問題6
――それから一時間が経った今。
鉱山内部の生活区域にて、探索に入る前の休息を取っていた。
「そんじゃ腹も膨れたとこで、一眠りすっかな。お前らも適当に休んどけよー」
ぐっと体を伸ばし、そのまま後ろへ倒れ込むようにして、ディラックさんが床に寝転がる。
休憩所として貸してもらった木造の建物は、8人で使っても手狭に感じることはなく、温かい食事まで用意してもらえたので、とてもありがたかった。
「よっ、と。俺もちょっと寝とこうかな」
壁際に腰掛け、一息ついたところでクレアがやってくる。
『隣、いい?』
「どうぞどうぞ」
断る理由なんて一切ないので、ぽんぽんと床を叩いて、笑顔で答える。
そうして、隣に腰を下ろした彼女が、こちらに頭を預けて目を閉じたところで、自分も目を閉じて《思念会話》を発動した。
『あー、あー。言われてたとおりに繋いだけど、あと誰に繋いだらいい? ……ディラックさん?』
休息に入る少し前に指示を受けていたので、ディラックさんとの間に繋がりを設け、話し掛けたが何故か返事がない。
『あれ? もしかして聞こえてない?』
今まで接続に失敗したことなんてなかったので、おかしいなと思いつつも適当に喋り続けていると、ようやく『聞こえてるよ』と返事があった。
『あ、よかった〜。もしかしたら本気で寝ちゃったのかと思って、ちょっと焦ったよ』
『ばっか、おめぇ。あんな得体の知れない女がいて、寝られるかってーの』
得体の知れない女って……。事実ではあるけどさ。
『ただ、改めてお前の念話がどんなもんか確かめてただけだよ』
『どんなって?』
『こいつは思念を読み取って、それを声って形に変えてやり取りをできるようにしてるわけだろ?』
『まぁ、そうだな』
俺自身も詳細まで完全に把握しているわけじゃないか、たぶんそんな感じだと思っている。
『だったら、俺が腹ん中で考えたことが、全部そっちに筒抜けになってんのかーとか、そんなだよ』
『あー、そういう』
『なんせ、念話なんざ使ったことがねぇからな。漏らす必要のないもんまで読まれたんじゃ、たまらねぇからな』
『そりゃそうだ。でも、その辺は大丈夫だと思う。今までにそういうことは一度もないし』
というか、思念が全部漏れ出るんだとしたら、失言しそうで怖いし、俺も使いたくない。
『みたいだな。さっきから軽くおちょくってたけど、無反応だったし』
『……いや、そんなことしてたのかよ』
豪快に『はっはっは』と笑うディラックさんに、心の中で嘆息し、もう一度さっきと同じ質問をする。
『それで、他に誰か繋いだ方がいい人いる?』
『おう。ミリオに繋いでくれ』
その言葉に『了解』と返し、再度スキルを発動する。