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問題20

「っしゃ……って、あぶねっ!!」


 日々の魔術訓練の成果が出たことを喜んでいたところへ、溶け落ちた鉄蟻の外殻が飛んできたので慌てて避ける。

 破片のようなものなので、それ自体に大した質量はなさそうだが、単純に触れたら危険な気がしたので全力で。


「さすがだね、アスマ!」


 その声につられて視線を向けると、ミリオが弓に矢をつがえ、追撃の一射を放つところだった。


「《エンチャントエレメント・サンダーショット》!」


 鏃に雷属性を付与された矢は、目標から大きく外れたように射ち出されたが、天井付近で急激に軌道を変えると、吸い込まれるようにして鉄蟻の身に突き刺さる。

 そして、鏃を中心にして雷撃が(ほとばし)ると、六本の脚がびくりと震え、目に見えて動きが鈍くなった。


「よし! いけるよ、みんな!」


 ミリオが号令を出した瞬間、待ってましたとばかりに飛び出すアンネローゼ。


「う〜〜っ、にゃー!!」


 先ほどまでの攻めあぐねていた状況が、よほど退屈だったのか、それを晴らすかのような変則的(でたらめ)な動きで鉄蟻へ肉薄すると、あろうことか真正面から跳躍して、大顎を足掛かりに天井付近まで飛び上がった。


「そ〜、れっ!!」


 そこから体を器用に回転させ上下を反転させると、天井を蹴りつけ勢いよく鉄蟻の背へ突撃し、深々と槍を突き刺した。


「一人で楽しんでんじゃねぇぞ、この野郎ぉ!」


 少し遅れてガルムリードも参戦したのを機に、こちらも傍まで来ていたクレアとその意志を確認するように頷き合い、彼女の体を抱き上げて一気に鉄蟻の脚元(あしもと)へ飛び込む。


「……それじゃあ、やるからなクレア!」

『うん、お願い!』


 覚悟を決めて、軽く放り投げるようにしてその小さな体を手離す。

 そして、宙に浮いた彼女の手をしっかりと握り締め――力の限りで振り回した。


『やあぁぁっ!!』


 その勢いのまま地面ぎりぎりを滑るようにして、高速で鉄蟻の脚の内側へ潜り込んだクレアは、伸ばした腕の先で小剣を操ると、いとも簡単に後ろ脚を斬り飛ばすことに成功する。


「よっと!」


 腕を折りたたんでクレアの体を引き寄せ、再度抱え直し安全圏へと飛び退く。


『うまくいったね、アスマ君!』

「あぁ、完璧だったな!」


 この一連の流れこそが、ミリオから俺たちへ与えられた、安全で消耗も少なく、互いの足りていない部分を補い合うことで、最大限に威力を発揮するための作戦だ。

 もちろん、アンネローゼとガルムリードが気を引いてくれていたからこそ、あっさり決まったというのはあるが、これなら十分にやれそうだ。

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