 『うん!』


 まぁ、ついてきたいというのならそれでもいいか。これも思い出作りの一環ということで。……いや、それはまた違うか。

 とにかく、ついてくること自体には何の問題もないから、本人の好きにさせるのが一番だろう。





 そんなわけでクレアと一緒に鍛冶屋までやってきたわけなんだけど、家を出てから今の今までずっと手を繋いだままという状況が続いている。

 昨日買い物に行った時もそうだったんだけど、機嫌が直ってから妙に手を繋ぎたがるんだよなこの子。別に構わないんだけど、昨日の一件以来更に懐かれたようで、スキンシップのつもりなのかボディタッチが増えたような気がする。

 触れられるのは嫌じゃないけど、不意に腕に抱きつかれたり、変に距離が近かったりすることがあるので、どう反応すればいいのかちょっと困っている部分もある。好意的に接してくれているんだから無下に扱うこともできないし、笑顔を向けられたら笑顔で返すようにはしているけど、これが正解なのかも分からないが、とりあえずクレアが嬉しそうなので、今はこの状態を受け入れておくことにしている。

 まぁ、どのみち思春期になれば自分から触れてくることもなくなるだろうし、それまではこのままでもいいだろう。

 鍛冶屋の扉を開くと、いつものようにカウンターで装備を磨いているアンドレイと目があったので挨拶を交わしておく。


 「おっす」

 「あぁ、あんたか。武器を取りに来たのか? って、何だ今日はえらくちっこい娘っ子を連れてんだな」


 ちっこいって、お前と大して背丈は変わらないと思うけど。まぁ、それは言わないお約束ってやつか。


 「おう、この子はミリオの妹のクレアだ」


 アンドレイにクレアのことを紹介してやると、俺の半歩後ろにいたクレアが一歩前に出て、アンドレイに向けてお辞儀をした。


 「そうかい、俺はアンドレイってんだ。よろしくな娘っ子」

 「……」


 分厚い顔に笑みを浮かべたアンドレイに、クレアも笑みで返した。そうして、二人の顔合わせも終わったようなので、再度俺からアンドレイに話し掛ける。


 「で、さっき言ってたことなんだけど、その通り武器を取りに来たんだ。もうできてるか?」

 「おうさ、さすがに槍はまだだが、それ以外の修繕は終わってるぜ。今持ってくる」


 そう言って奥の部屋に入っていったアンドレイは、その後すぐに俺の預けていた装備を持って戻ってきた。


 「よいせっと、ほれ受け取りな」

 「おぉ、相変わらず綺麗に直すもんだな。完全に元通りになってる」

 「当たりめぇよ。こちとらそれで飯を食ってるんだからよ。それぐらいはできて当然だわな」

 「さすがだな。ありがとう、また来るよ」

 「おう。三日後には槍の修復も終わってるからよ、そん時にまた来てくれや」

 「了解。それじゃあ、クレア行こうか……」


 と、装備を受け取る時に手を離していたクレアがいつの間にか後ろから姿を消していた。どこに行ったのかと思い辺りを見回すと、短剣の置いてある棚をじっと見つめているクレアの姿を発見した。


 「どうした? 何か気になるものでもあったのか?」

 『ううん何でもないよ、ただ見てただけ。もう行くの?』

 「あぁ。装備も受け取ったし、そのつもりだけど」

 『そっか。じゃあ、行こっか』


 そう言うと、クレアはまた俺と手を繋いできたので、その手を引いて鍛冶屋を後にした。

 ……何でもない、とは言ってたものの、さっきのクレアの目はかなり真剣なものだった。もしかしたら何か欲しいものでもあったのかもしれないが、冒険者でもないクレアが武器を欲しがるか、という疑問が残る。

 まぁ、本当に必要になれば俺かミリオに一言言ってくるだろう。何も言ってこない間はそっとしておけばいいか。

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