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暴発

 正直、火球なら何度も見たので発動タイミングは何となくは分かるんだけど、基本的に火球は連続で放ってくるので一度でもタイミングを逃すと周囲への被害が問題になるため、なるべくなら爆炎のタイミングに合わせるべきだろう。

 だが、爆炎の発動タイミングを狙うとすれば、魔剣を振り下ろす瞬間しかないわけだが、早く暴発させると自分まで爆発に巻き込まれかねない。かといって遅すぎれば意味がない。どうしてもタイミングがシビアになってしまうが、そこは擦り合わせていくしかないだろう。

 そのためにはもう何度かあの爆炎を体験する必要がある。なので、自分から間合いを詰め攻撃を誘い出すことにする。近づき過ぎると不意の一撃に反応できない可能性もあるため、ある程度の距離で足を止める。

 魔剣を引っ張り上げて肩に担ぎ直したオークが怒気を込めた瞳で俺を睨み付け、再度魔剣を振り上げ襲い掛かってくる。

 念のため投擲用の石を取り出しておき、袈裟斬りに振るってきた魔剣を身を捻りかわす。その次に放たれた横凪ぎも後ろに軽く跳躍しかわす。そして、オークが上段に大きく魔剣を振りかぶる。これだ。この状態から放たれる一撃が爆炎攻撃に繋がる振り下ろしだ。

 魔剣に意識を集中させる。それが振り下ろされる瞬間に横に跳躍することで一撃の範囲外に逃れるが、視線は魔剣を捉えたままタイミングを窺い、ここだと思ったところで投石を放った。

 だが、俺の投石が魔剣に届くよりも早く地面に叩きつけられた魔剣から爆炎が放出され、その衝撃を受けた投石が出鱈目な方向へと高速で飛んでいった。弾丸のように飛び去ったそれは木の幹へと突き刺さることでその勢いが止まったが、正直自分の方に飛んでこなくて良かった。あんなものが当たったら冗談抜きで体を貫通しそうで、当たりどころによっては即死だ。相変わらずすごい衝撃と熱だ。

 さっきの一投は少しタイミングが遅かったみたいだ。今度はもう少し早く投げてみることにしよう。

 そして、また同じような動きで迫ってくるオークを待ち構え、突進からの斬り払いを屈んでかわし、地面を抉るような低空からの切り上げも立ち位置をずらすことでかわし、その動きから繋げるように上段に構えられた魔剣の振り下ろしに合わせるように跳躍。その最中にその発光する刀身へと目掛け、全力の投擲を放つ。

 それは狙いたがわず魔剣へと一直線に突き進み、地面へと到達する寸前にその刀身へと辿り着き、鋼鉄が奏でる甲高い金属音が響いた直後、それを掻き消すような轟音が響き渡り、その中心にあった魔剣から数メートルの範囲に爆炎を巻き起こらせる。

 当然、魔剣を握っていたオークもその範囲内にいたので爆炎に呑み込まれ、その姿は爆風によって巻き上げられた砂埃と煙により見えない。

 だが、ゴブリンの身を瞬時に粉砕するほどの威力を秘めた一撃を間近でもろに浴びたのだ、その身がいくら強靭であろうとも無傷というわけにはいかないはずだ。

 そして、夜風により少しずつクリアになっていくその場には、腕と体の前面に多少の火傷痕のようなものと、そこから少量の血液が滴り落ちる程度の傷を負っただけのオークが平然と、しかし、全身を小刻みに震わせるほどの怒りを滾らせて立っていた。

 今の爆発を受けてその程度の傷しか負っていないなんて有り得るのか? どうやらあのオークは俺が想像していた以上の頑強さを持っていたようだ。炎によるダメージも大して受けていないように見えることから、その外皮と分厚い脂肪には熱に対して耐性があるのかもしれない。

 致命傷を与えたと思っていただけに、少し拍子抜けしてしまったが、確実にその身にダメージは刻み込まれたはずだ。この調子で油断せずに対処すれば俺でも十分に戦える。

 だが、オークの姿を見逃さないように捉え続けていた俺に、先程よりも更に濃密な怒気と殺気を込めた視線を飛ばしてきたオークが、これまでより一層獣じみた咆哮を上げ、荒々しい動きでこちらに迫ってきた。


 「グゥアァァァッッ!!」


 その姿を眺めていると、不意に魔剣の刀身が淡く発光する。

 そして、大した距離が離れてもいないというのに魔剣から火球を放ってきた。

 唐突にそれまでとは違う動きを見せられたことで多少動揺したが、火球の一発程度なら問題はない、余裕を持って回避する。一瞬火球を後ろに見送ることに対して思うところがなかった訳ではないが、この距離では投擲で撃ち墜とすことも出来ないし、それ以外でこれをどうにかできる手段を俺は持ち合わせていない。だから、それについての思考は一度置いておいて、今は目前に迫ったオークに注視する。

 距離を詰めたオークは先程までと同様に上段へと魔剣を振りかぶると、一気に地面へそれを叩きつけた。

 それを同じように跳躍して避け、オークの次の動きに備えて身構えようとした直後、魔剣から立て続けに火球が飛来してきた。

 咄嗟に地面に身を投げることでそれをかわすが、顔を上げたその先には魔剣を上段に構えたオークの姿。

 四つん這いの姿勢から、手足で地面を押し上げることで真横に跳躍するが、不自然な体勢からの動作だったので十全に思った動きができずに、少し爆炎の余波を浴びて吹き飛ばされてしまう。

 地面を何度か転がり、衝撃を押し殺すことができたが、思いの外長い距離を転がされたようだ。幸いだったのは吹き飛ばされた方向に障害物がなかったことだろう。もし勢いがついたまま何かに叩きつけられでもしたら大事になるところだった。

 しかし、急にオークの動きが滅茶苦茶になったな。

 先程までとは違い、決められたパターンで動くのではなく、より本能的な動きに変わったことで、隙がなくなり一気に戦いづらくなった。

 反撃のことなど考えている暇はないほどに追い立てられた。このままじゃいずれ動きを捉えられてしまうだろう。弱ったな。俺がこのオークに対して唯一のダメージを与える方法が実質的に封じられたようなものだ。

 何か次の手を考えるか、それともジリ貧覚悟で逃げ続けるか、どうするか…。

 思考をまとめる暇もなく、オークがこちら目掛けて走り始める。

 何をどうするのが正解なのかが、自分では分からなくなり焦りが浮かび始めたその時。背後から声が掛けられた。


 「大丈夫?」

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