武器
「なぁアンドレイ。武器もあんたが作ったやつってあるのか?」
「残念ながら武器はまだ作らせてもらってないな。作ったことがあるのは精々がナイフまでだ。なもんで、武器は師匠が作ったやつを買ってくれ。そこに並んでる安いもんでもそこそこ値は張るが、品質に関しては一級品だぜ。切れ味が落ちたり刃が欠けたりしても修理修繕はタダでやってくれっから、ま、その分の費用も込みって考えりゃ悪くはねぇはずだ」
そう言われたところで俺にはその値段が妥当なのかどうかの判断なんてつかない。
分からんものはしょうがないから、そこに関してはミリオに任せよう。
「うん。この質でその値段なら文句はないよ。後はどの武器を選ぶかだけど、いくつか試させてもらってもいいかな?」
「構わねぇが、商品に当たったりでもしたら俺がぶん殴られるから軽く振ったりする程度にしてくれよ?」
「わかった。それじゃあ、とりあえずこれからいってみようか」
そう言って、ミリオから手渡されたのは細身の長剣だった。
思ったよりは重くないな。まぁ、これぐらいなら俺の筋力でも振れないということはないだろ。
「握り方は分かる?」
「自信はないけど、たしかこんな感じだよな?」
昔見た映画や、ゲームなんかの握りを思い出し、右手を鍔の下、左手をその僅かに下の辺りで握り込む。
「ちょっと握りが深いかな。もう少し浅く握ってみて。うん、それでいいよ。じゃあ軽く振り下ろしてみて」
よし、じゃあいっちょやってみるかね。
両手で握った長剣を頭上まで持ち上げて、軽く振り下ろす。
「おっと、と」
軽く振り下ろしたつもりだったのに刀身の重みで予想以上に速く振ってしまい、思わずよろけてしまった。
危ない、もう少しで刃を地面に叩きつけてしまうところだった。
「それはちょっと重かったみたいだね。じゃあ次はこっちを試してみようか」
長剣と入れ替わりで渡されたのは小剣だ。
さっきの剣より20~30cmほど刀身が短くて、その分軽い。
流石にこれなら大丈夫だろ。……大丈夫だよね?
とりあえず同じ要領で頭の上まで持ち上げて、今度はより慎重に振り下ろす。
「はっ!」
うし、上手くいった。
一先ずこれなら俺の筋力でも最低限振り回すことができそうだ。
「まずは一つ目の候補が決まったね。じゃあ今度は槍も試してみようか」
槍か。長いな2m半ぐらいはあるか?
実際に使ったことはないけど、ゲームでは割とよく使っていた武器だ。
剣に比べると重量感がなく、一撃の威力では劣るが、最大の持ち味はこのリーチの長さだ。
相手の間合いの外から一方的に攻撃を加えられるというのはかなりの優位性を持つと言えるだろう。
それに、刺突や薙ぎ払い、殴打、斬りつけなどといった様々な使い方ができ、かなり汎用性が高い武器だ。
その代わりといったらなんだけど、上手く扱うには相当の技術が必要になってくるし、閉所では無用の長物となってしまうだろう。
「正直槍なんて扱える自信ないぞ?」
「確かに難しい武器ではあるけど、せっかくだし色々試しておいた方がいいかと思ってね」
「まぁ、試すだけならタダだし別にいいんだけどな」
構えなんかはよく分からんから、とりあえずゲームの簡単なモーションを真似ればいいか。
確か、左足を前に出し、半身になって右の腰だめに槍を構え重心を前傾に倒しながら滑らせるように正面に突き放つ。
「しっ!」
こんな感じだったかな?
自分ではそこそこ上手く突き出せた感はあった。まぁ実戦で使えるようなものではないだろうけど。
「いいね。じゃあ次はこれを」
「……まだやるのか」
結局このあと更に数種類の武器を試した結果、小剣と槍を買うことに決まった。
本当は盾も装備した方がよかったらしいんだけど、俺の筋力じゃ片手ではろくに武器を扱えなさそうだったので、盾の購入は見送ることになった。
武器と防具は揃えたのでアンドレイに礼を言い店を出た後、雑貨屋へ寄り、俺のインナーウェアとズボン、靴下や下着などの日用品を買った後帰宅した。