笑顔
クレアと目線の高さが同じになるように腰を屈め、真っ直ぐにその目を見つめ、微笑み掛け、言葉を紡いでいく。
「俺はさ、いつもクレアの笑顔を見るたびに元気をもらってるんだ。ここへ来てからもう半年は経つけど、その間に色々と上手くいかなくて辛かったり、苦しかったりする日もあったんだ。でもそんな時に、いつも一生懸命で、どんな時でも笑顔を絶やさずに頑張ってるクレアの姿を見て、力をもらってた。傍に寄り添って、笑顔を向けてくれるクレアの心遣いに救われてたんだ」
この世界に来てからどれだけその笑顔に、俺の心が助けられていたか。
日々の訓練で、なかなか上達せずに腐りかけていた時も、自分のレベルが上がらないと知って絶望しかけた時も、本格的に鍛練を始めて毎日ぼろぼろになっていた時も。どんな場面でも、この子の笑顔が俺に活力を与えてくれていた。まだ頑張れる、もう少し頑張ってみようと思わせてくれた。
何とか挫けずにここまでやってこれたのはこの子が俺の心を守っていてくれたからだ。そうでなければ、どこかで諦めて挫折していたかもしれない。それほどにこの子の笑顔は俺に影響を与えてくれていたんだ。
「今の俺が何とかこうして、折れずにやってこられたのもクレアが傍に居てくれたからなんだ。だからさ、これからもずっと俺の傍に居て、俺のことを見守っててくれないか? そうすれば俺は何だってできる気がするし、何にだってなれそうな気がするんだ。勝手なことを言ってるのは分かってるけど、俺にはクレアが必要なんだ。これからも心配を掛けることがあるかもしれないし、やきもきさせることもあるかもしれない。それでも俺はこれまでみたいにクレアと一緒に居たいんだ。それは駄目か?」
クレアの目を見て、正直に自分の気持ちを伝える。
途中から気持ちが入り過ぎて、自分の要望を押し付けるような身勝手な言葉を口走ってしまったが、それも含めて俺の本心だ。でも、さすがにちょっと勝手が過ぎたかもしれない。更に距離が空いたりしたらどうしよう。不安だ。
と、そんなことを思っていると、不意にクレアがこちらへ向け一歩足を踏み出し、俺の目の前に立つと、おもむろに片手を持ち上げ、それを俺の頭に乗せ撫でてきた。
『もう、しょうがないなぁアスマ君は。わかった、いいよ。これからもずっと一緒に居てあげる』
そうして、はにかんだ笑みをその顔に浮かべたクレアは優しい手つきで俺の頭を撫で続け、俺の我が儘にそう答えてくれたのだった。




