問題7
『ミリオ。呼ばれてるけど、今大丈夫そう?』
『あ、うん。大丈夫だよ』
『よし。じゃあ、繋げるな』
ミリオからの了承も出たことだし、二人が直接やり取りできるように経路を開いたところで、先に一つだけ注意をうながしておく。
『一応言っておくけど、俺も魔力を温存しておきたいから、手短によろしく』
それだけ言い、二人からの返事を聞いたところで、あくまで中継役の俺は、ここから黙って話を聞くだけの人になろうと思う。
『そんじゃまぁ。早速だが、あの女の話どう思った?』
『うん。正直なところあまり信用はできないね。おそらくだけど、罠の可能性が高いかな、と思ってるよ』
『だよな』
二人の共通認識が悪い意味で合致していることに少し驚く。
たしかに、少し怪しいと感じた部分がなくもなかったけど、ほぼ確定で罠扱いされてるとまでは思ってなかった。
『罠なら罠でいいんだよ。ただ問題なのは、そいつがどの程度の罠かってことだ』
『そうだね。ただの待ち伏せならともかく、集めた魔物をけしかけられたりするのには注意して、とにかく分断されないよう気をつけないと』
『幸いドワーフたちのおかげで、坑道を崩されることがほぼないってのは助かるけどな』
そういえば、この前初めて知ったけど、どうやらドワーフも土と火に限って精霊術を使えるらしく、その影響もあって採掘現場付近では、基本的に周囲を利用した土魔術を使うことはできないらしい。
なんでも、土の精霊に働きかけることで、ここら一帯の土地自体の魔術抵抗を高めて、術の効果を打ち消しているからとか。
さらに言えば、坑道の崩落防止のために、堀削後は壁面を強化しているそうで、魔物の膂力でもそう簡単には崩せないようだ。
『うん。だから、あと気をつけるとしたら、魔力に頼らない毒や爆発かな』
『ま、簡単に思いつくもんはそんなとこだな。それ以上のもんが出てきた時は、全力で撤退ってことでいいな』
『うん。情報を持ち帰ることが最優先だからね。それでいいと思うよ』
ミリオの同意も得たところで、ディラックさんが『よし!』、と話を締めるように言ってみせた。
『んじゃ、ここのやつらには、あとでお前から適当に言っといてくれ、俺ももうちょい休んだら、リーダー連中とその辺話してくるからよ』
『了解。それじゃあ、アスマ。あとでまたよろしくね』
『はいよ。じゃあ、切るからな』
そう言って、二人との念話を解除し、小さくため息をついた。
自分の警戒心の薄さに、辟易として。