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問題4

 冒険者の稼ぎは――任務内容にはよるが、他の職種に比べると、短期間で得られる額がかなり多い。

 ただ、それと同様にまた、出費も比較的多くなりがちだ。

 というのも、任務の内容を問わずして、毎回必要最低限の物資は用意しなければいけないし、魔物と戦うことを想定すればそれ以上に費用はかさむ。

 さらに、そこで得た報酬も、消耗品の補充や装備の調整・新調、疲弊した精神面を安定させるための嗜好品の類に加え、当然のように日々の糧を手に入れるために消費する。

 なので、一部の人たちを除けば、冒険者というのは実はそれほど儲かるわけではない。

 まぁ、以前にミリオが言っていたように、自身を能力を底上げしつつ、その過程で金策もできるという意味では、最適な環境であることに間違いはないが。


「なるほどね。そんでたどり着いた結論が、盗掘ってわけかよ」


 冒険者として上を目指すためには、強くならなければいけない。

 だが、そのためにはどうしても戦闘が必須となってくる。

 なら、その負担を少しでも軽くするためにはどうすればいいか。

 答えは簡単だ。

 良質な装備を手に入れればいい。

 ――ここ、エルディア鉱山では様々な鉱物を採掘することができ、中でも【黒鋼】という鉱物は、加工することにより、非常に優れた武具となるため、冒険者たちにとって憧れの的となっている。

 ただ、ありふれたそれらに比べると、黒鋼の武具はあまりにも値が高く、おいそれと手にすることはできない……本来なら。

 ――要は魔が差した、という話なんだろう。

 彼女の仲間の一人に、情報を売買する者と繋がりのある男がいるらしいのだが、そこから一般的には秘匿されているエルディア鉱山の現状を知り、今なら黒鋼を盗み出せるのでは、という安易な考えに至ったのだという。

 普段であれば、労働者たちで溢れている坑道に、誰に見つかることもなく侵入するなんて絶対に不可能だが、危険な魔物が徘徊しているとなれば作業は中断せざるを得ず、人気のなくなった坑内など簡単に忍び込むことができたそうだ。


「いけないことだっていうのは、分かってた。でも、喉から手が出るほど欲しいものに手が届くって思ったら、その誘惑に勝てなかったのよ」


 ……その気持ちは分からなくもない。

 生半可な努力では手に入らないようなものを、少し危険を冒すだけで簡単に入れられるとなれば、たとえそれが罪になることだとしても、揺らいでしまうことはままあることだろう。

 ただ、不当な手段で手に入れたものは、それを見るたび、手に取るたびに罪悪感に襲われてしまうことが想像に難くないので、小心者の俺にはできないことだが。


「ま、そいつに関しては俺がとやかく言う話じゃねぇから、一旦置いとくとしてだ。お前の仲間、本当に生きてんのか?」

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