魔石
小剣やナイフ、スコップの補修は無料でやってもらえるが、槍の修繕に関してはさすがに料金が発生すると思われるので、魔族の人から貰った魔石を売りに行こうと思ったんだけど、これって普通の雑貨屋じゃ売れないような気がするんだよな。
……というか魔石って何に使うんだろ? 魔術の触媒とか魔法道具の動力とかか? そういう系統の店は行ったことないからどこにあるか分からないけど、アンドレイに聞けば分かるかな?
まぁ、とりあえず行ってみるか。
「ちわー」
そんなこんなで鍛冶屋にやってきた。
扉を開き中に声を掛けると、カウンターの上で防具を磨いていたアンドレイがこっちに視線を寄越し、返事を返してくる。
「おう、あんたか。今日はどしたい、武器の修繕か? それともまた何か依頼しにきたのか?」
「とりあえず武器の修繕と修復かな」
アンドレイの前まで行くと、俺は持ってきていた武器と道具を机の上に乗せていき、最後にポーチから槍の穂先取り出す。
「おいおい、こりゃまたぽっきりといったもんだな。他のも軒並み先端が潰れてやがるし、あんたいったいどんな使い方しやがったんだよ」
「あぁ、それなんだけどさ」
武器がこうなった経緯をアンドレイに話すと、彼は武器の先端を指で撫で色々な角度からそれを眺める。
「ふむん、いくら安いやつと言っても、うちの武器がオーク相手でこんなになるもんかねぇ?」
武器の検分を済ませたアンドレイは机の上にそれを置くと、腕を組み不服そうな表情で唸っている。
「補修はしといてやるけど、次からは無茶な使い方は控えてくれよ。仕方ない状況だったのは分かるが、使い捨て感覚で使われたんじゃこっちも堪ったもんじゃねぇからよ」
「そんなつもりは全然なかったんだけど悪いな、気をつけるよ」
武器をぞんざいに扱われたと思い、少々不機嫌そうなアンドレイに謝罪の言葉と共に頭を下げる。
そんなこちらの反応に対して、謝罪はいらないとばかりにアンドレイは左右に手を振る。……怒ってはないのかな?
「そうしてくれ。でだ、こっちの槍は修繕してほしいってことだが、多少短くなっても構わないか?」
「あぁ、それでいいよ。頼む」
「あいよ。だがこいつはさすがに金を貰うぜ? あんたいつも金欠気味だが支払いはできんのか? うちの店はツケとか利かねぇからな」
「あー、そのことでちょっとアンドレイに見てもらいたいものがあるんだけど」
「見てもらいたいもん? 何だよ、鉱石か?」
「いや、鉱石じゃないよ。これなんだけど」
革袋を開き、魔石を取り出すとアンドレイに手渡す。
「あん? っておい、こりゃあ魔石か!?」
アンドレイはそれを手に取った瞬間、驚愕の表情で魔石を見たり俺の顔を見たりと忙しなく顔を上下させている。
え? 何この反応。……あれ? もしかして、魔石ってとんでもないレアアイテムだったりとかするのか?
「おい、あんた、これどこで手に入れたんだ?」
魔族から貰った。とかって言ってもいいのかな?
でもなー、それを言うことによって不都合とか起きそうで何か嫌なんだよな。
正直俺って魔族に関して最低限の知識しか持ってないから、あんま迂闊なこと言いたくないし、濁しておこうかな。
「あー、それな貰ったんだよ」
「誰に?」
「いや、誰ってそれはさ、ほら、その、な」
「ん?あぁ、悪い。そんな情報タダでは教えられねぇわな」
「え? あ、あぁ、そりゃあ、やっぱな」
何か勝手に都合良く解釈してくれたようで、アンドレイからそれ以上の追及はなかったが、騙してるみたいでちょっと心苦しいな。
「あのよ、ちょっと師匠を呼んでくるからそこで待っててくれねぇか?」
「あぁ、別に構わないけど」
「すぐ戻る!」
そう言うとアンドレイは小走りで奥にある扉から中へと入っていった。
何か予想外な展開でちょっと困惑してるんだけど、早まったかな、これ。




