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問題8

 ――そして、休息も終え、諸々の最終確認も済んだところで、ついにエルディア鉱山の坑道へと足を踏み入れることとなった。


「わあ〜っ! 見てみて! さっきまで真っ暗だったのに、ちゃんと見えるよ!」

「おお、本当だ! すげえな、あの薬」


 これはギルドから支給された暗視薬という薬の効果なのだが、灯り一つない坑内でも、くっきりとその全景を目にすることができるようになった。

 効果時間は約一日程度。暗所での探索に加え、戦闘までこなすとなると必須ということで、シエラを含めた全員が服用している。


「かっ、こいつぁ便利だ。薬屋ってのは大したもんだな」

「ですね。ただ、やはり体に無理をさせている影響で、眼精疲労が重くなってしまうのだけは難点ですが」

「うん。でも、これだけはっきりと見渡せるなら、その価値は十分にあるよ」


 実際、目で見ることでしか得られない情報っていうのも多くあるし、本当にこういうものを作れる人たちはすごいと思う。


『でも、アスマ君は薬がなくても見えるんじゃないの?』

「ん? あー、そういえば言ったことなかったっけ。俺のはあくまでも見えづらいのを見えるようにしてるだけだから、ここまで完全に真っ暗だとさすがに見えないんだよ」


 結局のところ、どこまでいっても《感覚強化》だからな。

 肉体の可能性を引き上げているってだけで、この薬みたいに魔術的な強化を施してるってわけじゃないから、最初から見えてないものは見えるわけもない。


『あ、そうだったんだ』

「……しかも、あのスキル使ってる時に強い光とか見ちゃったら、わりと本気で悶絶しそうになるから怖いんだよな」

『あはは……。思ってたより大変なんだね』


 ……そうなんだよね。

 だから、その部分だけでみれば間違いなく、暗視薬の効果は俺の強化の上位互換と言っても過言じゃない。


「おら、ガキんちょ共。いつまでもくっちゃべってんなよ」


 と、そんなやり取りをしていると、ディラックさんがこちらを咎めるように声を掛けてきた。


「こっから先はお前らにとっちゃ死地も同然なんだ。油断してたら――死ぬぞ」


 ぞくりと、背筋が凍りつきそうなほどの冷たい声でそう言ったあと、にやっと笑い「ま、死なせるつもりはねぇけどな」と、一転して軽い口調で言ってみせた。


「そうだね。たしかにそうだ。ここでは、間違いなく僕らが最弱だ。いつも通りにいこうなんて考えは、甘かった。気を引き締めていこう!」

「かっ、油断なんざした覚えはねぇが、いいぜ。俺たちがどこまでやれんのか、試してやろうじゃねぇか!」


 みんなを鼓舞するように、ミリオがいつもより語気を強めて言い、ガルムリードがそれにつづく。

 そして、さっそくそれに感化されたアンネローゼが、ぴょんと飛び跳ね、みんなの前に出る。


「ぃよーし! アンも本気でやっちゃうもんねぇ! えいえいおー!」


 さぁ、ご一緒に。とばかりにこちらを見てくる彼女に応えるよう、パーティー全員が「おー!」と掛け声を上げた。

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