問題9
「はっ、元気なこって。ま、ほんじゃぼちぼち行くとしようぜ」
「ああ。では、引き続き先導は我々が引き受けるので、後ろは君たちに任せる」
「おうとも。殿にはこのガトー率いる屈強な男たちがいるんだ。大船に乗ったつもりで任せておけ!」
がはは、と大口を開けて豪快に笑うガトーさんと、その後ろで深く頷いたり、太い親指を立てている兄貴たち。
四人組で構成されている彼らのパーティは、全員が男の戦士であり、鍛え抜かれた肉体は見事というしかないほど大きく、重厚な鎧を着込んでいるにもかかわらず、その動きは軽々としたもので、力強く非常に頼もしい。
「よし。行こう」
そうして、再びフェイリアスさんのパーティを先頭に、俺たち、ガトーさんのパーティが後に続き、探索を開始する。
現地の人たちにもらった簡易的な地図を手に、いくつか分かれている通路の、まずは一番手近なところから調べていくことになった。
――本当は、シエラが目撃したという鉄蟻女王の存在を明らかにしようか、という話だったのだが、彼女の記憶が定かではないために、場所がわからなかったからだ。
まぁ、彼女は罠避けのために連れている人質のようなものらしいので、仮に道程を示したとしても、その通りに進むということはないんだろうけど。
「ん。おい、なんかあったみてぇだぞ」
あれからいくつかの通路を巡り、他よりも少し道幅の大きな通路に入ったところで、先頭が立ち止まり何かを調べているようだった。
「ああ。ここが戦闘のあった場所ってやつなんだろうよ」
言いつつ、ディラックさんが顎で示した壁を見ると、たしかに戦闘痕のような傷が散見できた。
「うわ。床に変な汁飛び散ってる……」
床に染み込んでいるので分からないが、赤くないから血ではないのかな?
「おそらく鉄蟻の体液だろうね。酸は独特な刺激臭がするって話だし」
「そうですね。ですが、その鉄蟻の死骸はどこでしょう? 回収したという話は聞いていませんが」
たしかに、ドワーフたちは鉄蟻を倒してすぐ、荷物をまとめて拠点に戻ったって聞いたし、それならこの辺りに転がっていてもおかしくはないはずだ。
『他の鉄蟻が持っていったのかな?』
「ま、共喰いぐらいするだろぉからな。そうなんだろうよ」
ガルムリードの言う通り、魔物だろうと動物だろうと、共喰いは自然じゃありふれてることだし、そういうことなんだろう。
正直に言えば、死骸だろうと一度実物を見て、色々と確認しておきたかったんだけど、ないものはないので、仕方なく諦める。