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冒険者証2

 受け止めた冒険者証を見てみる。

 それは銅でできた掌に収まる程度の大きさのプレートだった。プレートには端に穴が開けられていて、そこから鎖が通してあり、首から掛けられるようになっていた。そして、プレートの表には俺の名前が、裏にはこの街の冒険者ギルドに所属していることが刻まれていた。

 というかこの街ってアルクスっていう名前だったんだ、今初めて知ったわ。特に気にしたこともなかったから全然知らなかった。


 「そいつが今後お前の冒険者としての身分を証明するものになる。最初はタダでやるけど、失くしたりして新しく作り直す時は金取るから覚えとけよ」

 「おっす。でも、安っぽい作りだから自分でも作れそうなもんだけど」

 「そりゃ下級の冒険者証なんて手に入れようと思えば誰でも簡単に手に入れられるもんだからな、凝った作りにしたら作んのが面倒臭ぇだろ?」

 「分かるけど、適当だな。けど、こんな簡単な作りしてたら偽物とか作られたりしないのか? これ身分証になるんだろ?」


 正直、材料さえ揃えたら俺でも作れそうだ。魔物と戦うのが怖くてレベルを上げられないやつとかなら、勝手に作ってこれを身分証代わりに仕事してたりするんじゃないか?


 「そんな物好きはいねぇよ。さっきも言ったが下級の冒険者証なんて簡単に手に入るんだ、冒険者として最低限の身分は保証してやるが、そんなもん持ってたところで周りからの信用なんて得られねぇよ」


 ……そんなもんって。苦労して手に入れた物をそんな風に言われるとさすがにへこむぞ。


 「それに、一応そいつは俺が魔力を込めて加工したもんだから、見慣れねぇやつがこの街の冒険者証を持ってても調べりゃ一発で分かる。もしそんなつまんねぇ真似をするような奴がいりゃあ、俺が直々にそいつの性根を叩き直してやるよ」

 「お、おう。そうなんだ……」


 ……怖。この人に目をつけられるようなことをするような馬鹿はさすがにいないか。この人元冒険者だって言ってたけど、ギルドマスターに選ばれるぐらいだから相当上位の冒険者だったんだろうし、実力で勝てるやつなんてそうはいないだろう。そんな人を怒らせたら、まぁ、ただじゃ済まないだろうな。


 「そんで、どうする? それを受け取った瞬間からお前は冒険者なわけだが、任務の一つでも受けてみるか?」

 「いや、そうしたいのはやまやまなんだけど、まだ新しく買った装備と、取得したスキルの使用感を確かめてないからそれが終わるまではやめておこうかな、とは思ってる」

 「はっ、慎重なこった。だが、それでいい。実戦でいきなり新しく手に入れたものを試すなんて博打はなるべくならやらねぇ方がいい。お前は馬鹿だが、そういうところは弁えた馬鹿だ。これからもその慎重さを忘れないようにしろよ」


 ……これは褒められてるんだよな? 馬鹿とか言われてるけど、貶されてるわけじゃないと思いたい。


 「そんじゃ、これからは一冒険者として精々上を目指して精進するこったな」

 「うっす」


 正直、そこまで上昇志向はないけど、ある程度の資金力を得るためには、今よりももっと強くなって、せめて中級ぐらいにはなる必要があるだろう。ミリオとの約束もあるし、そのための努力を怠るつもりはない。この道を進んだ先に何が待っているのかは分からないけど、できるだけ平穏な日々を送りたいので余計なことには首を突っ込まずに暮らしていきたいと思う。そうしないと身が持ちそうにないしな。

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