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問題14

「おいおい、お前らだけ強化もらってんはズルだろ? 仲間はずれは関心しねぇなぁ」


 こちらが追いつくのを待っていたのか、中途半端な位置で立ち止まっていたディラックさんが、相変わらずの軽口をたたく。


「馬鹿言ってんな、勝手に先行したてめぇが悪いんだろぉが。少しはこっちに合わせやがれ」


 先ほどのこともあってか、ガルムリードは少しイラついたように言って、彼の胸を拳でこづいた。


「まぁ、そう怒んなって。しゃあねぇだろ、団体行動なんて慣れてねぇんだからよ」

「あ? んなもんが言い訳に」

「――ガルム」


 その(ひょうひょう)々とした態度が気に食わないようで、さらに食って掛かろうとするガルムリード。

 たが、そんな彼の行動を、ミリオはたった一言呼び掛けるだけで止めてみせる。


「ディラックさんに無理を言って同行させてもらってるのは僕らなんだ、それなのにそんな言い方ってないよね?」

「……かっ」


 やんわりと宥められたガルムリードは、自分の物言いにも悪いところがあったと認めたのか、反論することもなくあっさりと引き下がった。


「戦闘前なのに変なこと言って、ごめんね」

「気にすんなよ。つーか、さすがにこれは俺の落ち度だからな。今も、さっきのも。苦手なんだよなぁ、いちいち他人に気ぃ使うのはよ」


 ディラックさんは背負った大剣を手にしつつ、そんなことを言う。


「ただ、これでも反省はしてるんだぜ? だからまぁ、その詫びも兼ねて今から見せてやるよ。あのアリンコ共との戦い方ってやつをな」


 二本の大剣、その切っ先を地面すれすれに下げて持ち、軽い足取りで鉄蟻の下へと向かう。


「あー、そうだ。その位置があいつらに対しての安全な距離だから覚えとけ。そこなら酸も基本届かねぇし、万が一でも余裕で避けられんだろうからよ」


 振り返りはせず、鉄蟻唯一の遠距離攻撃から逃れられる安全圏を示しながら、自身はより危険な距離へと前進していく。

 そして、その距離が一定まで近づいたところで、鉄蟻が彼の存在に気づいたのか、触覚をしきりに動かした後、内の一体が腹部をぶるりと震わせると、突き出している刺針から噴射した。


「さぁてと。そんじゃ、いくか!」


 目の前で繰り出されたそれを恐れもせず、斜め前方に飛び込んで躱わすと、その勢いで一気に加速――肉薄する。

 それを待ち構えていた鉄蟻が、左右に開いた顎を高速で閉じるが、即座に伏せて回避し、起き上がると同時、交差した二本の剣でかち上げて、巨体を大きくのけ反らせ、蹴倒す。

 超重量を感じさせる音と共に、倒れ込んだのを確認する暇もなく、真後ろから迫っていた三体目へ、振り向きざまに真横から剣撃を与え、頭部を弾くと、自身の体を弓なりに反らせ、勢いよく追撃の見舞う。


「おおぉっ!」


 気合いと共に繰り出された一撃は、とてつもない轟音を響かせ、激しくぶつかり合った金属同士から飛び散る火花。


「っと。やっぱ、この剣じゃ両断とはいかねぇか」


 ディラックさんが持ち上げた剣の先を見れば、そこには頭部を陥没させた鉄蟻が倒れ伏し、完全に動きを停止させていた。

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