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昼食

 鍛冶屋を後にして装備を置くために家に戻ってくると、テーブルの上に料理が用意されていた。

 ミリオが帰ってきた様子はないので、この料理は俺が外に出ている間にクレアが用意してくれたものなんだろう。

 まだ部屋から出てはこないので機嫌は直っていないようだが、俺のために作ってくれたのだとしたらすごく嬉しい。昼に起きてから何も食べていなかったから丁度腹も減っていたのでなおのことだ。感謝して戴くことにしよう。


 「いただきます」


 用意されていたのはパンとスープだけだったが、それでも用意してくれたという事実だけで十分に満足だ。多少物足りない感はあるけど、今日は街の外に出るわけでもなければ限界まで鍛練をするわけでもないので夜までは保つだろう。

 歯応えのある固めのパンを噛み千切り、咀嚼する。ミリオやクレアはこのパンを食べる時はスープに浸けて柔らかくして食べているが、基本的に俺はハードな噛み応えが好きなのでそのまま食べている。スープに浸してもそれはそれで味が染み込んで美味しいから偶にそれで食べることもあるが、やっぱりこの重厚な食感がたまらないからな。

 パンを呑み込み、スープの入った器を手に取ると、まだ温かかった。

 温かい食べ物というのはそれだけで心が満たされるものがある。一人で暮らしていた時は、家に帰ってももちろん料理なんて用意されていなかったし、自分の分だけをいちいち作るのも面倒だったので大抵はスーパーやコンビニで弁当や惣菜を買って帰ってレンジでチンして食べる日々だったが、店で大量生産された添加物まみれの食べ物と、手作りの何気ない料理では圧倒的に後者の方が美味しく感じる。

 比べるのも失礼だが、実際に食べてみるとその違いは明白で、前者は一口目に美味しさのピークがきて、それ以降はどんどん美味しく感じなくなっていくのに対して、後者は最後まで美味しく食べられる。その時食べる分だけを作るので、保存料の味を誤魔化すために無理に大味になっていることもなく、素材の旨味をそのまま生かして必要なだけの味付けをしているからだ。

 冷めることを前提として考えられている食べ物と、温かい状態が一番美味しい食べ物では、そもそも根底の部分からして違うものだ。前者を温めたとしてもその旨味が極端に変わることはないが、後者は温かい状態こそが真に美味しい状態なので、温め直すことで冷めている状態よりも格段に美味しく感じられるようになる。両者を温めた状態にしてもその差が覆されることはない。

 まぁ、クレアの料理は冷めても美味しいけど。

 とにかく手作り料理というものは素晴らしいものだということだ。

 もちろん出来合い物は出来合い物で、日々を忙しく過ごしている不特定多数の人向けに作られているので、それを貶めるつもりはない。必要に迫られて開発されたものである以上、それを必要としている人たちの助けになっているという事実は変わらないんだから。

 あー、でもやっぱり温かいスープは美味しいな。あっという間に完食してしまった。


 「ふぅ、ごちそうさま」


 今日も今日とてクレアの作ったスープは美味しかった。

 さて、腹ごなしも済んだことだし、さっきドンガルさんから聞いた薬屋にでも行くことにするか。 

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