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秘密4

『でも、あれだな。それだったら、このことはアンちゃんたちにも秘密にしといた方がいい感じ?』

『そうだね。みんな、わざと情報を流すような人じゃないけど、こういうのはどこから広まるか分からないし、知ることで危険に巻き込んでしまうかもしれないから』

『なるほどな。え、でも俺は?』


 冗談っぽくそう言うと、彼は『あはは』と笑い、答えた。


『いや、アスマは僕ら――クレアが危険な目に遭うなら、そこに巻き込まれたいでしょ?』

『うん。まぁな』


 何も知らないまま、中途半端に状況が進むぐらいなら、全部知ったうえで最善の行動を取りたいと思うのは、当然のことだからな。


『だよね。クレアの隣を守るためなら、君はなんだってするって、それを知ってるから話したんだ。信用してるんだよ』

『そっか。そりゃ、期待に応えないとな』


 ……さすがはミリオさん、俺のことをよくご存知で。


『さて。それじゃあ、切りもいいところだし、そろそろ話は終わりにしようか』


 そう言って、彼はこの会話を終わらせようとしたが、少し気になることができたので、待ったをかける。


『あ、最後に一つだけ聞きたいことがあるんだけど』

『なに?』

『いやさ。二人がエルフの血を引いてるんなら、もしかして精霊術とかって、使えたりするのかなって?』


 俺の中で、エルフといえば精霊術。みたいなところがあるので、『隠していたけど、実は』というのを期待して聞いてみた、が。


『いや、使えないよ』

『……おう』


 本当にあっさりと、淡い期待は打ち砕かれ、なんともいえない反応をしてしまう。


『母さんは使えたみたいだけど、やっぱり僕らは血が薄いからかな。母さんや、前にアスマから聞いたエルフたちみたいに、精霊に干渉することはできないんだよ』

『そっか。そりゃ、ちょっと残念だな』


 もし使えるんだとしたら、それこそ切り札になったんだけど、世の中そううまくはできていないということか。


『ただ、たまに声が聞こえる時はあるんだけどね』

『声?』


 ……精霊って喋るのか?


『うん。声、というよりは今僕らが話しているみたいな、思念に近いものなんだろうけど、それが届く時があって、小さな頃は幽体アンデッドに取り憑かれた、って大騒ぎしたもんだよ』

『ははっ。子供らしいな』


 ミリオにもそんな無邪気な時期があったんだなぁ、としみじみ思っていたが、この世界だとわりと洒落にならない、ということに気づいて薄ら寒さを覚えた。


『まぁ、そのあともう少し大きくなってから、色々と教えてもらって、正体も知れたんだけど、本当に怖かったから、もっと早く教えて欲しかったけどね』


 子供心にはきつくても、今となっては笑い話だからか、ミリオは明るくそう言ってみせる。


『じゃあ、今はもうアンデッドは怖くないのか?』


 そんな彼に、おどけたように聞いてみると、『うん』と、自信を滲ませた声が返ってきた。


『たしかに、僕は精霊術は使えないけど、それでも、母さんから受け継いだものは、ちゃんとあるからね』


 と、ミリオはしっかりとした声で言ってみせた。

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