問題
ミリオとの密談も終わり、しばらくした後。
もう少しで目的地に着くか、というところで、ガルムリードがディラックさんへ「おい」と声を掛ける。
「あん? どしたガルムちゃん」
「ぶっ飛ばすぞてめぇ」
「はっはっは。軽い冗句じゃねぇか。そうカッカすんなって。で、なによ、ガルムくん」
茶化すように言って先を促すディラックさんに、ガルムリードは鬱陶しげにため息をつき、気持ちを切り替えるように軽く頭を振ってみせた。
「この先から、ごちゃごちゃと言い合う声が聞こえやがる。男と女の声だ。もうちょいで前のパーティのやつらが接触するが、どぉするよ?」
「ほ〜ん。そいつはなんとも面白そうじゃねぇか。よし、行くぞお前ら!」
「は?」
言うが早いか、列から飛び出したディラックさんは、ついてこいとばかりに手招きをして、軽快に走り出した。
「ちょっ! いやいや、勝手したら後ろが混乱するんじゃないのか!」
「おう、念話で適当に言っといてくれ!」
「おまっ、うそだろ!?」
と、こちらが驚いている間にもその背はどんどんと遠ざかっていき、ガルムリード、アンネローゼ、テレサが、それぞれの足取りで続き、残った二人の視線がこちらに集まる。
「……えっと。どうしようね」
「うん。とりあえず、僕から説明するから、ガトーさんと繋いでもらえる?」
「あ、はい」
言われたとおりに《思念会話》を繋ぐと、ミリオからガトーさんへと簡単に状況説明がされ、現場で合流する流れとなったので、先行した彼らに追いつくために駆け出す。
そして、その背が見える頃にはこちらの耳にも、はっきりと男女の言い争う声が聞こえてきた。
「だから言ってるでしょ! 私の仲間が大変なの! そんなことしてる場合じゃないのよ!」
「ふざけんなつってんだ、この盗掘犯が! てめぇで勝手に忍び込んでおいて、勝手におっ死にかけてるだけだろ! わしらの知ったこっちゃねぇってんだよ!」
互いが互いの言い分を聞くつもりがないのか、同じやり取りが繰り返し行われ、傍観に徹している者、仲裁に入ろうとしている者、その光景をにやにやしながら眺めている者が入り乱れて、なんとも言えない状況ができていた。
「……えぇ。なにこれ?」
『なにかあったの?』
「ええっと。どうやら、私たちとは関係のないところで、少し問題が起きているようでして……」