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 「そういえば冒険者ギルドに行った時グランツさんはお前のことあんまり知らなかったみたいだったけど?」


 ちょっとこの空気が気恥ずかしくなってきたので、さっきの話で少し疑問に感じたことを質問してみる。


 「たぶん気を使ってくれたんだと思うよ。僕にしてもあの時点ではまだアスマにこの話をするつもりはなかったから、その配慮に乗らせてもらったし」

 「あー。ギルドマスターやってるだけあって、あの人そういう気配りはできるもんな」


 他人に気を使える人ってのは格好いいよな。俺も見習いたいんだけど、基本的に自分のことだけで精一杯だからそんな余裕がないってのが現状だ。不甲斐ない。

 その後、クレアも落ち着いたところで朝食を食べることになり、食後に昨日の出来事を二人に話すことにした。クレアに怒られそうだったから怪我をしたことは秘密にして。


 「それじゃあ目的の物は手に入ったんだね。じゃあそれをギルドに持っていけばそれでようやくアスマも冒険者ってわけだね。おめでとう」

 「おぉ、ありがとう」

 「でも、あそこにそんな村が在ったんだね。気づかなかったな。でも良かったの? その村の存在を僕たちに教えて」

 「二人になら構わないと思うぞ。実際今度は妹も連れてきてって言ってたし」


 構わないよな? 連れていくってなったらさすがに場所を教えないわけにはいかないし、クレアを連れていくのにミリオにそれを教えないのもおかしな話だし。


 『妹?』


 その単語にクレアが反応する。

 そういえばその時の会話で妹ってことにしてたから、つい流れで妹って言っちゃったけど、まずかったかな?


 『私、アスマ君の妹?』

 「んー、まぁ、そんな感じかなって俺は思ってるんだけど、嫌だったか?」

 『ううん、嫌じゃない! えへへ、そっかぁ、そうなんだぁ』


 何か喜んでるみたいだから良かったんだよな?

 それにしても、本当いつの間にかこんなにも懐かれちゃってるんだよな。可愛いもんだ。


 「ねぇアスマ。さっきのエルフの人が使っていた精霊術の話なんだけど、もう少し詳しく教えてくれないかな? 僕、エルフの人とは一緒に任務に行ったことがないから、見たことがないんだよね」

 「あぁ、いいぞ。ついでに今度彼女らに会いに行く時のために、あの娘らのことも教えておくよ」


 そして、俺が分かる範囲で精霊術やエルフ三人娘のことをミリオに話していると、最初はクレアもそれを一緒に聞いていたのだが、ふとそちらを見るとクレアの表情が何故か不機嫌なものに変わっていた。

 ……え? 何で?


 「アスマ? って、そんな顔してどうしたのクレア」

 『……何でもないもん』


 一言だけそう言うと、クレアはむすっとした表情のまま席を立ち、自分の部屋に戻ってしまった。


 「……俺、何か怒らせるようなこと言ったかな?」

 「いや、あれはやきもちを焼いてるだけじゃないかな。他の娘の話ばっかりしてたから」

 「はぁ、やきもちですか?」

 「うん。おそらくだけど」


 やきもちか。まぁ、小さい子って割と独占欲強いところがあるから、そういうことなのかな。分からんけど。


 「しばらくすれば機嫌も直ると思うから今はそっとしておこう。その間にアスマは寝るなり、装備の修復に行くなりすればいいんじゃないかな」

 「あー、そうだな。さっきまで門の前で仮眠とってたけど、昼まで寝てからアンドレイのとこに行ってこようかな」

 「うん。それじゃあお休み、アスマ」

 「ん、お休み」


 そして、案外とすんなり眠りに落ち、昼に目を覚ました時にはミリオはどこかに出掛けていなくなっており、クレアも部屋から出てきていなかった。

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