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問題21

 ――その後。


「……()っかれた〜」

「……アンも〜」


 数分間の戦闘ののち、なんとか鉄蟻を倒した俺たちに、ディラックさんが声を掛けてきた。


「なんだよお前ら、やりゃできんじゃねぇか。ま、想定とはだいぶ違ったが、結果良けりゃすべて良しってな!」


 はっはっは、と笑いながらこちらの肩を叩いてくる彼に、「……そうっすね」と答えながら、乱れた息を整える。


「なんだよ、勝ったってのに元気ねぇな。どうした、嬉しくねぇの?」

「そんなことないよ。ただ、今はみんな疲れてるから、回復を優先してるってだけでね」


 反応が淡白なことが気になったのか、不思議そうな顔をしているディラックに、ミリオがこちらの状態を伝えてくれた。


「たった一匹倒しただけで、か?」

「うん。後ろで支援していた僕やテレサはともかく、前で戦ってくれてたみんなは、すごく消耗してるはずだよ。なんせ、一撃が致命傷になるような相手との戦闘だからね」


 ミリオの言うとおり、普段と比べこの鉄蟻との戦闘では最初から最後まで気を張り詰めながら行っていたせいで、主に精神面の負担が大きく、何倍にも疲れて感じた気がする。


「ほーん、そんならいいけど。ま、ただぼーっとしてるぐらいなら、あいつらの戦いっぷりでも見てたらどうだ? 俺のやり方よか、手本になるんじゃねぇの?」

「たしかに、そうかもね。よし、参考にさせてもらおうか」


 ミリオに誘われるようにして、みんなで他のパーティーの戦闘を観察されてもらった――のだが。


「うわあっ! まただよ! また、ばぁんって!」

「うん、すごいね。どうやってるんだろう?」


 アンネローゼとミリオが注目しているのは、フェイリアスさんと、ドリスさん――その二人が使用している戦闘技術。

 それを俺は、おそらく見たことがある。


「……あれって、やっぱり《鎧通し》だよな?」


 彼ら中級冒険者の戦いぶりは、ここへ来るまでにも何度か見ていたので、個人技や連携力の高さは分かっていたつもりだったが、さすがにあんな(もの)を使えるなんて思っていなかった。


『知ってるの、アスマ君?』

「ん、あぁ。たぶんなんだけど、ゲインさんが前に教えてくれた《鎧通し》って技だと思う」

「教わったんなら、お前も使えんのかよ?」

「使えない使えない。いやまぁ、中途半端に真似ることぐらいはできるよ? 動いてない的限定で」


 つまり、実戦ではまず使えないってことであり、それを使えているあの二人は単純にすごい。


「それで、あれはどういったものなの? アスマ」

「えーっと、簡単に言えば、衝撃を内側に通す技ってとこかな。頑丈な鎧を着込んでる相手を倒す時に最適だって、ゲインは言ってた」

「あぁ、なるほど。以前アスマさんが医務室に運び込まれていた時の」


 テレサが思い出したというように手を叩いて言ったとおり、身を以てあれを教えてもらった時は、ギルド貸出の鎧を身に着けてたのに、そのうえで気絶させられた。

 しかも、あの人は動き回ってても関係なく決めてくるから、もう手に負えない。


「うん、そうだけどあんまり思い出さないでくれると嬉しいかなー、って」


 そんな俺の反応が面白かったのか、みんなが思い思いに笑っていた。

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